黄昏の橋を渡れない男_4
夕暮れ時、アキラはさびれた町の片隅に
ぽつんと佇む小さな食堂に足を踏み入れた。
店内は年季の入ったテーブルと椅子が適当に配置され、壁には色あせたポスターが貼られていた。
空気には油と古びた木材の匂いが混じり合い、どこか懐かしさを感じさせる。
カウンターの向こうには、愛想のない女主人がひとりで厨房を切り盛りしていた。
アキラが席に着くと、彼女は何も言わずに水を一つ出しすぐに厨房へと戻ってしまった。
選択肢は多くなかったが、アキラは迷うことなくラーメンを注文した。
待つこと数分、彼の前に運ばれてきたラーメンは、見た目にも味にも特別なものはなく
むしろ美味しくないとさえ感じられた。しかし、アキラは無心でスープを啜り、麺を啜った。
彼にとって、この食事の味は重要ではなかった。
大切なのは、これが彼の人生での最後の食事であるという事実だけだった。
店内の古いテレビからは、世界の片隅で起こっている出来事を伝えるニュースが流れていたが、
アキラはそれに耳を傾けることなく、ただ自分の前のラーメンに集中していた。
外の世界の喧騒や他人の生活が、この瞬間の彼にとっては遠く感じられた。
食事を終え、彼は静かに席を立ち、支払いを済ませた。
女主人は彼の去る姿に目もくれず、ただ無表情でレジを打った。
アキラは店を出ると、ふと空を見上げた。夕日が美しく沈んでいく光景が目に映り、透き通った空間が漂った。
しかし、その空間はすぐに消え、彼は再び前を向いて歩き始めた。
この食事は、アキラにとってささやかな儀式のようなものだった。
すべての終わりには、静かな瞬間が必要だと彼は思った。そして今、彼はその瞬間を自分自身で経験していた。