箸置きは、何のためにあるか?
以前、IYC(インターナショナルヨガセンター)の神保町スタジオにて、講座を開催したことがありました。
ヨガスタジオにて参加者にランチを提供し、食べ終わった後に玄米菜食についての講義をする、という内容でした。
その講座について条件などを取り決めるため、IYCの主宰者・ケンハラクマ先生と打ち合わせをしたときのこと。
打ち合わせの冒頭でケン先生は、「健康を維持する要素は、食事が5割、メンタルが3割、フィジカルが2割だと思う」と仰いました。
僕も、その見解に賛同しています。
人は食べるもので出来ているので、何をどのように食べるかは、健康を維持する上でとても重要なことです。
同時に、食べるものにさえ気を付けていれば健康的かと言えばそうではなく、心の在り方、日常的な運動も必須だと思います。
また、身体に良いと言われる食べ物でも、食べ方に問題があれば、十分にその栄養を得られるとは限りません。
玄米菜食の店を営んでいると、「玄米は身体にいいのよね」と仰るお客さんが、一定数来られます。
もちろん、玄米は白米に比べて栄養価があるし、豊富な食物繊維のおかげで便通も改善することが多いです。
ただし、食べ方が重要で、ここを間違うとかえって消化不良を起こしてしまい、玄米は自分には合わないという結論に至りかねません。
玄米ごはんを食べるうえで、気を付けなければならないポイント。
それは、「よく噛む」ことです。
僕がマクロビオティックを学び始めた当初は、本などでは「ひと口で100回噛みましょう」と書かれていました。
それが、マクロビオティックのブームと共に、忙しい現代人に合わせたのか、「ひと口で50回」で主流となり、今では「30回噛みましょう」とまで減っています。
でも、お客さんの食べる姿を見ていると、ひと口で30回も噛んでいる方は少数派です。
多くのお客さんは、箸を手に持ったまま、おかずとごはんを交互に口に入れて、咀嚼を続けままあっという間に食べ終わっています。
やはり男性の方が、よく噛まないで流し込み、早く食べ終わる傾向が強いですね。
ごはんを早く食べてしまうことと、男性の方が平均寿命が短いことには、相関関係があるようにも感じますが、あくまでも推測です。
玄米ごはんをよく噛んで食べるコツは、ごはんを口に入れたら箸を箸置きの上に置くことです。
箸置きは、食事の最中に箸を置くためにあるものなのです。
食べる前に箸を置いておくだけのものではありません。
とても簡単で当たり前なように聞こえますが、たとえ目の前にあっても、箸置きを使わないお客さんが半数以上いらっしゃいます。
その証拠に、食べ終わった定食のお盆を下げに行くと、お茶碗やお皿の上に箸がおきざりにされていることが多いのです。
小さい頃から、食卓で箸置きを使わない家庭が増えているのだと想像できますが、箸置きの使い方を知らないことの表れとも思えます。
ごはんを口に入れる。
箸を箸置きの上に置く。
よく噛む。
この習慣を身につけるだけで、玄米の消化吸収がぐっと向上すること請け合いです。
よく噛むことは、一汁一菜・口中調味という和食の原則に繋がりますが、それはまた、次の機会に。