外資系企業の人員削減についてーその4(最終回)
前回までの話
前回はこれだけはやってはいけない退職勧奨という話題で、いくつかやらない方が良いことについて書きました。今回はいよいよ退職勧奨シリーズ最終回で、よくある質問について書きます。これは実際に私が「外資ってすぐ解雇されるの?」というような質問を受けた際に、合わせて聞かれたような話です。
退職勧奨:よくある質問
勤続年数が長い人の方が人員削減の対象になりやすいのですか?
時と場合によります。日本の会社だと年功序列型給与が残っているので、勤続年数が長い=給料が高い、となり、人員削減によってコスト削減が目標と掲げられている場合は、当てはまるかもしれません。
一方で、人数が削減目標になっていることもあります。例えば最近だとGoogleやAmazonで1万人削減、などと人数が出ていました。こういう時は人数の目標が多分あるので、勤続年数が長い、短いに関係なく、人員削減対象が決まるようです。
役職が高い人の方が対象になりやすいのですか?
これも時と場合によります。ねほりんぱほりんでは、プライドが高いからとか、業績悪化の責任を問いやすいから、といった退社に持っていくためのストーリーが作りやすいから、と言う説明がありました。多分そう言う会社もあるのでしょうが、逆の場合もあります。
私が以前勤めていた会社で、私が転職した後に人員削減があったことがありました。その時に聞いた話では、部署のマネージャーは残り、その部の人が数人退職勧奨を受けたと言うことでした。お前一人がやめた方がコスト削減額は大きいじゃないか、と退職勧奨を受けた人は文句を言っていましたが、その会社は人員削減に対して別の考え方があったのでしょう。
家族がいる人の方が対象になりやすいのですか?
何度もすいません、これも時と場合によります。同じくねほりんぱほりんでは、家族がいる場合退職勧奨を受け入れず会社に残った場合、減給は困るから退職を受け入れてくれるから、という説明でした。しかしこれはよく考えてみれば、逆効果となる可能性もあると分かるのではないでしょうか。つまり、家族がいて、どうしても養わないといけない、でも転職できる自信もない、だからなんとしても私は会社にしがみつくんだ、と言うことだってあり得ます。なのでこれも会社の考え方次第です。
つまり何が言いたいかというと、自分が人員削減の対象になるかどうか、そんなことは分からないし、絶対的な基準もないと言うことです。ただしおそらくどの会社でも共通しているのは、誰もが認める絶対的エース人材は、人員削減の対象にはならないと言うことぐらいです。
特殊なケースですが、以前勤めていた会社で人員削減があった際は、全然事情が異なりました。その会社は珍しく労働組合があって、しかもさらに珍しいユニオンショップ制度という社員が全員組合員(=会社は組合員以外を採用しない、できない)という制度を持っていました。なので人員削減があった時に、組合が交渉して、退職強要をするような人員削減リストを作って退職勧奨をするというのは許さない、辞めたい人が辞めるという希望退職にしろ、と会社と合意しました。その場合は事前に勤続年数などに応じて何ヶ月分の退職金がもらえるか、というのが全社員に提示されて、何日から何日の間に希望者は連絡してください、というやり方でした。
会社に残った方がいいですか、それとも退職勧奨を受け入れた方が良いですか?
