こまえのデザイン. 視察日記 (vol.8 富山市 Sketch Lab)
こんにちは、こまえのデザイン. (狛江市未来戦略室)の銀林です。
今回は、7/11-12の富山出張🚅(富山県庁・富山市役所)のレポートの最終回、富山市の未来共創拠点施設『Sketch Lab』(スケッチラボ) です。
富山市スマートシティ推進課の中村さんにお話を伺いました。
(前回 vol.7 富山市まちづくり推進課)
(前々回:vol.6 富山県民間活力導入・規制緩和推進本部)
(前々々回:vol.5 富山県庁ウェルビーイング推進課)
スケッチラボとは。
スケッチラボは「未来を描ける場所」をコンセプトに、2020年に富山駅前のCiCビルの一角に設けられた「未来共創拠点」と位置付けられた施設で、普段は会員制のコワーキングスペースとして稼働しています。
このスケッチラボを運営するのは、産学官の連携組織「とやま未来共創チーム」で、この事務局を担っているのが、お話を伺った富山市スマートシティ推進課とのこと。
スケッチラボが生まれた背景
◆富山市では少子高齢化が進行する中、今後10年間で15-49歳人口の減少、50歳以上人口の増加が急激に進むと予想され、このことは市民から寄せられる相談件数の増加にもつながると見込まれている。
こうした公助要請の高まりの一方、少子高齢化は行政経営にも大きな影響を与えており、人員不足は言うまでもなく、扶助費や社会インフラの維持管理コストの増による財源不足も懸念されるなど、富山市は少子高齢化がもたらす構造的な問題に直面している。
◆そのような問題を抱えながら、持続可能な地域経営を行っていくためには、「多様な主体による地域課題の解決機会を増やし、地域に対する若者の関心の寄せる」ことで、労働力人口の増からの税収増、地域課題の解決のビジネス化などに繋げていくことが必要である。
◆そのために「産業構造の硬直化」「若者の流出」「税収確保」「産業・雇用政策」「行政における垂直統合モデルから、多様な主体による地域経営・水平分業モデルへの転換」といった、地域や行政における課題を「地域課題解決型共創プラットフォーム」で解決していくというスキームを考えており、この地域課題解決型共創プラットフォームとして「とやま未来共創チーム」を立ち上げ、スケッチラボを運営している。
とのこと。
未来共創、のためのスケッチラボ
◆多様性…ブレイクスルーを起こすには、参加者の専門分野の多様性が高い方が望ましい。失敗も多いが成功もある。※多様性が低いと、失敗もないけど成功もない。
◆対話の重視…相手を打ち負かす「議論」でもなく、相手の関係性をつくるのを楽しむ「会話」でもない、傾聴による互いの意見の違いの理解と質問により相手の知性を引き出す「対話」を重視する。※人の話もちゃんと聞く。
◆課題の明確化…現在の日本社会では解くべき課題の見極めよりも解決策を考えることにばかり時間を費やしている。課題の見つけ方を知らない社会人も多い。解くべき課題を明確化するには「ありたい姿(理想)」を描くことが重要で、理想と現状のギャップにこそ解くべき課題がある。不確実性の高まる社会でイノベーションを創出するにはこうしたバックキャスティング(未来起点の思考法)のアプローチが有効である。
…これらを叶えていくための拠点として、スケッチラボがある。
視察を終えて。
まず何よりも、富山市が抱える課題とそれを解決していくための"仕掛け"としてのスケッチラボの役割が、因果関係の構造から明確に整理・言語化されていることが、とても興味深かったです。
実際に、スケッチラボの事業として実施している交流イベント「スケッチミートアップ」や「まちづくり対話会」、アントレプレナーシップとシステム思考のプログラム、地元経済界と連携したビジネスプランコンテスト「スケッチオーデション」、行政との連携「とやま未来共創会議」など、課題認識と解決スキームが明確であるからこそ、事業それぞれの位置付けもきちんとデザインされていると感じましたし、説明を受けていても、いちいち納得できて大変分かりやすかったです。
(そしてこの中村さんは、何と前回の記事で紹介した佐伯さんと同期という。富山市、すげー!!)
今回の視察で、現在立ち上げ準備を進めている狛江市の地域まちづくり法人においても、その存在意義や目的、課題設定の部分について、より解像度を高める必要があると感じましたし、それを構造化して表現する部分も大変参考になりました。
時間もないなかで、また急なお願いにも関わらず、快く視察を受け入れていただいた、富山市スマートシティ推進課の中村様、ありがとうございました。