働き方と心をスリムにする職場のお作法。パスワードつきzipファイルの話
こんにちは、働くムダをなくしもっと効率的にご機嫌で働きましょう、が人生のテーマの小松です。
さて先日こんなニュースが流れてきました。
霞が関でパスワード付きzipファイルを廃止へ 平井デジタル相 - ITmedia NEWS
そもそもなぜパスワードつきzipを使っていたのか、セキュリティ的に意味があるかないかはここでは言いませんが、これは早く民間も霞ヶ関にのっかって廃止したほうがいいです。
私も経験者ですが、一度会社や職場で「社外にファイル送信するときはzipパスワードルール」を設けると、こんなことが起こります。
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・パスワードをつけずに送ってしまった→上司に報告
・同時に送信先のお客様や取引先に「パスワードなしで送ってしまった」詫びのメールを送る
・(情報が漏洩したわけではないのに)上司は会社のセキュリティ・ヒヤリハット・リスクマネジメント的な部門へ報告、今後の再発防止策をたてる
・社内イントラに毎月のヒヤリハット事例として事業部別にこんなのが載る
「○月○日、担当Aは取引先○○にパスワードなしで資料を送付。すぐに気づいたため、上司に・・」
・暇な人は誰が犯人か特定し噂を広める(本当に暇なんですね)
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「zipパスワード忘れた」のほかに、「資料が入った鞄を電車の棚に置き忘れた」「入館証をなくしたかもしれない」「資料の左上に情報種別を入れるの忘れた」とかいろいろまとめて報告が載るわけですが、そうしたうっかりしてしまった人に対して社内はとても冷たいです。
ルールを守れない人に厳しいのは仕方ありませんが、人間だから誰でも何百回に1回かはうっかりが発生します。それを想定して、例えば割り切ってファイル送信は管理職しか送れない仕様にする、とかにしたほうがよっぽど気持ちよく生産的です。
毎日「うっかりするかもしれない」というビクビクした職場環境で働いているとどうなるか?
ミスをしないようにものすごい慎重に仕事します。メールを送る前に何度も確認しますし、それ以外のところでもいつの間にか「ミスが許されない職場」「本業とは関係ないところで足をひっぱりあう職場」になっていきます。ものすごい生産性が悪いですしエンゲージメント以前に精神衛生上もよくありません。
例えば、社内の違う部署に送ったメールで件名や本文にどうでもいい誤字があっただけで、「先ほどのメールに誤字がありましたのでお詫びします、申し訳ありませんでした」という余計なメールを流すことになります。受け取り側もただでさえ大量のメール処理に追われているのに1通でも増えるとかえって負担になるということすら気づきませんし、受け取る側も最初は「そんな誤字くらいいいのに」だったのが、繰り返していくうちにそれが当たり前になり、ミスを許容しないハードルがじわじわ上がり組織を蝕んでいきます。
そんな雰囲気の職場から別会社に修行に行ったことがありました。本業に専念しハードに働くけれどもどうでもいいミスにはとても寛容な職場です。
異動したての頃、前の職場ではメールを全社員宛に送る際に「個人名でなく担当名で発出しなければならない」暗黙のルールがあり、あるときうっかり個人名で全員宛にメールをしてしまった直後、上司にびくびく「やってしまいました、訂正とお詫びのメールをしたほうが・・?」と報告相談にいったら、「は?何そのルール。そんなことで文句言ってくるヒマで子供な社員はウチにはいないよ」と一蹴され、とてもほっとしたと同時に何か呪縛から解けたような気がしました。そうだよね、本業をしっかりやれば大丈夫、と切り替えスイッチが入った結果、安心して仕事をすることができ、仕事量とパフォーマンスはそれまでの何倍にもなった気がします。
ちなみにこの職場も一応zipファイルパスワード付きのルールはありました(と思います)が、日々のやりとりはパスワードなしで黙認されていました。パスワードつける暇もないくらい忙しく、セキュリティ的にパスワード意味ないよって気づいていたのかもしれませんし、たとえそれが原因で情報が漏れてもそのくらいで会社や組織が傾くことはない、というような肝っ玉と安心感がそこにはありました。
ミスを許容する風土がある→心理的に安全して働ける→エンゲージメント・帰属意識が高まる→モチベーション・生産性があがる→ルーチン以外の創造的な仕事も推奨できイノベーションが生まれる土台がある→業績もブランド力もあがる→ミスを許さない職場とどんどん差がつく
こんな感じでしょうか。
さてフォローしますと、以前の職場はさすがに今はzipファイルパスワードつきルールはやめていて、いろんな要素が重なり改善改革を繰り返し、風土も業績もよくなり今では人気企業になっています。
対して知人の会社に、まだzipファイルパスワードつきルール徹底・社外にも暗黙のルールを課している会社がありますが、友人である彼の発言を聞いているとこんな感じです。
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・取引先がパスワードなしで見積書を送ってきたから取引するのをやめた
・テレワークだとサボる人はサボるからさせたくない
・社員が資料を持ち出しセキュリティ事故を起こしかけ、オフィスに監視カメラをつけた
・名刺を渡したはずの取引先から再度メールアドレスを聞かれたから紛失したのかもしれない。会社に報告しなければ。
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普段はとても性格のいい友人なのですが、社内のルールにとらわれすぎると、おかしなことになっていることに本人もまわりも気づかなくなってしまいます。
最初に戻ると、意味がない仕事・ミスを許さない一つ一つの積み重ねが企業を蝕んでいき、世間からはどんどん置いていかれ弱体化していきます。
今回多くの企業がコロナというか緊急事態宣言を機に、今まで足踏みしていたテレワークやビデオ会議・チャットを導入し、案外大丈夫ということに気づき働き方と価値観ががらっと変わりました。
今回の「霞ヶ関、パスワード付きzipファイルやめるってよ」も諸々の諸悪を職場からなくす大チャンスです。ぜひ今このチャンスにのって下さい。日本からムダなこと・足のひっぱり合いをなくしていければと切に願っています。