失われた時間
コロナ禍が始まろうとする数週間前に夫が倒れた。
半身麻痺の障害が残る症状で
入院が半年ほど続き、
その間、私は家のことと子どものこと、
そして仕事を済ませてから
毎日、病院へ面会へ行った。
急な状況の変化とこれからの生活のことで
心身が疲弊した。
その年は健康診断の数値が悪く、
低音難聴と診断された。
あれから4年。
とにかく無事に一日が
終わるよう必死だった。
夫のことで
たくさんの手間と時間がとられ、
自分を失くすような感覚に
陥ることもあった。
正直、この生活から離れたいと
何度も思った。
そうやって自分を失くす感覚で過ごしたその頃は
苦しいだけのムダな時間でしかなかった。
だけど、もし夫の病気がなければ
私はずっと平穏と思いながら
空回りしつづける
何も掴めないような生活を
過ごしていたことだろう。
今だって大変なことはたくさんある。
でも、それ以前の暮らしより
今のほうが確かに自分の人生を
進んでいっていると感じられる。
失われた時間
取り戻せない時間
本当はどの頃のことを
意味するのだろう。
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