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老舗企業から学んだ「100年企業」の生き方 ~地域と共に歩む経営の知恵~
原点は、家業という名のファミリービジネス
私は中小企業診断士として、地域の中小企業事業者様のお手伝いをしながら、老舗企業の研究を行っています。
この道に進むようになったきっかけは、祖父が創業した群馬県のお土産品卸売業にまでさかのぼります。
幼い頃から、夕食が役員会議になっていたり、会社の社員の方々とお花見に行ったりなど、仕事と家庭が密接に結びついた環境で育ちました。
そんな環境の中で育った私でしたが、一度は家業を離れる道を選びました。
県外の工学部建築学科を卒業し、内装設計の仕事に従事してから、単身アメリカに渡るなど、様々な経験を重ねました。
新規事業を担う新たな挑戦
家業に戻ってきた当時、会社は大きな転換期を迎えていました。卸売だけでは厳しい時代。そこで、自社製品の製造に力を入れ始めたのです。
群馬県産の素材を使ったジャムやジュース。これらの商品をもっと地元の方や、もっと多くの方に知ってもらいたい。
その思いから、私はベーカリーカフェの立上げを提案しました。
「美味しいベーグルと、地元素材でつくったジャムやジュースを組み合わせたら、きっとお客様に喜んでもらえるはず」
この新規事業は、単なる収益改善策ではありませんでした。
地元の魅力を再発見し、発信していく。そんな想いを込めた事業でした。
新たな道を見つけて
ベーカリーカフェでの経験は、思いがけない出会いをもたらしました。
地元の事業者の方々から経営相談を受けるようになり、次第にコンサルティングの仕事へと活動の幅が広がっていきました。
そして現在は、私は独立したコンサルタントとして、多くの中小企業の皆さまのお手伝いをさせていただいています。
老舗経営者から学んだ「利他の精神」
お土産業界での仕事を通じて、多くの県内観光地を巡り、多くの老舗企業の経営者とお会いする機会に恵まれました。
懇親会での何気ない会話や、その振る舞いの中に、私は特別な何かを感じていました。
印象的だったのは、自社の利益を超えた視点です。
「地域が良くならなければ、個々の企業も良くならない」
そんな言葉を、老舗企業の経営者からよく耳にしました。
目先の利益だけでなく、地域や業界全体の発展を考える。その姿勢に、深い感銘を受けたのです。
経験がつないでくれた新しい視点
家業での経験、そして独立後の多くの企業との出会いは、私に大切な気づきを与えてくれました。どちらの経験もあったからこそ、今の研究や企業支援の活動に深みが出せているのだと感じています。
これからの時代に活きる老舗の知恵
現在、私はサステナビリティ経営と老舗企業の関係性について興味を持ち、研究を進めています。そこで見えてきたのは、老舗企業の経営哲学と、持続可能な社会づくりとの深い結び付きです。
目先の利益だけを追い求めても、企業の持続的な成長は望めません。地域や業界、そして世の中のためになることに、地道に取り組んでいく。そうした姿勢が、様々な価値を生み出し、多くのステークホルダーとの絆を育んでいくのです。
結果として、それは企業自身の価値となって戻ってくる。これこそが、100年企業から学べる重要な教訓ではないでしょうか。
老舗企業の研究を通じて、私は「持続可能な経営」の本質を探し続けています。それは、地域と共に歩み、時代を超えて受け継がれてきた、日本の企業経営の知恵なのです。