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飛行機で自転車を運ぶ方法とトルコの空港

 熊野寮に8年いた末に退学した元京大生が語る、これまで12カ国を自転車で旅してきた中のエピソード。自転車旅のノウハウを交えて語っていく。連載していこうと思っているので乞うご期待。寄付をどんどん受け付けているので、ぜひぜひ。

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 自転車を電車やバスなどに乗せて運ぶことを輪行(りんこう)という。自転車で走るのが好きなら全部自転車でいいじゃないか、と思われるかもしれない。しかし、輪行をすることで行動範囲が大きく増えるのだ、当たり前だけど。

 たとえば自転車で1日に100km走れる人がいるとする。この人は自転車だけでは片道50kmの行程が精一杯だ。これが輪行を取り入れると、100キロ走った先から電車で帰ってくる、というような芸当ができるようになる。自分の住んでいる場所から大きく離れた場所でサイクリングできるのが大きなメリットだ。そう、「大きく離れた場所」に行けるのが輪行だ。

 自転車だけでは行けない場所がある。ぼくは京都に住んでいるので、沖縄には行けない(いちおう国道58号が鹿児島から続いていることになっているが)。台湾やほかの海外に行くことも陸路では難しい。そこで出番となるのが飛行機だ(船を使った出国はしたことがない)。

 飛行機に自転車を乗せられるなんてホント?という声が聞こえてきそうだけど、主な飛行機会社はスポーツ用品を預けることができる。サーフボードといった自転車より大きそうなものでも預けられる。

 そもそもどうやって輪行するのかというと、主に2つの流儀があるが、ぼくのやり方を紹介させてもらう。

1. 自転車を天地逆さにする
2. 前後ろのホイールを外す
3. ホイールをいい感じにフレームに固定する
4. 輪行バッグに収納する

だいたい10〜15分ほどあればできる。「やばい、この電車が終電だ!」と急ぐ時はなぜか3分でできたりする。「終電まで自転車に乗ってるなんて」と驚かれるかもしれないが、たとえば茅野→京都は(特急などを使わない場合)終電が14~15時に行ってしまう。飛行機に乗せる際はタイヤの空気を抜き、バッグに収納するときにダンボールをはさんだりプチプチを使って養生したり、乱暴に扱われても大丈夫なようにする。

 実は飛行機輪行用のバッグも売っている。シーコンというブランドが有名。「シーコン 飛行機」と検索すれば詳しく説明が見つかるので、ご存知ない方はご覧あれ。飛行機の預け荷物は投げられたり、上に荷物が積まれたり乱暴に扱われる。そんな状況でも自転車を傷つけないような分厚いクッションが入っている頑丈なものだ。でも、こういうバッグは自転車旅には使いにくい。なぜなら、ぼくの自転車旅ではこのような大きなバッグを持ち歩くことができないから。自転車ひとつにすべての荷物 ーー寝袋、テント、調理器具、服、旅のあいだに練習しようと買ったハーモニカーー を積み込んで自転車旅をする身としては、シーコンのような頑丈な、つまり大きくて重いバッグは積載できないのだ。

 だからぼくはモンベルのリンコウバッグという頑丈でない輪行バッグを使う。飛行機から降りて愛機を確認するたびに塗装がはげ傷がついていくのだが、これはこれで年季が入っている気がしていい。どうしても傷が気になってきたらフレームを塗装し直して気分を変えればいい。(*1)

「飛行機に自転車を積むのって、けっこう高そうだよね」

 よくこういうことを言われる。これはYesでありNoだ。つまり、航空会社によって料金が違う。気前のいい会社は無料だし、高いと2万円くらい払ったこともある。これは自転車旅を計画する時点で頭の片隅に置いておかなければいけない。

 トルコ・ブルガリア・ギリシャにいった時は往路は無料で復路は有料だった。マレーシア航空を使ってトルコまでいった。なんと優しいことか、マレーシア航空はスポーツ用品を預けるのが無料だった。というか、それが選んだ理由の半分。関空からクアラルンプールまで行き、乗り継いでトルコはイスタンブールまで。この乗り継いだ後の飛行機はコードシェア便といって、トルコ航空が運行しているフライトの一部の座席をマレーシア航空が販売している。やすい航空券にはよくあること。これが復路で曲者となった。

 話は帰国する前1時間くらいから始まる。イスタンブールから日本に向けて旅立とうとアタトゥルク空港のチケットカウンターに行く。そこでなんとスポーツ用品の預け入れは有料だと言われた。行きは無料だったのに、なぜか。カウンターのおっさんの主張は、予約したのはマレーシア航空だが、イスタンブールからクアラルンプールまではトルコ航空が運行しているため、トルコ航空の規定にしたがえ。一緒に旅していた友達と「いやいや俺たちが予約した時は無料だと書いてあった」と言ったが、まったく取り合ってもらえない。ねばっていたが出国まで30分を切りこちらが諦めた。仕方がない。正確な数字は覚えていないが300トルコリラくらいだったか(*2)。4000円くらいだから払ってやろう。

 払うとなると別のカウンターまで行けと指示され、空港内をあわただしく歩き回る羽目になった。カウンターを見つけてカードで払う。カード使えてよかった〜現金もう持ってないよ〜と話しながらレシートに違和感を感じた。なんだろう。よくよく見ると請求額が「3000」トルコリラになっている。

「あれ?もしかして桁間違えて請求された?」
「でも飛行機出発まであと15分しかないし面倒なことになったらどうしよう」

 頭の中でさまざまな思考が巡り、ぼくは15秒ほどフリーズしていた。友達が「この額はさすがに訂正してもらったほうがいいんちゃう」と言ってくれて、頭はフリーズしつつも体はカウンターに行き間違っていると伝えた。すると向こうも自分の間違いだと気がついたらしくささっと手続きをして正しい額の請求にしてくれた。4万円も失いそうになりながらぼくが思ったのは、

「トルコ人意外とちゃんとしてるなあ」

という失礼なことだった。

*1 今回の話はカーボンフレームには全く当てはまりません。カーボンは金属と違って外部からの衝撃で割れやすいのでリンコウバッグなんぞで飛行機に積むとバキバキになって返ってくる未来が近いでしょう。
*2 当時のレートを覚えてないので、「これくらいの日本円だったな」という感覚で書きました。

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こめたに
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