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ワナビー達は肉塊を喰らう

「行けたらいく」
もう世間では「行かない」という意味ですっかり通ってしまった。全然行くのに。って思って使う人もまだいると思う。僕だってそうだし。
僕の中ではまだ「行けたら行く」は「行けたら行く」を意味してる。そのまま。時間ができたら全然行くし、なんなら時間を作って行く。


同じような言葉にほかにも
「今度飲みに行きましょう」
「今度一緒になんかやりましょう」
とかがある。これも行くしやる予定で僕は言ってるし、
受け取った時もちょっと期待してしまう。
でもおそらく「行かない」という意味なんだな。と気付いた時、少し寂しくなるよな。
自分を守るためにこれを受け取った時は
「行かない」という意味だと最近思うようにしている。そうでもしないととても保てない。


でも僕からこの言葉が出た場合は大体行くようにしている。なるだけ有耶無耶なことは作らないように生きたい。そっちのが楽だし。
それにこうしていくとこで
「行けたら行く」=「行かない」
の考え方が減ってくれないかなー。
っていう淡い期待もある。あわーーーい!


僕には幼稚園からの幼馴染でアーティストをやっている友達がいる。
「アーティスト」って言うの少し恥ずかしいな。本人たちはこれを乗り越えてるんだろうけど。
僕側がアーティストって言葉を使うと気取ってるみたいで恥ずかしい。
ホームランバッターのこと「アーチスト」っていうけどそっちは全然はずかしくない。似てるのに。
「アーチスト」の友達ちょっと欲しいな。遊んでる時に「ちょっとあの球場で柵越えしてみてよ」とかの無茶振りにも答えてくれるのかな。
それはめっちゃ楽しみだ。
あぁ、違う。アーティストの話だ。
アーティストの友達がいるってのは恥ずかしくないけど、言葉で言うの恥ずかしい。
多分周りもそんなに気にしてないと思うので
おそらく杞憂だけど。

この子だ。
気になったら覗いてみてあげて欲しい。
どうやら見る人が見たらかっちょいいらしい。
かくいう僕はというと全く分からん。すまん。


ヒロトはずっと長崎で活動していたが、
今年から上京してきてこちらで活動している。
絵を描く仕事をしている友達と一緒にシェアハウスをしているらしい。
シェアハウス。僕には絶対無理だ。


ヒロトから「遊びに来い」と誘われたが、
コンビが決まらない焦りやライブをたくさん入れたのもあってなかなか行けずにいた。
だからずっと「行けたら行く」って言ってた。
しつこいけど、これはマジで「行けたら行く」の意なので時間の空いた日曜に行くことになった。でもこの「行けたら行く」は言葉通りの意味ではない方が多いので軽く言うのは辞めた方がいい。これで不安になる人もいるかもしれないから。「早めに顔出すわ」とかの方が良いか。
いやこっちも実現しなさそうだな。
どうしよう。
日程が不確かだけど絶対に行ける時は何を言えば正解なんだ。


彼はその日、
「同居人と下北に遊びに行くらしくて、それでも大丈夫なら来ていいよ」って言ってた。
僕は彼の同居人とはあまり面識が無い。
普通ならこれは「来ないで」という意味だが、
こいつの場合は本当に大丈夫だったらおいで。
と言う意味だと思う。
付き合いが長いから分かる。
でも「そういう意味だよな?」って聞いたら
「違う」って答えると思う。
長いから分かる。ながーーーーい!!


遊びの集合時間なんて
12時とか13時くらいだと思ってた。
大学生の時はいつもそれくらいだった。
でもその日は9時45分集合だった。
なんでも開店前から整理券を配るほど人気のあるハンバーグの店にいくための9時45分らしい。
なんで大人がハンバーグにそんなに一生懸命になれるんだ。大人がハンバーグに振り回されるなんて恥ずかしく無いのか。


僕は以前の反省を活かし、
僕は現地に集合時間の10分前には着いていた。
立派。これを続けていきたい。


しかし、煙草を吸って時間を潰してても
彼らは一向に来る気配が無い。
45分になっても来なかった。
あんなにハンバーグに本気だったのに。


これはおかしい。と思い、
到着していることをLINEで伝えると
「やるやん」とメッセージが送られてきた
「やるやん」と認められるのはほとんど嬉しいのだが、こういうシチュエーションの「やるやん」があるから「ほとんど」のままなんだろうな。
腐ったミカンが他のミカンをダメにしている。


