風都探偵 仮面ライダースカルの肖像 感想
なんと喜ばしいことか、風都探偵の映画化とは!そして内容がビギンズナイトとは。
↑過去風都探偵の吉川晃司インタビューで脳を焼かれた時のnote。読み返したらびっくりするくらい中身が無いつまらんnoteだった。
風都探偵愛好家として漫画を買い続け、実に7年。noteに感想を書く機会をすっかり失っていたが、風都探偵の舞台も観に行き、風都探偵愛好家として立派に務めを果たしている所存。
入場者特典の佐藤先生の6.5集が欲しい。絶対もらう。ということで初日に映画に行く。
前日の夜に予習として風都探偵の6巻を読んだのだが、あまりに良すぎて眠れなくなった。漫画と今回のアニメ映画は内容がほぼ同じ、というか漫画をものすごくしっかりとなぞって映像にしていたので、漫画と映画それぞれ好きなシーンの味わいが同じでとても良かった。
事前番組もMXで視聴、インタビューも拝読、これほどまでに熱が高まっている状態で浴びたらどうなっちまうんだ……?ハァハァ……という人間は、結論から言うと超泣いた。
以下感想。
☆全体を通して
どうしても最初に思うことは、やりたいことを全部やりすぎ。まず上映前の予告・CMで松岡充氏のこの動画を流す時点でやりすぎ。
SNSをちゃんとチェックしてない人だったら、ここで「えっ!?うお!?」となる。なってる人がいた。過去キャストを大事にしすぎ&過去キャストが仮面ライダーWのことを大事にしすぎ、という空気が作品全体を通してず~~~っと感じられた。
愛がある作品、愛のある仕事、愛がありすぎるとこんな作品ができてしまうのか。直球で言うとNobody's PerfectとW-B-X ~W-Boiled Extreme~を本編で流したというのが一番デカい。
風都探偵は超贅沢コンテンツなので、アニメのOPもEDも劇中BGMも当時と同じメンバーで音楽をやっているくらいなのに、ここにきて「やっぱ当時の流したいですよね」と言い出す欲張りさ。
勝ちBGM聞きたいかと言われたら、そりゃ聞きたいけど、風都探偵でW-B-Xを聞くことはないと思っていたし、Nobody's Perfectなんか流れたら泣いてしまうからやめてほしいよ。という2大巨頭を惜しみもなく一番いい場面でドンッ!!!ドンッ!!!!と流し、見ている人を殺しに来る。風都探偵のやつも考えたな……。
良かった点が、先程も挙げた「漫画とアニメが全く一緒だった」という点。そもそも三条さんが所々飛び飛びになっているビギンズナイトをW用にまとめようとして作られたのが6巻目の内容らしいので、まずこの漫画がなにより全てである。という大前提があるのでアニメになって急に足された物語があるわけでない。この同じ味がするというのは結構大事な気がして、個人的には超嬉しかった。
ただ急に足された物語がないというのは大嘘で、アニメ映画にしか出てこないキャラクター、ドーパント、戦闘もある。めちゃくちゃ味変されているはずなんだけれど、これが変にならないのはどういうことか。
☆今作ならではのオリジナルポイント
大嶋凪という男。この男がいるのといないのとで何が変わるのかというと、別に大きく変わらない。物語上には全く影響がない。じゃあ今回オリジナルキャラクター出さなくても良かったんじゃないの?と聞かれると、それは違う。いることにめちゃくちゃ意味があった、というかそういう舞台装置として存在してくれた。
大嶋凪の役割は、端的に言うと仮面ライダーWとしての初変身後、ファングジョーカーの暴れっぷりを見せたいよね……というために出てくるドーパント。
インタビューでもあったけれど、ファングジョーカーを暴れさせたいよね……という欲を叶えるために出てきた男なので、派手に殺されるために出てきた男。そう聞くとすごく可哀想なんだけど、その男が冴子の側近ということもめっちゃくちゃ味がする。
●大嶋凪ってなんなんだ
冴子に付き従う男ってどこかM気質な男ばかりなんだ……という統計が取れるようになった気がする。霧彦という男の前にこんな男がいたんだなと思うと、なんかもうめちゃくちゃ園咲冴子の女としての姿が見えてくる。
冴子が大嶋のことをどう思っていたかは分からないけれど、最終的には「つまらない」と捨てられるわけで。端正な顔立ちの男が好きなんだろうなとか、自分の事を一途に思ってくれる男がいいんだろうなとか、思い通りに動いてくれる男がいいんだろうなとか、尽くしてくれる男がいいんだろうなとか、そういう点も含めて大嶋と霧彦さんは似ている気がする。冴子の見せてくる多少の感情で愛を感じられる、低燃費そうな感じとか……。元カレか!?!?と最初は思っていたけれど、それもなんか違いそうだなという空気感も良い。
でも大嶋を側近にして、ビギンズナイトを経て大嶋が死に、そして霧彦さんと結婚するわけだから、まぁはいはい……皆まで言うな……。死んで完成するんだよ君たちは!!!ちなみに正統派イケメン=吉沢亮をイメージして作ったという話もめちゃくちゃ面白くていい。
ちなみにアニメオリジナルだけど同じ味がすると言っていた部分、大嶋がビギンズナイトの大事な部分に一切変化をもたらしていないからというのもかなり重要。フィリップを連れて帰るぞ!のシーンなので、大体は終わってるところなのでね。これがおやっさんの新規シーンで新キャラと戦ってたら違うよなぁ。