一概には言えないですが、ほとんどのケースで退職勧奨を受け入れて転職した方が、ハッピーになれるケースが多いと思われます。それは以下の理由からです。
第一に、モチベーションが続かないからです。退職勧奨は解雇とは違う、と言われても、会社から辞めたらどうですか、と言われるのはなかなかにショックです。そんな状態でその会社のために今後何年も働けますか、というと心理的に難しいと思います。
第二に、同じ会社での昇給、昇進など明るい未来は難しいからです。会社が経営不振である、というのは下手をしたら今後会社や潰れてしまうかもしれません。もちろんそうならないために人員削減をするわけですが、だったら成長している会社を見つけた方が良さそうです。それに会社から退職勧奨を提示されるということは、建前ではパフォーマンス理由で退職勧奨はできないことにはなっていますが、会社としても少なくともあなたはエース級の人材ではない、と評価されているということです。なので仮に会社に残ったとしても、今後会社から高い評価を受ける可能性は低いと考えておいたほうがよいでしょう。
最後に、別の場所、会社の方がより成功できる可能性があるからです。会社からの評価がものすごい高いわけではないので人員削減の対象になっているわけですが、忘れられがちなのは、人の評価というのは客観的にも正確にもできないということです。会社の人たちが全然ダメな人で、あなたが正当に評価されていない可能性だってあり得ます。その場合、他の会社、場所に行けば高い評価が受けられるかもしれない、ということです。1つの場所でうまくいかなかったのであれば、そこに留まって改善を目指すよりも、別の場所でうまくいくか試した方が手っ取り早いかもしれません。
ねほりんぱほりんでは、退職勧奨を受けて精神的に追い詰められて自ら命を絶ってしまった人や、人事部を逆恨みして担当者にストーカーまがいの付きまといをするような例が紹介されていました。ですがこれは極端な例だと私は思います。私が知っている人の中では、ちょうど辞めたいと思っていたので、積み増しの退職金がもらえてラッキー、と思って辞めていった人や、そろそろ引退しようと思っていたから追加のお金がもらえて退職できてよかった、という人、さらにそのお金を使って学校に入り直して新しい仕事を始めた人など、全く不幸でない人もいます。
人員削減に備えるために
ここからは私見なのですが、結局経営が傾けば人員削減の対象になることは長いサラリーマン人生の中で一度ぐらいはあり得て、人員削減に怯えて不安になるぐらいだったら、仕事を覚えて仕事で成果を出し続けることに集中していた方が良いように思います。その際に、社内だけで通用するようなスキルを磨くのではなく、社外でも評価されるような業績を残すことが大事だと思います。人員削減の対象にならなければ、そのまま社内でも高く評価されるでしょうし、不幸にして人員削減の対象になってしまえば、その業績をもって他社に自分を売り込むことができると思います。その会社はあなたをもっと高く評価してくれるかもしれません。
逆説的かもしれませんが、一番リスクが高いのは、終身雇用を謳う会社に安心だからと勤めることではないかと個人的には思います。何をしていても会社に残れると安心しきっていると、社外でも通用するような業績を残さないと、という危機感が生まれません。その状態で10年、20年と続いてしまうと、いざ人員削減の対象になった時に、全く社外で評価されない、転職できない状態で、経済的にも心理的にも追い詰められてしまうと思います。
これは転職エージェントに聞いた話ですが、以前日本人なら誰でも知っているようなメーカーが大規模な人員削減を行った際に、その会社の社員の転職を手伝ったそうで、かなり大変だったそうです。というのも、もともと超優良企業でエリートだった人たちだからか、ものすごいプライドが高く、しかも社外からの自分の評価を正しく把握できておらず、全然転職できない人たちばかりだったからです。以前はいくらぐらいもらっていたので、最低でもその給与はもらえる、もしくはそれ以上もらえる、なぜなら私は優良企業にいたから、という感じだったそうです。
もちろん他社でも評価されるようなスキルを持っていれば別なのですが、往々にしてそういう勘違いした人は特に他社でも活かせるスキルを持っていなかったようで、転職エージェントとしては転職先も決まらないのでお金をもらえない(通常転職後の年収の3割などと料金をとります)し、紹介する企業からもなんだあいつはと苦情がくるし、しかも態度はでかいしで、ほとほと困ったそうです。
この話を聞いて、自分は常に切磋琢磨しなければいけない、人間ああなってはいけない、とものすごい危機感を持ちました。
まとめ
全4回で外資系企業の人員削減について紹介しました。まずは人員削減の対象とならないように、そのような不幸な出来事が起きないことが第一ですが、万が一起きてしまった時に、うまく対処できるように、という思いで書きました。
大事なことをまとめると、
日本では「解雇」はあり得ない。あるのは「退職勧奨」。
会社は「退職の強要」はできず、お願いしかできない。会社に残っても良い。
そのため退職交渉においては「社員が会社より圧倒的に有利な立場にある」
すぐにサインする必要はないので、じっくり考えてより良い退職条件を交渉すべき
人員削減への最大の備えは、社外でも認められるような業績を残し続けること
となるかと思います。
その上で、「どうも会社は退職を強要しているのではないか」「退職勧奨の条件があまりに不利ではないか」など疑問に思うところがあれば、弁護士などの専門家に相談してください。
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