「48分に到着する」とメッセージが来た。
なんだよ。
お前らのハンバーグへの思いはそんなものだったのかよ。こっちはそんなにハンバーグに熱量ないのに10分前に来てんだよ。
45分到着なのに3分くらいの遅れだったら申し訳ない顔してなくて良いのか!?ってなったが、
よくよく考えてみると僕も割と遅刻してるな。
なるほどこんな気持ちになるのか。
もう絶対にしないようにしよう。
東京は凄い。
目に入るもの、感じたこと、聞こえたこと。
全てが先生だ。


結局、彼らは53分くらいに現地に到着した。
5分の遅れは
ゆっくりトイレをしていたかららしい。
堂々と言ってた。凄い。背筋が真っ直ぐだった。
遅れてるのにトイレをするなよ。
遅れてるのにゆっくりトイレをしちゃダメだろ。


いや、ハンバーグにかける気持ちは?
俺だけ張り切ってるみたいで恥ずいじゃん。
実際、そこまで張り切ってないのに。


10時を少し過ぎた頃、
目当てのハンバーグ屋をみつけ整理券を獲得した僕らがおそらく最速ぐらいだったと思うのだけど、14時からの予約しか取れなかった。
まさかこんな世界が。


僕は今月ライブで下北にたくさん行ってたので、「これは案内してやろう」と思って
たくさん案内しようとしたが、
「どんぐり広場」「1番大きなたわし」
しか知らなかった。
あとミネルヴァとスラッシュしか知らない。
北沢タウンホールも知ってる。
下北のこと何にも知らなかった。おどろいた。
サブカルの街、下北。
発見が多いとは思ってたけど
僕自身の中でも発見があるのか。すげ。


特に「どんぐり広場」は酷かった。
スペースが広く、ネタ合わせには最適な公園。
芸人目線では最高の公園なのだが、一般人目線で見ると遊具がまたがってギコギコするカタツムリとシカしか無い。
種類で言ったらギコギコする奴しかないのだ。
よくよく見ると殺風景な公園だった。
これにもびっくりした。
これにまたがりギコギコしながら2人が「こんなんならマック行けばよかった」「信玄餅パイ食べればよかった」と文句を言い始めたので、
全くどんぐり広場の肩を持つわけではないけど、
普通に負けたくなかったので、
「へぇ〜、今日は鹿なんだ。日曜は鹿かァ。」
とあたかもギコギコの奴に日替わり枠があるかのように思わせる嘘をついた。そんなものはない。
どんぐり広場と俺をあまり舐めるな。


2人はこの嘘に見向きもせずにマックに向かった。
僕も2人についてくようにマックに向かった。
辻利抹茶ラテが美味しかったので良かった。


2人が下北に来た理由は
色んなアーティストの展示会を見るためらしい。
それに全く美術の心得がない僕も付き合った。


でも絵に意味があることは知ってる。
どんなに抽象的な絵でも何も考えずにペンが動くわけがない。だから今日は一つでも多く意味を紐解いてやろうと思った。丸裸にしてやる。


2人とも出展しているアーティスト達に話しかけて連絡先を交換していた。フリーライブの楽屋と変わらないな。なんか似てんなって思った。


僕は出店された絵を紐解こうとしたが、
全く何も理解できなかった。
実際は何も意味してないんじゃないのか?
ってくらい意味がわからなかった。
抽象画むずすぎる。
使われてる色しか分からなかった。


多分お笑いと美術はそこが微妙に違くて、
お笑いは伝わらないと難しいけど、美術は伝わらなくても「なんか良い」があるのだと思う。絵とかって「なんか良い」とかで評価されてるものが割と多いと思う。これ馬鹿にしてるわけじゃなくて、人を頭じゃなくて脊椎で「なんか良い」と判断させるの凄すぎるな。と思ってる。お笑いでは「なんか良い」を作ってもダメな気がする。お笑いでは大体の人が何らかの公式に当てはめてウケるネタを作ってると思う。なるべく公式に頼らずネタを作ろうと思ってるのだが、
これがなかなか難しかった。


あと芸術系の界隈には縦社会感があんまりないなと感じた。みんな上や上が決めた方針に従わず、自由にやってる感じ。むしろ先人が積み上げたものをぶっ壊してる感じ。これくらい僕も前傾で行けたらなぁ。って思った。
てか、行く。行こうと思う。
行けたら行こうと思う。


