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難病と闘う松村厚久社長 夢は大きく「必ず実現」
このマガジンでは、小松成美が様々な人に取材した、北國新聞の連載「情熱取材ノート」の過去のアーカイブを掲載いたします。
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もし、ある日、不治の病に侵されたと医師の診断を受けたなら……。
10年も過ぎれば身体の自由を奪われ、介護なしでは生活できないと宣告されたなら……。人は何を思うのだろう。
難病患者となった運命を呪うだろうか。それとも、絶望し、生きる気力を失うのだろうか。
38歳の時に若年性パーキンソン病と診断され、現代の医学では根治は不可能だと医師から告げられたベンチャー企業の若き社長は、その刹那こう考えた。
●100店舗100業態
「人のやらないこと、人のできないことを10年のうちに達成しよう。そして、起業家としての夢である東証1部上場を必ず実現してみせる」
当時、すでにパーキンソン病の初期症状である倦怠感や腰・肩の痛みなどに苦しんでいた彼は、自らが難病であることを封印する。そして、前人未到のビジネスを展開して行くのである。
その人の名は、松村厚久(まつむらあつひさ)。株式会社ダイヤモンドダイニングの創業者社長である松村は、体の自由を奪う病と闘いながら、業界に旋風を巻き起こしていった。
人のやらないこと。それは、100店舗100業態の達成だった。つまり、100店舗のまったく違った店を一人の経営者が作り上げたのだ。
松村の手による店は、吸血鬼をテーマにしたレストランから高級割烹、土佐料理、フレンチ、イタリアン、ビアホール、九州料理居酒屋にいたるまでそのジャンルは途轍もなく広い。
チェーン店展開の100倍ものコストがかかると言われるこのチャレンジは、経営の常識からは大きく逸脱しており、松村は「異端児」「レストラン界の革命児」の異名をとるのである。
そして、東証1部上場。2015年7月、東証2部から1部に昇格すると、松村はその会見でこうぶち上げた。
「東証1部上場を遂げることができた我が社は、現在、売り上げを260億・店舗を260店舗にまで増やしました。でも、これは途中経過に過ぎません。我々は店舗を1000に増やし売り上げ1000億を目指します」
松村の大放言に飲食業界は騒然となったが、松村は涼しげな顔でこう話した。
「必ず成し遂げてみせますよ。そのプランは、すでに実行に移しています」
●「絶望はない」
イブ・サンローランを着て、中折れの帽子がトレードマークのファッションリーダーである松村は、パーキンソン病宣告から10年を経て、思考はクリアながら、医師の宣告通り、残酷なほど正確に、重度の症状を発症している。
「熱狂宣言」(幻冬舎刊)という書籍で松村の半生を綴った私は、歩くこともままならない松村に度々聞くことがあった。この病に絶望したことがないのか、と。松村は唇の端をキュッとあげて笑顔を作り、軽やかに言った。
「絶望はない。なぜなら、神様はその人間に越えられる試練しか与えない、と言いますよ。僕がパーキンソン病に侵されたのは、この苦しみと正面から向き合い闘える者だとみなされたからだと理解しています」
外食企業で成功し、さらなる高みを目指し続ける。
「小さなレストランを1軒、経営できればいいと思って最初の店を出しましたが、今は、うちの会社を日本にはなくてはならない企業にしたいと思っています」
そして、試練にも立ち向かう。iPS細胞によるパーキンソン病の治療構想が報道される中、松村のビッグマウスは炸裂する。
「先進医療の力を借りて、僕はこの神経の難病を克服します。いつの日か、世界初パーキンソン病が完治した者になってみせます」
夢は大きく有言実行。
それが、松村自らが発し心に留め置く“座右の銘”だ。
小松成美
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(※このテキストは、北國新聞の「情熱取材ノート」において過去に連載したものです※本コンテンツの無断転載を禁じます。著作権は小松成美に帰属します)