孤高の武士
風そよぐ大きな平原に、男が一人、仁王立ち
その目はまるで光を浴びた猫の瞳のように細く、顔の輪郭は楕円。粋な袴を着こなし、腰には鍛冶屋がこだわりぬいて作った日本刀を携え、男はゆっくりと佇む。
「待たせたな 仙吉」
背後から名を呼ばれ振り返るとそこには康平がいた。
「何の用だ康平」
「これを作ったから試したくてね」
康平がそういうと懐から何かを取り出し始めた。
銃である こちらに銃口を向けている
「何の真似だ」
「今までお世話になりましたってやつかな」
康平が銃の引き金を引こうとした瞬間
仙吉は瞬きさえ許さぬ身のこなしで身構え、相手の懐に飛び込んだ。
それは一瞬の出来事だった。康平の左下に滑らかに入り、右上から抜けていく刀。鮮やかに舞う切り口、そこから飛び出す鮮血
両者は背中合わせとなった
康平は倒れる
「なかなかやるな仙吉、完敗だよ。」
「友だと思っていたのに残念だ」と言った仙吉の目にはすっと流れる涙
仙吉は振り返らずまた孤高の道を歩き始めた。
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