フラフラ旅の代償
ベトナムのムイネーに初めて来ている。かつてベトナムに住んでいた私にとっても、ここは未知の場所だった。南国特有の温暖な空気が心地よい。ダラットという高原地帯から移動してきたが、そこでの寒さとは打って変わって、ムイネーの穏やかな暖かさとやっと1人になれたことにホッとしている。
今回の旅のルートは少し変則的だった。まずハノイに入国し、かつての日々を懐かしむひとときを過ごした。その後、飛行機でダラットへ移動し、そこで数日過ごしてからムイネーに向かった。ハノイでの時間はノスタルジックで心に響くものがあったが、ダラットとムイネーは新たな発見と経験に満ちていた。
旅の相棒と微妙な空気
今回、一緒にダラットまで旅をしたのは、日本で知り合ったベトナム人男性。彼がハノイ出身であることもあり、彼の帰省タイミングに合わせて同行する形になった。彼が手配してくれたフライトやホテルの予約に甘え、半ば成り行きで旅が決まったのだが、正直、少し後悔する場面もあった。
彼は親切で頼りになる部分もあるが、どうやら私との旅に「期待」を抱いていたようだ。同じ部屋に泊まることから、彼の中で何かしらの暗黙の了解があったのかもしれない。しかし、旅を決めた1カ月前は私自身も少し享楽的気分だったはずなのに、なぜか今は恋愛や性的な関係に対する興味が薄れつつあり、その期待には応えられなかった。
心の揺れと男女観の違い
夜、寒さに震えるダラットのホームステイで彼が近づいてきたとき、私は今更だが「半沢直樹」に没頭していた。「ごめん、今これ見てるから」とやんわりと距離を取ったが、彼の失望した空気が痛いほど伝わってきた。その後の旅行中、彼の態度が一変した。初めは気前よく支払いやサポートをしてくれたのに、急に細かい金銭の計算を始め、冷たい態度を取るようになった。もちろん私は全部割り勘でいくつもりだったので初めから金額は全てメモしていたのだか。
ベトナム人男性のこうした態度は過去にも経験がある。同じような状況で、一度拒否したことで急に態度が変わり、最後にはお金の請求までされたことがあった。そのたびに、私は「なぜ旅のパートナーにこんな期待をされなければならないのか」と疑問と苛立ちを覚え、悲しくなった。
私が感じたこと
この旅で痛感したのは、今更ながら男女間の価値観の違いと、期待が裏切られたときの態度の変化だ。もちろん、私にもフラフラした面があるのは自覚している。しかし、今はただの友人として楽しい旅を期待してる自分と、旅に「それ以上」を求めていた彼とのギャップが最後まで埋まることはなかった。
アジアの男性と旅をすると、どうしても「一緒にいる=関係を持つ」という暗黙の了解があるのだろうか。これが欧米の男性ならどうだっただろうと考えてしまう。一緒に旅をし、同じ部屋に泊まっても、何事もなく友情として終わることだってあったのに。
最終的に私は、彼への感謝よりも失望の気持ちが勝ってしまった。彼の行動に苛立ち、男の性欲やその表れ方に嫌悪感を抱いてしまった自分がいる。それでも、旅を通じて自分の心の在り方や、これからどんな関係性を築きたいのかを考えさせられたのは、良い経験だったのかもしれない。
ムイネーの暖かな海風に吹かれながら、そんな複雑な思いを抱いている。
また1人友達だと思っていた人を失ってしまった。
私も馬鹿だったけど、やっぱり気分ってあるじゃん?分かって欲しかったなぁ。