ミックステープ 03 A面:9曲目 bird song / 下津光史(日本) The TAPE 03 - side A
ミックステープ:パート3、A面のラスト曲。
https://www.mixcloud.com/kiichi-ogura/komemx-the-tape-03-side-a/
Lullaby / Leo Kottke
DAY TRIPPER / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
Garbage Pale Kids / JPEGMAFIA
Enemy / Slant
Stick Up / The Hives
Party Girls / Victoria Monét
Too Pure / Cornelius
Mess It Up / The Rolling Stones
bird song / 下津光史
9. bird song / 下津光史
日本のロックバンド、踊ってばかりの国のフロントマン、下津光史(しもづこうじ)のソロアルバム「Transient world」から「bird song」。
ミックステープの醍醐味は、ある曲を慣れ親しんだ曲順から開放し、違った角度から聴くことにある。たとえば、収録アルバムのトップバッターをラストに持ってきたり、その逆もある。なので、収録アルバムの曲順となるべく同じにならないように心がけてる。
しかし、今回は2021年のアルバム「Transient world」のラストである「bird song」を、ミックステープののラストとして納めてしまった。それだけ、プレイリストのラストに、いや一日の締めくくりとして心静かに聴くにはぴったりすぎる曲なのだ。
アコースティックのセットに下津光史の柔らかい歌声が夢を漂うように揺らめき、やわらかく聴く耳を包み込んでくる。海底から見上げた海面から光のカーテンが差し込むように、それは青白い冷たさもあり、光の温かさもあるような、アンビバレンツな光景を提示する。
もう一つ、この曲の面白さは、英語詩のパートがあることだ。コーラスの手前で、声色を変えながら語り調のメロディーが英語で始まる。デビュー時のデビッド・ボウイを想起させる渋くで知的なムードに曲調が変わり、これまた美しい「Shall we dance on? One, two, three, with my bird song. 」という最高に印象的なフックが歌われる。
私は長らく英語の歌を好んで聴いてきた。理由を答えても全部後付にしかならないし、ただ音感が好きだったといえばそれまでだ。そんなことよりも、この英語詩・日本語詩問題について薄々感じることがある。それは、英語詩がもつ意味を伴わぬ聞こえと、日本語詩の意味を伴う聞こえが、その音楽の性質を大きく支配しているという事実だ。
また、もっとややこしくしているのが、その違いに対する聴く者の受け止めかたである。私個人の感じ方ならまだしも、日本国民による「母国語の聞こえ」の受け止め方が、欧米人の「母国語の聞こえ」の受け止め方と相違がきっとある、と思う。音のみならず、視覚的にもだ。日本語Tシャツと英語Tシャツは、着る人の言語にかかわらず、別ジャンルになっているといったら理解して貰えるだろうか。
掘り下げていけば脱線するばかりだが、要は、この「bird song」は、言語の移り変わりで聞こえが遷移する感覚を意識させる希有な曲であり、それが明確な意図を持って構成されているようにも感じられる驚きの曲でもあると言いたかったのだ。先も述べたアンビバレンツな光景が演出されるように感じる秘密は、この仕掛けにあるのかもしれない。
今回でパート3の曲紹介はおしまい。1曲でも気になった曲があったら、まとめて読めるようにマガジンでもまとめるので、そちらもチェックして頂ければ幸いだ。
ミックステープはMixcloudで公開中。