ミステリアスな多摩湖周遊と豚のいないサイボクハム、吉見百穴に住まう幻のコロポックル
8月の中旬、梅雨のように雨が降り続く週の休み、多摩湖・埼玉めぐりに出かけた。
多摩湖に行くことにしたのは、「海は遠いけど水が見たいな…」と思ったからだ。前世がフナムシなのかたくさんの水を見ると心が落ち着く。そういえば、長く多摩民(たまみん)でありながら多摩湖には行ったことがなかったし。
ネットで調べると、多摩湖は春になると桜がきれいで良さそうなところだ。バードウォッチングや散策に訪れる人も多いよう。
そんな前情報もあったし、前に同じく人工の湖である奥多摩に行ったとき紅葉がとてもきれいだったので、ああいう感じに木々が美しくマイナスイオン的な何かが充満している場所だと期待していた。
しかし、実際の多摩湖は鬱蒼と生い茂る木々と不法投棄を断固許さない姿勢、そして乱立するラブホテル群が印象的なミステリアススポットだった。
湖をめぐる鬱蒼とした車道は雨空のせいで一層薄暗く、途中から未舗装の砂利道になって「不法投棄禁止」のステッカーや立札が道端の至るところに貼られたり立てられたりしている。
そして、何といっても茂みが深過ぎるのか道路が湖から離れているのか、多摩湖が見えない。
しかも鬱蒼とした砂利道を進んで行くと、途中にラブホが並び立つエリアがあるではないか。
鬱蒼とした湖のほとりの古びたラブホ。密室のラブホで起こった殺人事件、犯人は湖畔の茂みに潜んでいるのか…的なミステリーに都合の良さそうな場所だが、一体どんな人が利用するのだろう。近くの西武球場か西武遊園地帰りのカップルか、それとも東大和市民の密かな憩いの場となっているとか…?
解放感のある湖と夏の新緑…と期待した風景とは違ったけど、雨に濡れミステリアスな雰囲気に包まれた初多摩湖の満足度は意外にも高かったのだった。
でも、当初の目的の多摩湖はほぼ見えなかったし、レンタカーは1日借りているしね、ということで、次は埼玉に入って"豚のテーマパーク"らしいサイボクハムへ。
私はてっきり養豚場が併設されているのかと思ったけどサイボク園内には豚はいないらしく、生きた豚への思いがつのる。
が、園内にある豚の像(創業者ご夫妻と豚の像)と売店に打ち捨てられた(ように見えた)豚のぬいぐるみには会えた。
ビニール袋に入ったぬいぐるみからはここ何年も売れていない雰囲気が滲み出ている。実は月に10体くらいは売れているかもしれないが、佇まいとしては過去1年くらいは売れていない感じだ。
食肉豚売り場にたたずむ孤高のぬいぐるみ。「P」の文字が入ったオーバオールがなで肩からずり落ちる様に哀れを感じて購入した。タグを見ると名前はぷーとん、好きな食べ物は桃だそう。
うちに連れ帰ったぷーとんくんは、猫にかじられるといけないのでカーテンレールの上に乗せられている。
次に行った吉見百穴では、雨が強く降り出した。ここも多摩湖と同じで晴れの日に青空をバックにしたらまた違う印象になるのだろうが、雨降りの日には怪しさ満点だ。
太古の古墳の地下に戦時中の軍需工場があるというのは複雑な歴史のグラデーションを描いているし、坪井博士によって一度は「コロポックル」のお住まいとして断定されたというのも月刊ムー的な面白さである。
そしてこの吉見百穴、地面の土が粘土質な感じで、雨の日に真っ白なスニーカーで行くべきところではなかった。泥がついた靴は翌日以降も雨が続いて洗わないうちに、ウタマロ石鹸でも汚れが落ちなくなった。ウタマロ石鹸で落ちないものは諦めるしかないと思い、今も吉見百穴の泥つきスニーカーを履いている。
こうして1日でいくつかの場所を巡ったけど、やはり1番インパクトがあったのは多摩湖だ。
まるで梅雨のように雨が降り続いた夏の半ば、鬱蒼とした多摩湖の湿り気が、今年の夏の良い思い出になった。
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