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第五世界の兆し[創作]9

9 思考実験

[幸福]…満ち足りていること。不平や不満がなく、たのしいこと。また、そのさま。しあわせ。
[至福]…とっても幸せ。これ以上ないほどの幸福。
[幸せ]…「仕合せ」とも書く。幸福であること。「激しい喜びや快感を感じている」という一時的・劇的な状態や、「嬉しさや喜びを感じることが多い」というある程度継続的な状態、「満足な状態にある」という静的な状態など、さまざまな状況を指す。めぐりあわせがよいこと。運が良いこと。幸運。ラッキー。めぐりあわせ。運命。
~ネットより~


 四六時中、自分の幸せについて考えていた。どうやら心理学者アブラハム・マズローが理論化した5段階の「欲求」を満たしても私は至福に至らない事が分かった。簡易な方法だが、それぞれの欲求が満たされている状態を想像してみた。その瞬間は少し満たされた気はするが、カチッと嵌まらない。どの欲求も直ぐ色褪せてしまった。人間として何か欠けているのだろうか、客観的にみて自分の性格が陰険なのは分かっているが、それにしても異常に暗過ぎる。病気なのだろうか?そんな事を考えながら大きなため息を吐いて、自分を受け入れた。

 なぜ鬱屈としているのだろう?あらゆる理由を削ぎ落として感情のみで考えた。そうだ「気分を害しているのだ」怒りのまま、正常な状態に戻せないでいるのが分かった。随分幼稚で粘着質だと思ったが大きく息を吸って、受け入れた。
 何に怒っているのだろう?内側を探ると文章に書けない事柄が沢山出てきた。なるほどこれでは耐えられないなと思ったが、また大きく息を吐いて、受け入れた。蓋をして無かった振りをするよりは、幾らかましな気がした。外側を探ると今の幸せな社会体制に心底ウンザリしていた。私は国から守られるに値する善良な市民ではないのだ。
 孤立すると貧困が訪れて死が待っていることは分かっているが、今さらパートナーを探すなんて無理だし、自殺も出来ない。自分をただ生かすためだけの既存の選択肢全部にウンザリしていたし飽きていた。
 
 選択するものが無く手詰まりになって困ると、はじめて本当の望みが現れ出した。それは様々な多くの体験を積んだ後でしか現れてくれない最後の望みだ。
 
 「至福なる死」78億全人類の望みはこの一点なのだと閃いた。なぜ今までその事に気付かなかったのだろう。当たり前過ぎるからか、誰も教えてくれなかった。いや、私が理解出来なかっただけかもしれない。とてもシンプルで、これこそが希望の光だ。幸せとは、最後のこの一点の死に全て集約されるものなのだ。

 この閃きで、浅はかにも箱を開けてしまったパンドラを軽蔑し責める陰湿とした気分から、1時間動かず瞑想し終えた後の解放されたような清々しい気持ちになれた。しかし一時の事なのかもしれないので、また思考を廻らせた。

 「至福なる死」が全人類の望みと仮定したら、その事を前提とした社会を構築していけばいいのではないかと考えた。
 今現在世界の人口は78億人。地球の資源は限られているし、地球上の生物は人間だけではない。普遍的無意識から人は感じているはずだ。人間だけの社会では、「至福なる死」をもたらさないということを。
 
 
 
    

 
 
 
 

 
 

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