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第一話 『コマンドラ』

「ようこそ、komajo storeへ。
 今日は、何をお求めでしょうか?」

奥の扉から出てきたのはどうやら店主のようで、肩には謎の小さな生物も乗っかっている。

「あの、えっと…先輩の魔法士から、魔女を目指すならまずはここに行けって…だから、あの…何を買ったらいいでしょう?」

言われて初めて、何を買うべきか、何も考えずに来てしまっていた事に気がついた。
相手は嬉しそうに答えた。

「なるほど、それは光栄です!その先輩さんには感謝しないとですね。初めての方にうちを紹介していただけるなんて…!となると、やっぱりこれですかね」

そう言って、肩の上の生物の頭を人差し指でよしよしと撫でた。生物も嬉しそうに、頭を撫でる指へ両手を伸ばして喜んだ。

「魔法具や魔導書を扱うようなお店は、うち以外にも結構あるんですけど、この『コマンドラ』はうちでしか扱っていませんので」

どうやら、肩の上の生物は『コマンドラ』と言うらしい。

「コマンドラはマンドラゴラの仲間で、分類的には植物なのですが、自分の意思で動いたり、遊んだりします。もちもちふわふわで可愛いでしょ?よかったら触ってみます?」

肩から『コマンドラ』をおろし、手のひらに乗せ、目の前に差し出す。

「ほんとだ…もちふわ…」

その触り心地と可愛さに思わず顔が綻んだ。

「コマンドラは適齢になると、人間や他の生物の相棒となって日々を過ごす、という習性があります。うちは独自のルートから相棒を求めるコマンドラと契約して、君たちの様なコマンドラを求める人々に紹介をしているんです」

「そんな習性が!?…コマンドラを求める人って!?…つまり、使い魔的なことですよね…?クロネコとか、ふくろうとかと、一体何が違うんですか?何が出来るの?何をするのが特徴なのですか?」

「何もしません」

一瞬耳を疑った。

「コマンドラは特に何もせず、先ほどのようにその見た目とフォルム、触り心地で癒すのが彼らのお仕事です。あなたが何かをしたい時は、否定も肯定もせずに楽しんで手伝ってくれます。意外とそういう"人"って居ませんよね。けど、何かやりたいことがある時には、そういう存在が大切だったりすると思うんです。実際、そういった方々からコマンドラは求められていることが多いんですよ」

たしかに、さっきコマンドラに触れた時、とても落ち着く気がした。

「隣の部屋にたくさんコマンドラが居たり居なかったり…契約はしているけど、今はお買い物や散歩に行ったりでいない子もいるんですけどね、それ以外のコマンドラは隣のお部屋にいますので、行ってみましょう」

隣の部屋に入るとそこでは店主の肩の上にいた生物に似た生物がたくさん、遊んでいるのが見えた。
店主は手を叩くと、みんなに声をかけた。

「はいはい、皆さん。"お見合い"の時間ですよ〜。並んでくださ〜い」

そういうと、コマンドラたちは一斉に台の上に並ぶ植木鉢の中に順番に収まっていった。

「気になる子が居たら教えてくださいね。ビビッときた子で大丈夫ですよ」

ぱっと見は同じような姿、顔をしているが、葉の色はもちろん、表情もよく見ると一体一体異なっているのがわかる。端から順番に一人一人の顔を見ていく…。1番最後のコマンドラは直前におやつを食べていたのか、口元にクッキーのカスが付いている。

「この子にします」

口元にクッキーが付いている子を指差す。

「あ!その子…!その子ね!…とってもいいんだけど、見てわかる通り、他の子たちよりちょっと、食費がかさむかもしれません。それでもよろしければ問題ないですよ」

店主が口元のクッキーを落としてあげながら答えた。

「コマンドラは基本的には光合成とお水で育つので、食事はいりません。ただ、多くの個体が娯楽としておやつを食べるのが好きなのです。特にその子はよく食べてますね。でも、わかります!食べてる姿が可愛いんですよね!!」

「私も、美味しいものを食べるのが好きなので、一緒に美味しいものを食べられたらいいなと思って…」

「とっても素敵ですね。是非、たくさん色々なところに連れて行って、美味しいものを一緒にたべたりして、可愛がってあげてくださいね」

お迎えにドキドキのコマンドラ

つづく

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