私の生活とHomecomings
かれこれ5年くらいずっと好きでい続けているバンドHomecomingsについて。
Homecomingsは、2012年に京都の大学で結成され、今は東京に拠点を移して活動をしている。「ホムカミ」の呼び名で親しまれていて、私もスマホで「ほ」と打ったら変換に「ホムカミ」が出てくる。
ホムカミの良さをどう書けば…と思ってホームページのプロフィールを見てみたら、言いたいことがほとんど書かれていたので、これまでの自分の生活にホムカミがどう寄り添ってくれていたのかを、ホムカミの音楽の素晴らしさと共に書いておきたい。
Homecomingsの音楽との出会いはラジオだった。昔からお笑いが大好きだった私は、大学に入学してからは関西に行って劇場で観たり、有料の動画配信サイトに入会したりと、お笑いをもっと楽しむようになった。その大学に入学した4月ごろ、関西の「上方漫才大賞」という賞の結果をどうしても生放送で知りたく、九州にいた私はradikoの会員になり、エリアフリーで関西のラジオでの生放送を聞くことにした。それがきっかけで、MBSの「週刊ヤングフライデー」というアキナの番組を聴き始めた。その時にアキナとパーソナリティーを務めていたのが、Homecomingsの畳野さんだったのだ。その時流れたホムカミの曲が一気に好きになった。それは「HURTS」(2016)だったか、「PLAY YARD SYMPHONY」(2017)だったかはっきりしていないが、英語の歌詞と私が今まで知らなかった心地よく耳に入ってくる音に引き込まれた。音楽に関して、それまで私はK-POPばかり聴いていて、その頃の私がなぜこんなにもビビッと来たのか。多分それからの自分の生活や考え方を振り返ると必然的なことだったのかもしれない。
(初めて行ったホムカミのライブはツアーの福岡。バンドのライブは初めてで緊張したのを覚えている。さらに4人と写真も撮らせてもらい、話ができて、声が震えていたと思う)
それからはホムカミのCDやグッズを集めるほど夢中になり、その頃からレコードというものにも興味を持つようになった。最近はデジタルで音源を出すアーティストが増えてきた中で、HomecomingsはCDだけでなくレコードやカセットテープも出すことが多く、イラストレーターのサヌキナオヤさんがデザインした素敵なジャケットや、ライナーノーツなど、手に取るたびにその作品への愛着が湧くような形を残してくれる。元々収集癖のようなものがあった私にとって、アーティストを好きでいる上でこれほどワクワクすることはない。ホムカミの音楽が毎回プレゼントをもらった時のように手元に届き、音楽に込められた物語が消えることなく自分の中でずっと続いていくような感覚がある。2021年1月頃には、コロナでなかなかライブもできない中で、グッズが入った素敵なボックスを作ってくれていて、子供の頃の自分だけの宝箱を持ったような気持ちになった。
Homecomingsのメンバーは、映画や本、料理や写真など音楽以外にも興味があることをラジオで話していたり、映画館で映画とライブを合わせてイベントをしたりと、多くのものを自分たちの活動に取り入れているのがまた好きだ。大学生になってから、よく映画をみるようになった。その頃にホムカミがラジオや記事で映画の話をしていて、そこから知った作品を観ることもあり、どんどん観る映画の幅が広がった。そこからもっと知りたいと、ミニシアターでアルバイトをするようにもなった。そこで、多くの映画や地域の映画好きの方々の話に触れたり、紹介記事を書かせてもらったりと、自分の世界がひらけていくようで嬉しかった。
4人が好きなウェス・アンダーソンの作品も、いくつかしか観たことがなかったが、もっと古い作品も観てみようとするうちにどんどんハマっていき、今では部屋にDVDが並んでいる。ホムカミのライブはいつもウェス・アンダーソン作品の音楽が流れてメンバーがステージにやってきて、ラジオでのトーク中のBGMになっていることもある。
