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ART作品の世界を狭めている原因




私は創作人形や絵画、ぬいぐるみなど、一点ものの作家作品を取り扱う仕事を17年近くやってきた。


日本ではART作品の広がりはまだまだ狭い。






その一因は、


「購入後の手放し辛さ」


が大きく影響していると思う。





作家ものの一点ものは、手放すときに誰が買ったものか即分かってしまう。


なので、罪悪感を抱きながら手放される方がとても多い。





また、手放される事に敏感な作家さんも多い。


「オークションに出されてショックだった」

「フリマサイトで転売されてくやしい」


それも痛い程分かる。



私も以前は自分のお店で販売されたものがオークションに出されたりすると何とか取りやめてもらったりしてしまっていた。




でも、今は違う考えに至っている。







「買ったら(お迎えしたら)一生その人が大切にしないといけない」






この目に見えない決まり事のようなものが、
ART作品購入への足止めにもなっているのだ。




購入したばかりの頃は、
誰も手放す日の事なんて考えていないだろう。


それは私も同じ考えだった。




が、人には必ず寿命がある。


私もこの仕事を始めて15年超えた頃から、
顧客様がお年を召してきて、
セカンドオーナーを探して欲しいと頼まれる事が増えてきた。



余程好みの合う子供や孫、
後継者がいない限り、
創作人形や絵画などを受け継がせるのは難しいのだ。




私も、自分の身に何かあった場合、

「私の所有しているものは娘が気に入っているもの以外、全て欲しい方に販売して、
生きていくお金にしてあげて。」

と周囲に頼んである。







【ー必要なのは手放す自由ー】



お客様は、お金を支払って作品を買ってくださっている。


ART作品と言えども、「お買い物」に変わりはない。





ここで一度考えてみていただきたい。



自分の買った作品のセカンドオーナーを探すために販売することは、本当に悪い事だろうか?



例えば、上に書いたように歳をとった時。

急な病でお金が必要になった時。

自分の好みと作品にズレが生じた時。





人間なので歳は取るし、

急に働けなくなる事もある。

好みが変わる事もある。





セカンドオーナーを探すと言うことを「転売」と称される事が多いが、本当にそうだろうか?




私だったら、自分の大切な作品を、
その後も大切にしてくれる人に引き継いでいきたい。





本来ARTとはそう言うものでは無いだろうか。




何故アンティークドールは100年以上この世に残ってきた?

それは愛好家がいて、何度もオーナーチェンジを繰り返してきたからだ。

大切にする人のバトンを繋いだ結果だ。


しかし、アンティークドールを手放しても、
転売と叩かれることはない。



私は、今生み出されるART作品達も、
未来にアンティークとして受け継がれて行かれるものだと思っている。





作家が生きてる間は手放してはいけない?


そこまでお客様を縛ってしまうのは、
いかがなものだろうか。




お客様はきちんとお金を支払って購入しているのに、
何故か人目を気にしながら手放さないといけないのが現在の状況だ。



何かおかしくないだろうか?


私は、アートの拡がり辛さの裏に、
購入後の目に目えない重い縛りが原因していると思っている。


実際、私自身も手放すつもりもなく、手放してはいけない物だと思って大切に所有してきた。


が、仕事10年目で
やむを得ない事情による店舗閉店、
自分の病気、
家から追放、
妊娠、
切迫早産での長期入院、
出産費用などが一気に重なり、
金銭的に困窮し、
お人形を手放すしか無かった。

あの子達のお陰で何とか乗り越える事が出来、
本当に感謝している、

今は他の方が大切にしてくださっているので、
安心している。


そんな経験もあり、恐らく現代アート作品を取り扱う店舗としては初めて、

「セカンドオーナー探し」を隠す事なく堂々とやり始めた。

※実際は他の店舗でもオーナーチェンジでの売買は行われているが、全て秘密裏に行われている。


賛否両論あるとは思う。


でも、一度考えてみて欲しい。

例えば、自分の作品を一生持ち続けてくださった方が急にこの世を去られた場合、どうなるだろうか?


ART作品、創作人形や絵画などは、分からない人間にとっては本当に値段も思いも理解できない。

(私も所有していた価値のあるお人形を、ARTを知らない人に(10000円位でしょ?)と言われ驚いた経験がある。)

そう、処分されてしまう事だって十分にあり得る。
私なら、本当に好きな人に未来にバトンを繋げていって欲しい。

私は、セカンドオーナー探しを、
次に大切にしてくれる人を探す手段だと思っている。


うちでお預かりした場合、
お付き合いのある作家様にはご連絡し、
定価などお伺いして許可をいただいて販売している。


※なので「転売」で連想するような儲けは、
委託者様にも店舗側にもない。


そして、その作品を愛おしそうに迎えてくれる人が現れると、オーナー探しに出したお客様は安心され、私も幸せな気持ちになる。

手放されたら辛いと言う、作家さまの気持ちも痛い程分かる。

でも、買ったら他に販売してはいけない、という足枷をお客様につけてしまう事は、

未来にART会の世界を狭めることにもなると思う。


そこがほんの少しでも、柔軟になるよう、
セカンドオーナー探しという試みを続けている。

もちろん、著作権が消えるわけではないので、
勝手に商品がされて販売されたりしたらそれは違法となるし、罰せられる。


ただ、作家作品を手放すというのは、

ネガティブな理由だけではない、という事は
少しでも広まればと思っている。

私はこの素晴らしい世界を、もっと日本人が受け入れやすい状態にして行きたいと思っている。


日本人作家の生み出す作品は、素晴らしい。
もっともっと、広まってほしいから。


コルメ。

※文中に出てくるお人形と絵画は私の私物です。

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