人間が自然から学ぶべき大事なこと|人成塾(冒険家・荻田 泰永)
ノンフィクション作家・小松成美がゲスト講師を選び、次の時代を生きるためのヒントをありのままの言葉で学ぶ『人成塾(じんせいじゅく)』。今回の対談ゲストは、冒険家の荻田泰永さんです!
植村直己冒険賞の受賞や無補給単独で南極点に到達したご経験のある荻田さん。後半はどのように人を巻き込んで目標を達成したのか、「冒険」をビジネス視点で語っていただきました。
想定外も想定内
小松:初めて単独航行を達成した日の時間とか覚えているんですか?
荻田:日付、ぱっと言われるといつだろうな。初めて単独で歩いたのは2002年なんですね3年目に行って。あれいつだったかな5月の。あ、ちょうど今日だ2日かな。
小松:そうでしょ、5月でしたよね!
荻田:あれ、分かんないな。5月のね2日か3日くらいだったと思います。本当今日かもしれない、19年前の。
小松:はい、19年前。あのときは何日ですか?
荻田:その時は24日ですね。
小松:最初の時は24日。そのマクロとミクロで、今自分がどこに立ち、今日やることは何なのか?とか、今日の歩くコースは何なのかとか、その両方を考えていたとおっしゃってましたけれど、そのことってあるアクシデントが起きたりすると狂ったりしないんですか?パニックというか。
荻田:当然あり得ますよね。一番最初の2002年、初めて行ったときっていうのはそんなにまだ計算しながら歩いてたってよりも、とにかく無我夢中でがむしゃらに歩いてたって感じですけど、それから経験積んできて、今もう20年ぐらいになるとやっぱりこうすべてが計算で動いているんですよね。例えば、最近だと1000kmぐらいの距離を歩くだとか、そうすると2か月ぐらいかかるわけですよ。50日60日、1000km行く中で50日60日それが北極だと本当に氷の状態がめちゃくちゃだったりとか、歩ける日は一日20kmとか30km歩けるけども、本当に氷が悪かったらそれが2km3kmになっちゃう。そういうこともざらなんですね。という中で、1000kmをルートの特性とか、この海峡は流れが速くて危ないなとか、ここは比較的安全だなとか島を超えていくからここは時間かかるなとか、そういうことを1000kmずーっと総合して細かく考えて、でトータル何日かかるかな、何日ぐらいだな、プラスアルファ予備を何日持とうかなとか。持ちすぎると、自分で全部引っ張るので重くなっちゃうので、たくさん持てば安全だけどたくさん持つと重くなってなかなか進まない。軽くしたいけども、持たなすぎるのもリスクが高いってなっちゃうので全部計算のうちにやっていくんですよ。当然アクシデントには計算が狂うとかもあるんですけど、そのアクシデントというか想定外ですよね。計算で片付くところは想定内ですよね。想定内想定外でまた全部分けるわけでもなくて想定外も想定内なんですよ。何が起きるか分からないけど何かは起きるだろうという想定をしておくし、何が起きるか分からないことに対処はできないんですけどもm何か起きても対処できるような状態に自分をしておくことはできるんですよ。
小松:いやー。すごい。
荻田:それは自分の事前の準備とか、スキルとか、そもそもの技術とか知識とか経験にだいぶよってくるんですけど、何が起きるかは分からないです。何が起きても大丈夫な状態にはしておくってことですよね。
小松:4年の時は犬ぞり?
荻田:4年目ですね。そうですね、その時は犬ぞりでグリーンランド縦断しました。
小松:そうですよね、今度は犬っていうね、自分だけではない動物の要素とか。
荻田:そうですね、そうそうそうそう、そういうのはありますね。色々ありますね。
小松:ソリが大きくなっていったりするわけですね。それを想定外としている時点でもうそんなの行けるはずないんですよね。想定外なことが起こるってことが、もう想定内として。
荻田:というか当たり前なんですよね。自然ですからね。自分の想いどおりになるはずがないので、そこで自分の想いどおりにいくというか、自分の想定って自分の都合じゃないですか。
小松:うん!
自然から学ぶ大事なこととは?
荻田:人間の都合じゃないですか。人間の都合を自然の中に持ち込むのであってうまくいくはずないので、やっぱ自然の都合に合わせないといけないんですよね、人間が。だから、どうやって自分を自然の都合に合わせていくかっていうことですよね。
小松:それの積み重ねですよね。
荻田:そうですね、自然の都合もいろんな都合があるわけですよ、自然のね。ブリザードが来るとか氷が薄いとか流されてるとかね。白くまがくるとか全部自然の話であって、冒険とか探検とか言うとなんか人間の能動的なね西洋的な文脈でいうと、改革していく征服していくっていう全部人間の都合の話ですよね。そうじゃなくていかに人間が自然に合わせられるかっていうそっちですよね。
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