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短編小説|自分の道の迷い猫
寒い日に俺は捨てられました。生まれつき、俺は自分を猫だとは思えなかったからです。親も兄弟も自分のことを黒猫だとあえて考えるまでもなく、猫として生きていました。外見は猫でも、俺は自分のことを人間だと思っていたのです。
裸で歩くのも、落ちたものを食べるのも嫌でした。家族は当たりまえだと言いました。ここは俺の場所ではないと、悔しくて土につけた爪痕さえ情けない。捨てられた冬空の下、道に迷って行き着いた公園のすべり台の上で彼女と出会います。
人にそうするように、彼女は俺に話しかけてくれました。カイシャで、ほんとうにやりたいことができず、おカネを数えることに疲れたと。あそこは私の場所ではないと、彼女は言いました。雫が落ちた彼女の膝に、俺は手をおきました。
二人暮らしを始めて、俺は服を着ました。卓上でごはんを食べました。ドクリツしてやったと笑う彼女の膝に、俺は手をおきます。言葉を喋れたなら、彼女にこう言ったでしょう。道に迷って遠回りしたぶん、どうやら世界は広がるらしい。
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