絵を意味が全く分からなかったことに落ち込んでたが、画家の永村くん(幼馴染の同居人)
が今回のはちょっと難しかった。
と言ってくれた。よかった。絵を見る道を挫折しかけたので本当に良かった。


この永村くん、変な子だとは思ってたが、
やっぱり変な子だった。
人が歩いてるのを見て、
知らない名前の筋肉の動きがいいとか、
腕を出してる人を見て格闘技の肉のつき方だ。
とか言ってた。オタクだ。


永村くんは昔ラグビーをやっていたらしいので、
僕は途中からナガーと呼んでいた。
永+rugger=naggerでナガーだ。
多分、これは僕以外呼ばない。
特別なあだ名を付けた人として特別になりたいというところが僕にはある。容赦してくれ。


14時になったのでハンバーグのお店へ。
実際にハンバーグの匂いを目の当たりにすると、
俺ハンバーグが大好きなんだなと気づいた。
これに気づけてよかった。
「好きな食べ物何?」
って質問が飛んできた時、
食べ物なんてなんでも好きだろ。
といつも思ってたけど、これハンバーグだ。
俺ハンバーグのこと好きだよ。
近すぎて気づかなかったけど、
照れ臭くて上手く言えなかったけど、
俺ハンバーグのこと好きだよ!


そっか…!
いや、いいんだいいんだ!
お前モテるからさ!
こうなることなんて分かってたよ!
いい人見つけて幸せになれよ!
そしたら俺も幸せだからさっ!
気にすんなよ!


これでよかったんだよな…。
って少し無理をしている僕を
頑張ったな。って
肩ポンする親友がいれば完璧。


ハンバーグが届いた。みてこれ。

ハンバーグも縦に積み重ねられるとは思ってなかったよな。

普段食べ物の写真を全く撮らない僕だが、
「天晴れ!」と思っちゃって撮っちゃった。
下北っぽい女子達に混ざってパシャパシャしちゃった。4枚で1000円だった。ご飯は一杯までおかわり無料。僕は今何を書いてるんだ。食べログ?


ハンバーグを食べた僕たちはコンビニアイスを食べた。ワナビー達はたまに背伸びをして散財するが、基本的にお金がないのだ。
お金ないならアイス食うなよ。
とかいうのはナンセンス。


アイスを食べたら、小田急に乗って、
彼らのシェアハウスに向かった。
実は今回、僕の1番の目的は
別業種の人の仕事場を見てみたいってやつだった


当たり前だが、
2人とも仕事場になる部屋は
仕事とか趣味で一色だった。
なるほどこうあるべきだな。と思った。
今の僕の部屋には生活感しかない。
もっと仕事場っぽくするぞ!形から入るの大事!


お酒とかお菓子とか買ってきて
色んな話をした。たくさん笑ってだと思う。
ナガーに
「こめだ、久々に友達と話してる感じするね」
と言われた。なるほどそうかもな。
こっちの人と話す時はまだ少し作ってるのかもなぁ。寂しいなぁ。


カラオケでは絶対に恥ずかしくて歌えない
日本語ラップとか歌った。歌うの楽しいなぁ。


早めに帰る予定だったけど居心地が良くて、
終電を逃してしまった(意図的に逃した)
ナガーが「いつきてもいいからね」って言ってくれた。あったかい。甘えよう。
「こっちに引っ越してきなよ」とも言ってくれたけど、もうちょい日野に居たい気持ちがあったので有耶無耶にした。
有耶無耶嫌なのに有耶無耶に。


朝起きて、「飯どうするの?」
って聞かれて居心地が良過ぎたので、甘えて、
一緒に食べよう!って言った。
しまった!甘え過ぎか?と思ったが、
インドカレーを食べに行くことになった。


インドカレー美味しかった。
少し贅沢し過ぎたと思う。
2キロ太ったし、
明日から自炊とカップラーメン生活だ。
苦しいけど、みんなやってる。やらないと。


ここはすごく居心地がいいけど、
色々熱くなるものがあっていい場所だ。
また行こう。
でもずっと居たら甘え過ぎちゃうと思うので、
いい話が出来た時にそれを持っていこう。






絶対音感のサトシ







ファソシ

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