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『朝のピアノ- 哲学者キム・ジニョンの哀悼日記 -』

著書名:『아침의 피아노 - 철학자 김진영의 애도 일기 -』
    『朝のピアノ- 哲学者キム・ジニョンの哀悼日記 -』

著者名:김진영 (キム・ジニョン, 1952-2018)
高麗大学校独語独文学科と同大学院を卒業し、ドイツのフライブルク大学で博士課程を修了。フランクフルト学派の批判理論とその中でもアドルノとベンヤミンの哲学と美学を専攻として勉強し、その教養の土台の上でロラン・バルトをはじめとするフランス後期構造主義を勉強した。特に、小説と写真、音楽など様々な領域の美的現象を多様な理論を用いて読みすすみ、資本主義文化と人生が閉じ込められている神話性をあらわし、解体することに長年関心を持ってきた。
 著者は、市民的な批判精神の不在が、現代のあらゆる不当な権力が横行している根本的な原因だと考え、<ハンギョレ>、<現代詩学>などの新聞・雑誌にコラムを寄稿してきた。
 代表作としては、翻訳書『哀悼日記』と著書『初めて読むフランス現代哲学』(共著)などがある。弘益大学校、ソウル芸術大学校、中央大学校、漢陽大学校など韓国国内の様々な大学で芸術と哲学についての教鞭をとり、哲学アカデミーをはじめとする様々な人文学機関で哲学と美学をテーマに講義を行った。哲学アカデミーの代表も務めた。

今回読んだのは、キム・ジニョン教授の『朝のピアノ』でした。本書は、キム・ジニョン教授が癌の診断を受けた2017年7月から亡くなる3日前の2018年8月まで、彼が病床でメモとして記録してきた散文を本として出版したものです。副題にある通り、これは彼の“哀悼日記”です。

読んでいて特に印象に残ったものをすこしだけ紹介したいと思います。 

슬퍼할 필요도 이유도 없다.
슬픔은 이럴 때 쓰는 것이 아니다.      - p.14

訳)
悲しむ必要も理由もない。
悲しみとは、こんな時に使うものではない。

삶은 향연이다.
너는 초대받은 손님이다.
귀한 손님답게 우아하게 살아가라.     - p.119

訳)
人生は饗宴である。
あなたは招待されたお客さんである。
貴いお客さんらしく優雅に生きなさい。

本を読み進め残りのページが少なくなっていくのが、彼の人生が少しずつ終わりに近づいていることを意味しているようで切なくしんみりとした気持ちになりました。同時に、読んだ部分が少しずつ厚みを増していくのも彼が生きてきた痕跡が積もっているかのようでした。

実際、最後の方は、文章で埋まっている面積よりも余白の面積の方が大きくなっていき、著者の紡ぐ言葉自体は少なくなっていきます。それでも、これだけページの余白に込められた意味を考えさせられる本はなかなかないと思いました。

生と死の境界で踊ること。
過去を後悔するのではなく、未来を不安に思うのではなく、今を愛すること。彼の文章にはこれらのメッセージが深く沁みわたっていました。

普段、散文集や詩はあまり読まないのですが、今回の『朝のピアノ』は本当によかったです。
韓国語ができる方や韓国を訪れる機会がある方は、ぜひ一度手にとってみてください。

もみじ


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