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私の好きな怪異 [今宵、怪談を]

 かなり嗜好が偏っている自信はあり、二次創作界隈でも、大抵はニッチな方に住んでいるという状態ですが、そんな私のおすすめ怪談はいかがでしょう。
 古典的なところを多く選んでいますが、それは、私が読書自体をあまりしないからです。この場合の読書の対象は「物語」「小説」という意味ですが、ほとんどの読書が実用書や、専門書で、目的を持って読むことが多く、人によっては、それは読書に含めない事もあるらしいので、分けました。
 なので、他の方の読書量には怯えます。
 そんな私の数少ない読書歴の中から、これは怖かったなあ、と思うお話を集めました。
 万が一、未読の方でも大丈夫です。ネタバレはございません。

◆ あまぞわい ◆ 岩下志麻子作

 かつて、吉本新喜劇にぞっこんだった時、「関西弁、羨ましい!!」と激しく思っていたのですが、岩下氏が、『ぼっけえ、きょうてえ』を出されたときは、嫉妬を通り越して、死にそうになりました。
 なんて素敵な、怪談向きの素晴らしい方言なんだろう!!
 ああ、岡山県に生まれたかった!!!
 それくらい、衝撃的なタイトルでした。もちろん、話も素晴らしかったのですが、某医師漫画でその怪異の存在を知っていた私は、途中でオチに気づいてしまったのです、残念。
 もちろん、そのことで、価値が変わるわけではありません。素晴らしい、後世に読み継がれるべき傑作です。
 で、その本の中にある他の話の一つが、この「あまぞわい」です。
 もう、これも意味わかんない。
 あまぞわいってなんだ?
 でも、なんだかゾクゾクくる・・・・・
 読んで、また、ああああああ・・・・・・
 まじ、この人、天才。
 この、タイトルにもなっている「あまぞわい」ですが、たぶん、他の方より入れ込んでしまう理由が私にはあります。
 ずっと道南に住んでいるのですが、まだ幼い頃、太平洋側から、山を越えて日本海側にある江差に行くことが良くありました。もっと北に親戚宅があるからですが、車でずっと進むと、日本海が見えてくる坂があるのです。わっと視界が広がって、子供心に「うわー」となるのですが、まさにその視界に、私をビビらせる存在も同時に入ってくるのです。
 海に浮かぶスフィンクスのような大きな小島のような岩。
 大きな小島?
 間違ってはいません。正確には「あまぞわい」ではないのですが、本当に怖かった。そのくせ、何度も振り返って、まだ、見える、まだ見えるを繰り返すガキ。
 海にある怖さは、容易に近づいて確認し得ないという要素も入っていると思うのです。

◆ 信号手 ◆ チャールズ・ディケンズ

 チャールズ・ディケンズ氏と言えば、「クリスマス・キャロル」などで有名な小説家ですが、私はこの話で知りました。
 主人公が、あくまで聞き手に徹していて、もしかしたら、これ実話じゃないのか?というくらい「本当っぽい」んです。もう、ね、この話は、映像がリアルに目に浮かぶんですよ。
 色も印象的に使われていて、読んでいる間、背後を振り返りたくなります。
 超有名な話なので、お読みになった方は多いでしょうね。
 私は、大好きです。

◆ 猿の手 ◆ W・W・ジェイコブズ

 これこそ有名で、いまさら紹介の必要はないくらいですが、あえてご紹介。
 多分、子供が一番最初に見聞きする怪奇小説ではないでしょうか?
 違います?
 私が子供のころは、大人で知らない人はいなかったし、児童文学の怪奇系の本にも、必ず入っていた気がします。ですので、私も子供のころから知っていて、気持ち悪い話だ、という印象は持っていました。それどころか、これがモチーフになった怪奇話が多くて、逆に辟易していたくらいです。
 ところがです!!!
 大人になって、読み返して驚愕しました。文章が、凄いのです。一行の、いや、一文字の無駄もなく、最少文字数で、完璧に、すべてを表現しつくしているのです。
 素晴らしい!!
 ショートショートの優秀なサンプルのようです!!
 もう、大好きになりました。読んだのは日本語訳なので、原文で読めばまた違うのかも知れませんが、表現云々より、伏線も含めたストーリー展開がこれ以上はないくらい研ぎ澄まされているということなので、怪談系の評価としては外れている事は無いと思います。

◆ 銀簪 ◆ 大佛次郎

 絶対一度は「だいぶつじろう」と読んでしまう、おさらぎじろう氏の怪談です。
 この話は、最近出版された文庫本で知りました。結構長めの話なのですが、淡々と登場人物のそれぞれが描写されており、飽きることはありません。むしろ、「この人、こんな生き様で、最後はどうなるんだろう」的な好奇心がわいてきて、没頭してしまいます。
 あえて、これ以上は言いません。
 私は、読み終えた瞬間「ヒュッ」と喉が鳴りました。
 それほど、びっくりします。 
 ぜひ、ぜひ、未読の方はお読みください。その展開に、驚愕します。

◆ 雨宮淳司氏の作品集 ◆

 小説タイトルではなく、作者名を挙げましたが、それほど、この方の怪談が好きです。
 例の超有名どころ、竹書房から、本を出されているのですが、初めて読んだ時、驚愕しました。
 他と明らかに一線を画しています。
 それくらい、凄い。
 私は、たいていの事は怖くないのですが(本当です。夜中の墓地や火葬場巡りといったリアルなことは平気です)、この人の本だけは、一時、本気で怖くて、自分の部屋に置くのが嫌だったくらいです。特に、二冊目の「怪癒」に収められている「誓願図」。
 医療系に携わっていらっしゃるだけあって、その方面の話が多く、しかも、その後に出された話では、理論的な展開で謎が解けていくわくわくする過程の長編も多く、この方の才能をビシバシ感じます。
 ああ、本当に、最高です。

#読書の秋2021

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リズムエッセイ【小松甘雨】
現在、「自分事典」を作成中です。生きるのに役立つ本にしたいと思っています。サポートはそのための費用に充てたいと思います。よろしくお願いいたします。