小説【何にでも興味を持つ下地さん。】
「下地さんってさ、何にでも興味持つよね」
「うん! 気になった事があったら、その事について自分の中で解決しないと気が済まないんだよね」
窓際から、クラスメイト女子二人組の話声が聞こえてきた。俺の席は、その女子が居るところから三席ほど離れている。
チラッと窓際の様子を見ると、俺は机に突っ伏した。
「昨日もテレビで観た検証VTRが本当なのか気になっちゃって、試していたら全然眠れなくなって寝不足なんだよね」
「下地さん何言ってるの? 検証VTRなんだから、実際に検証してるんでしょ? 答えが出てるじゃん」
「いやー、そうなんだけどさ。実際に自分でやってみないと本当なのか気になってモヤモヤしちゃうんだよね」
「なにそれ。変わってるね」
女子の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
その直後に、息を切らしながらドタバタと走ってくる音が聞こえてきた。
「はぁ。はぁ。っ……おはようっ!」
「「おはよう」」
どうやらその音を発していた持ち主は、窓際の方に行ったようだ。
「どうしたの? そんなに息を切らして」
「それがね、さっき下で聞いたんだけど、去年までいたおじいちゃん先生知ってる? 」
「知ってるよ? 優しかったよね。そのおじいちゃん先生がどうかしたの? 」
「それがね、そのおじいちゃん先生、巣から落ちてしまったツバメの赤ちゃんを戻そうとしたんだけど、脚立から足を踏み外して亡くなっちゃったんだって」
「えー!? ほんとに? こわい……」
同感。俺もこわい。人間、打ち所が悪ければあっさりと死んでしまうんだな。
「脚立から足を踏み外して、死んじゃったんだ。人間、あっさり死んじゃうもんなんだね」
おっ、奇遇だね下地さん。俺も同じこと思ってた。
「死ぬって何だろうね。死んだらどうなるんだろ。どこへいくんだろ」
それを考えるのは無駄だよ、下地さん。それを考えるのは、寝る前の俺のルーティーンだ。
寝る前に考える事、早数年。答えが出てきたためしがない。俺は寝る前に死について考えることが当たり前となってしまい、眠れなくなるどころか眠りのスイッチが入ってしまうゾーンにまでたどり着いたよ。
……なんだか眠くなってきたな。
「そんなの、誰もわからないよ」
と、女子の声が聞こえた気がする。
「ちょっと、何やってるの下地さん。窓に足なんかかけたら危ないよ」
「いやー、死んだらどうなるんだろうって気になっちゃってさ。……よいしょっと!」
「え!? ちょっ!? わっ!? 」
「「キャーーーーーーーー!!! 」」
女子の悲鳴が聞こえたと同時に振り返ると、さっきまでそこに居たはずの下地さんの姿がなかった。