大阪市の神社と狛犬 ➍此花区②鴉宮~獅子舞顔の浪速狛犬~
大阪市此花区の地図と神社
大阪市には、現在24の行政区があります。淀川のすぐ南側には5つの区がありますが、此花区はもっとも海に近い西側に位置します。
此花区には、神社が6社があります。(地図参照)
住吉神社という名称は2社だけですが、この地は古来海との関係が深く、朝日神明社以外の5社には住吉大神が祀られています。
鴉宮は、阪神電車伝法駅の南東約300mに鎮座しています。境内のすぐ南は正蓮寺川河川敷公園の土手になります。
鴉宮
■鎮座地 〒554-0002 大阪市此花区伝法2-10-18
■主祭神 天照大神・住吉大神・蛭子大神
■由緒 順徳天皇の建保3年(1215)、村と港の繁栄を祈念して伝法村の中心に傳母頭神社として祀られた。文禄元年(1592)、豊臣秀吉が瀬戸内より日本海への渡航に際し、御神前に祈願したところ、奥の森より三足の鴉が出現し、航海の安全を守護せんとの神告があり、お告げの通り無事平安に帰国を果たした。秀吉はこのことに多いに感激し、神社名を以後「鴉宮」に改めよと命名したと伝える。
狛犬1
■奉献年 不明(推 明和?)
■石工 不明
■材質 砂岩
■設置 拝殿前(注連柱内)
狛犬2
■奉献年 昭和十四年一月(1939)
■石工 不明
■材質 花崗岩
■設置 拝殿前
狛犬1
鴉宮拝殿前には2対の狛犬が安置されている。注連柱のすぐ内側にいる狛犬は、顔の一部や大腿部などに剥離があるが、かなり古い浪速狛犬だと思われる。目鼻から口元の様子は、獅子舞顔をつくる上宮型で、吽形の頭上には大きな角がある。お隣の福島区の海老江八坂神社の明和7年の狛犬とも似通っている。
後方から眺めると、尾の部分にも損傷があるが、横に張った立派な大腿部がよくわかる。尾の中心部は大きな蕨手で、その周囲をうねる毛房が立ち上がる。
狛犬2
拝殿前に安置されているもう1対は、阿形が「玉取り」・吽形が「子取り」の、比較的新しい花崗岩製狛犬である。台座に「昭和十四年一月 四貫島嘉永町 木谷健三 建之」と彫られている。
なお、鴉宮の拝殿正面には、他社にない特殊な装飾が施されている。それは舟の舳先が取り付けられていることである。舳先の上には龍頭がある。鴉宮とこの地に住む人々と、海運との深い繋がりが示されていて興味深い。
狛犬3
■奉献年 不明
■石工 不明
■材質 砂岩
■設置 中門前
鴉宮の本殿は、他の神社と同じように拝殿の背後にあるが、本殿前には立派な中門がある。この中門の手前に小さな砂岩製狛犬が置かれている。阿形はかなり損傷が激しい。台座は後補と思われる。創建は不明だが、昭和初期までのものか。
狛犬4
■奉献年 不明
■石工 不明
■材質 花崗岩
■設置 末社前
鳥居に「末社」とある。近隣の五社の祭神が合祀されている。鳥居と社殿との間に、花崗岩製の狛犬が置かれている。
奥行きのない縦長の狛犬だ。台座がセメントで不自然に固められていて、奉献年などはわからないが、大正から昭和にかけてのものだと思われる。
狛犬5
■奉献年 不明
■石工 不明
■材質 花崗岩
■設置 琴平社前
鳥居に「琴平社」とある。近隣の四社の祭神が合祀されている。社殿前に、花崗岩製の新しい狛犬が置かれている。阿形が玉取り、吽形が子取り。