ファングジョーカーになったWがものすごいスピーディーに2ページで帰るシーン。海から迫ってくる何かを「敵か!?」って言ったら本当に敵なこともある。シュレディンガーの大嶋。逆にあの展開で敵の魔城から帰るときに、すんなり帰れることあるんだという感覚があったので、ページの都合でカットになったのかもしれない部分を見せてくれてありがというという気持ちだ。
海を歩いてくるという演出は一見すると面白いけれど、メモリを使っていないのに外部作用しているという部分を考えるととても恐ろしい話だ。オーシャンは特殊なメモリらしいので、その辺もいいのを与えられてるわけじゃん……。
いてもいなくても物語は大きく変わらないけれど、いてくれたお陰でBGMにW-B-X ~W-Boiled Extreme~ファングジョーカーの戦いが見れたんだという大きな功績がある。ありがとうな。
ファングジョーカーの戦いもTRIGGERの雨宮さんが担当すると思わなかったのでびっくりした。やりたいことやったもん勝ちだ。
最後大嶋を倒すシーンで、マキシマムドライブとかではないまま圧で押し切ったのかなあれは、言ってないだけでマキシマムドライブは発動していたのかな、どうなのかな、私には分からないんだけれども、ただの破壊衝動の圧に殺された大嶋、そして最期の顔。あの一連の流れ好き。
ちなみに製作者の言う「ファングジョーカーの戦い」って、ビル内での戦いを指すと思っているので、オーシャンドーパント戦は7割くらい蹂躙されていて特に暴れているわけではない気がする。それでも初対面初変身の状態でもフィリップが解析をし、攻略を二人で見つけていく戦闘の連携。そして実写ではできなさそうな大胆な水上戦。まあ大きな意味がありますし、迫力もありますよね。
☆声優陣の大活躍
まあ言うまでもないんですけど、演技が超いい。売れっ子声優ばかりだからな。でもその中でもやはりどうしてもな、細谷の話をしないわけにいかないよな。
冒頭のこれからときめに話をするぞというシーン。始まってから数分くらいの掴み。翔太郎の声が震えていることで、ときめも視聴者も「しょ、翔太郎……!!!」と一瞬でハッとする。漫画では伝わらない表現。その声の震えがま~~~~この、ね~~~、強がってかっこつけてる男のそれなんだよなぁ~。感情に富んでいる翔太郎の喜怒哀楽を、村瀬さんも細谷も十二分に表現してくれて、それでものすごく感情移入ができる。とても良かった。
特におやっさんが撃たれたときの叫び、見ている誰しもが桐山漣のことを思い出し、分かっていた展開なのにあまりの悲しみに涙が出てきた。観客にとんでもない圧を与える演技。それでいて横にいるフィリップも「これが僕の罪なんだ……」と考える。ここのシーン大好き。
誰がどう死んでしまうのか分かっている物語なのに、どうしようもなく涙が出る。探偵事務所に帰ってきて、おやっさんはもういないんだと泣く翔太郎が今の翔太郎に重なり、「おやっさんを殺したのは俺だ」と言うシーンも、見ていてボロボロ涙を流してしまった。本当に悲しかった。鳴海荘吉を失った悲しみを劇場中の全員が味わう。そんな演技だったと思う。
まああとはこれもみんな驚いた話なのかもしれない、刃さんが急激に刃さんになっていた。アニメでの堀内さんの演技と違っていて、「えっ、若かりし刃さんはなだぎさんがやってるの!?」と思ったほど。アニメ本編で超渋いおじさんになっていたので、なんか若さを感じて良かったですね(?)
あとは個人的にはみかこしの歌が好きなので、みかこしの歌が聞けて良かったです!
☆その後の仮面ライダーW
予習で見ていけば良かった気もするけれども、帰ってからW&オーズの映画を見た。ツダケンのおやっさんを見てから吉川晃司のおやっさんを見ると、結構キュートなおじ様だなぁという感想。生身の人間が出す色んな表情・動きって本当雄弁に様々なことを語るなぁ……と思った。あとアニメ見た後に本人のシンバルキック見ると、人間の動きじゃねぇと驚く。原作から持ってきてアニメであんなアクションできたら楽しいだろうよと思った。シンバルの音もなるし。ドラマの方がコミカルなのもいいよね。
あとシンプルにオーズに大口兼悟が出てるってのも気になって見たんだけど、なんなんすかあれは。
その後も日曜に配信されているWを見ているんだけど、いや~面白い本当に。特に自分は照井竜加入回くらいからトライアルくらいまでをめちゃくちゃ見ているので、そこの記憶濃度だけめちゃ高い。代わりにユートピア戦を全然見れていない(泣いちゃうから)ので、今回このまま最後まで見ようと思った。本当に泣いてしまうから、当時振りな気がする。当時小6で見た時もそりゃ号泣してましたんでね。
パンフのインタビューも6.5集のインタビューも全部読んだけど、いや~やっぱりすごい。濃厚だ。スタジオKAI側のスタッフの熱量がすごい。ただキャラクターが立っているだけでもハイカロリーな作画だろうと思う状況で、あそこまでアクションを盛って作ること、こだわりを持ってドーパントを描いていること、全てがすごい。それはコミックの佐藤先生にも通じることで、作画に関してとか漫画のネームとかコマ割りの話をしていたけれど、制作秘話についてスタッフの人があれやこれや話してくれるのは、とてもいいコンテンツだ。
どうかこの流れのまま風都探偵が素敵な形で続いていけばいいと思う。
木津つばさがライドカメンズでまた仮面ライダーをやる流れもめちゃくちゃ面白いので、舞台の続編もあったらいいなぁ。ねっ、生駒ちゃん!