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#創作一句 / 曼珠沙華の彼女④

【投句】
待宵の一人、独りぞこぬか雨
まつよいのひとり、ひとりぞこぬかあめ

【背景】
悪友の悪巧みにより図らずもかつての彼女と再会した僕だが、その彼女から贈られた花をたどってみれば、

曼珠沙華、秋明菊、桔梗ききょう

どうゆう魂胆なのか……
彼女の気持ちがはかり知れない。
考えれば考えるほど、彼女を訝る気持ちが募るばかりだ。

気持ちの整理がつかないまま僕は意を決して、悪友には知らせず彼女の小料理店に赴いた。
小料理店には女将の彼女が一人いた。
そして奥には桔梗ききょうが生けられている。
まるで僕が来ることを察していたかのように。

意を決して乗り込んだ僕だが、カウンター越しに当たり障りのない話題に終始して、肝心なことには触れることができなかった。
結局、敗北感のような惨めさを背負いそうそうに店をあとにした。

帰りの道すがら、彼女への猜疑心と悪友への不信感が頂点に達した。

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