Homecomingsは、これまでアルバムのほとんどが英語で歌った曲だったが、2018年に発売された「WHALE LIVING」から、日本語の歌詞の曲がほどんどになった。生活をもっと大切にしたくなったり、寂しさに温かく寄り添ってくれたり、遠くの誰かや大好きな街を想ったりと、自分がいつも大切にしているものや記憶と共に音楽が流れていくようだ。
以前記事で書いたように、私が元々あった街への漠然とした愛着を言葉に留めておきたいと思うようになったのも、Homecomingsの影響かもしれない。
2021年から、私は大学を卒業して東京で働くようになった。私にとっては運命かのように、ホムカミは2021年5月にメジャーデビュー。メンバー全員が関東に引っ越し、メジャーデビューアルバムとして作られた作品の名前は「Moving Days」。大学生活を過ごした熊本、毎日のように一緒にいて多くのことを語り合った大切な友人、一人でいろんなことを考えながら歩いた時間、そこでの思い出と共に、これからの生活の期待と不安に寄り添ってくれる特別なアルバムになった。
ホムカミを好きになってから、聴くラジオ番組も増えて、今はラジオに携わる仕事をしている。ここまで思い返すと、聴く音楽の幅が広がったのももちろんあるが、音楽以外でも、こんなにいろんな面で影響を受けてた人たちはホムカミしかいない。私の生活をとても豊かにしてくれた。「音楽を聴く」という状況だけではなくて、私が大学の4年間のいろんな場面での決断や、行動にも影響があった。たくさんの趣味に溢れ、新しい環境を楽しみ、好きという気持ちにまっすぐに、今ここまで至っているという自分の物語を誰かに話す上で欠かせない存在となっている。「欠かせない」というよりは、「気づいたらいつも側にいてくれている」というような感じかな。
ここまでは、大学4年生だった自分が語れることだ。
働くようになって、さらにHomecominsの音楽が特別な存在になるきっかけがある。それは私がセクシュアリティに悩み、自分がアセクシャルであることを自認したことだ。人に恋愛感情は抱くが、最近はそれが男性になのか女性になのか曖昧で、誰かといたいけどそれが恋愛なのかもはや分からない。そして性的欲求を持たない。今までそれが、当たり前とは違うことで、いつかはみんなと同じようになるのかなとか、こんなこと理解されるのかとか思ってきたし、話も合わせてきた。でも自分のセクシュアリティを知ってから、そういう形があるし、それでいいと思うようになった。
「Cakes」(2019)や「Here」(2021)を聴いた時、なんでかわからないけど救われた感覚があったのはなんでだろう。その答えが私が知らなかった私の中にあったのだと気づいて、改めて曲聴いて涙が出た。
「いつかこぼれおちたときは、このうたが手を伸ばしてる」
私が自分をどんどん知っていくうちに、心の深いところまで手を差し伸べてくれていたんだ。
ホムカミの歌詞を書いている福富さんは、恋愛ソングを書くときに男女の恋愛だけではなく、いろんな愛の形に当てはまるように書いているという。優しさというものを忘れない4人の想いが込められているが、それらの曲にはだた「恋愛」を書いているだけではないようにも感じる。たとえそれが恋愛感情でなくても誰かを想う気持ち(それが人でなくても)が込められている。だからこそスーっと心に染み込んだのだと思う。もちろん誰か一人の男性を好きになって、マジョリティである恋愛をしていたとしても、ホムカミの曲がいろんな面で大切な存在であることは変わりないだろう。社会の間違っていることに対しても声をあげてくれる。いろんな状況にある人たちのどこかにある寂しさに寄り添ってくれているだろう。
歌詞だけではなくて、4人が奏る音、畳野さんの歌声、福田さんと石田さんのコーラス、ライブの空間、全てにおいて大好きで、まだまだ話し足りないが、まずは4月の東京でのライブを楽しみに、たくさんの気持ちを抱えながら生活していこうと思う。
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