鬼の居ぬ間に～実家断捨離【番外編】
鬼とは、実家の父のこと（笑）
私と妹が進めている実家断捨離（ダウンサイジング）に、何かといちゃもんをつける面倒臭い父のことである。
その父が、昨年末、肺に小さな癌が見つかり、年明け早々、入院・手術となった。（経過は良好で、これを書いている今はすでに退院している。）
つまり、”鬼の居ぬ間”とは”父の入院中”。
面倒臭い父の居ない間にあれやこれや色々しちゃったので（笑）
いざ、実家断捨離シリーズ番外編。
妹のＴちゃん
父母の見まもりに関して、私と妹のＴちゃんはいいコンビなのだと思う。
お互いの足りないところを補い合うデコとボコ。阿吽の呼吸だ。
実家の隣りに住む私は、父母を病院や買い物に連れていく、いわゆる雑務担当。
雑務はお任せ！と言いたいところだが。
最近の父母のゆっくりペースに少々イライラが募っていて、ついつい余裕のない言動になりがち、、、
（2025年は忍耐だ！笑）
父母にかける言葉は、おのずと”叱咤激励”の叱咤成分多め。
一方、転勤族のＴちゃんは寄り添い担当。
遠方なぶん、父母に小まめに電話を入れてくれるし、父母を招いては旅行に連れ出してくれる。
薬剤師なので、父母の薬や体調の心配事の相談にも乗ってくれる。（病識無しの私にはありがたい存在。）
高齢の父母に「気合いで乗り切れ！」と言いがちな私と違って、アメと鞭をうまく使う。
叱咤よりも激励多めで対応してくれる。
そんなＴちゃん、なによりスゴイところは、父母の変化によく気がつくところだ。
気がついては、私に宿題をくれる。
「お母さんのあの黒いホクロ、ちょっと大きくなってるでしょ。気になるから皮膚科連れて行って。」
（え？どのホクロ？）
「足が痛いみたいじゃけん、通販で〇〇を注文しといたから、あとよろしく。」
（何をよろしく？）
「PayPayしてみたいらしいよ。教えてやって。」
（私、PayPayしてないんだけど、、、）
お恥ずかしい限りだが、私は何も気がつかない。
私自身が病院嫌いだし自然治癒力を信じてジッと我慢の子なので、自分の不調も不調と気づかない。
だから？、父母の病気や不調なんか気づくハズがないのだ。
「姉ちゃんは近くにいるから変化に気がつかんのよ。」と言ってくれる優しいＴちゃん。
私を優しくフォローし、そしてニッコリと宿題を置いていく、、、。
Ｔちゃん、大活躍！
父の入院手術が近づいてきた。
父は心配ない。
入院すればもう病院にお任せするしかないし、見栄っ張りの父は自分のことは自分でなんとかするだろう。
問題は母。
年のせいか年々心配性が加速している。
お父さん、大丈夫かねぇ。
歯磨き用の割れないコップがいるねえ。
手術中は補聴器どうするんかねぇ。
パジャマは何枚いるかねぇ。
私は次女の里帰りの世話があったので、母のエンドレスな心配ネタに付き合ってあげる時間も余裕もない。
ここはＴちゃんに「頼む！」と丸投げをした。
Ｔちゃんは「任して！」と二つ返事で、正月からずっと実家に残ってくれた。
入院準備、話し相手、手術の病院待機、面会送迎など、全方位に母をサポートしてくれた。（ありがたや～！）
＊
父の手術が無事終わり、母の心配性がちょっと落ち着いた頃。
Ｔちゃんが動き出した。
数日間実家にいて気づいたことを片っ端から解決しようという。
名付けて、鬼の居ぬ間の大作戦！
母の困りごとを鬼（父）が居ぬ間にしてしまおう祭り！笑
父がいないから、家事も夕飯準備もそこそこに、とにかく動き回る母とＴちゃんだった。
買っちゃえ！
「ソレ、いつから使ってんの？」
実家に行く度に思うこと、皆さんはあります？
私は実家に出入りしすぎていて、残念ながら、ソレ、、、と思うこと（気づくこと）が少ない。
父も母もお掃除好きだし、（表向きには）片付いているし、私としては特に問題は感じていなかった。
しかし、Ｔちゃんは、以前から気になる点があったようで、お正月から滞在し時間がたっぷりあったし、小うるさい父はいないし、ヤル気スイッチをばっちり押してしまったよう。
①トイレスリッパ
トイレのマットとスリッパって、どのくらいのサイクルで買い替えるのだろう。
これらは洗えるのだ。洗っているのだ。
洗っているからこそ清潔は保たれているが、洗っているからこそ草臥れてもいる。
実家のトイレスリッパもしかり。
私も父母も草臥れスリッパがそこにある風景すぎて違和感がないが、Ｔちゃんはどうにも我慢ならなかったらしい。
「スリッパ買い替えようよ。」
ショッピングモールに出掛けてみたが、母は好みに合わなかったらしく、なかなか「うん」とは言わない。
ニトリやホームセンターなどに行き、結局、偶然立ち寄ったダイソーの300円商品を、
「とりあえずこれでどう？気に入ったスリッパが見つかったら買えばいいよ。」
と、なんとか新しくすることに成功した。
②脱衣所のマット
ずいぶん前になるのだろうか、珪藻土の商品が流行った。
実家は脱衣所に、そのシリーズの珪藻土マット（板）を置いている。
お風呂上がりの水滴をすばやく吸水し、洗濯の必要もない！と、一時期バカ売れしていたアレである。
出始めの頃は話題の商品で、正規品は結構いいお値段だったけれど、半永久的に使えそうな感じを出していた。
もちろん半永久的に使って使って、割れるまで使いたいと思って購入したのだろう。
しかし母は最近コレが嫌らしい。
「ここに立つと冷たいんよ、、、。」
ああ、確かに。
せっかく温まった状態でお風呂から出ても、これに乗るだけで足裏から冷えそうだ。
交換する気になったら話は早い。
Ｔちゃんお勧めのニトリで、足に優しいフワフワの脱衣所マットに買い替えた。
③フロアモップ
実家には父がお気に入りのフロアモップがある。
床を磨くのは父の担当で、父が通販で見つけたゴツいモップ。
雑巾を挟む部分が強力なクリップになっていて、力を入れて床を磨いても雑巾が外れないのがポイントらしい。
雑巾が外れないという事は、すなわち挟むクリップが硬くて、父でなければ使えないということ。（母はリウマチで握力は弱い。）
モップの総重量も重いので、母には使いづらいと言う。
「お父さんじゃないと雑巾が挟めんのよ。」
こういう問題点は普段は聞けない。
使っているところを見ていなければ、母の困りごとは分からない。
すぐに母でも簡単に使える今どきの軽いモップを買った。
「これ、ええわ～。」とさっそく使って喜んでいる。
昔使えたものでも、今の母には合わない。
長く使っている道具こそアップデートしてあげる必要があるのだろうなあ。
④コタツの掛け布団
ヘタっていたのは私も気づいていた。
でも、使えないわけじゃないし、、、
「新しくしたらいいじゃん！暖かいよ～。」とＴちゃん。
もはや調子に乗っちゃってる母とＴちゃん。
お店に行くも気に入った柄が見つからず、夜な夜な二人してネットを見まくり、とうとうポチっとしちゃったそう。
「お父さん、驚くじゃろうねえ～。」
お父さんじゃなくても、私も驚いてるよ、、、。
空気清浄機と加湿器
その他にも色々と買い替えたりして、とうとうＴちゃんが帰る日になった。その日の午前中は、私も一緒に父母の寝室の空気清浄機と加湿器を掃除した。
元々は風邪をひきやすい母のために寝室にドーンと据えていたこれらだが、父も肺が弱いとなれば、分解して掃除しておこうよ！、とＴちゃん。
できる限り部品を外して掃除をしたが、いや待てよ、、、
こういうのって、要はフィルターが重要じゃん！
加湿器はもう20年選手だし、空気清浄器ももう10年は使ってるよね？
フィルター無くね？
買い替える？となったが、アレでも一応フィルターの在庫を検索してみた。
、、、あるわ！笑
（あるんかーーい！）
今回は買い替えはしなかったが、高齢者に高級な高機能な機械はいらないな、と思った。
次に買い替える時は、シンプルで、掃除が簡単な、最小限の性能でいい。
フィルターの取り換えが面倒になってしまうようでは高機能機種も宝の持ち腐れになりそうだ。
さて、あと３日
Ｔちゃんが帰ってしまうと、父が退院するまでのあと３日、母は一人で広い家にいることに。
夕食、うちに呼んであげようかな～。
でもなあ、私の気づかいは結果的に母を甘やかすことになるのよねぇ、、、。
隣りの家のおばちゃんも旦那さんがなくなって今は一人だ。
母と同い年だけど、立派に一人でやっている。
私が近くにいるこの環境が、母の出来るを奪っていくのかな。
黙々と加湿器を磨きながら、今夜からの母の生活を思った。
「お母さん、今日はこの賞味期限ギリギリのコレを食べんさいよ。
これもあるし、あれもあるけんね。」
冷蔵庫を掃除していたＴちゃんがギリギリ食材を救うべく、母に指南を始めた。
「はいはい、これね。わかっとるよ～。」と母。
なんだ？
お母さん、やる気満々だぞ？
やっぱり私とＴちゃんは阿吽の呼吸だ。
何も相談しなくても、私と同じことを考えている。
今日から母を一人にしてみようや。
母の一人生活を、Ｔちゃん目線で色々手筈を考えてくれていた。
妹と実家を断捨離しているのも、元はと言えば、父母の暮らしを考えてのことだ。
父母が物の管理をしやすいよう、掃除がしやすいよう、最期まで（できる限り）家で暮らせるようにだ。
暮らしやすく整えたとて、母の自立心を奪っては元も子もない。
父のいない３日間で、母も色々考えるに違いないのだ。
＊
父が退院した。
父も母も心なしか以前より元気だ。
こうやって、老いを自覚して、老いに合ったように生活を変えるのだ。
たくさん動いて疲れたら昼寝する。
最近は、ちょっと覗くと、二人して首までコタツに潜って昼寝している。
ふかふかのコタツ布団、思い切って新調して良かったじゃん！
Ｔちゃん、お手柄だよ（笑）
【完】
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