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第五世界の兆し[創作]6

6  選択

 印象的な夢を見た。線路沿いに私はいて、すぐ横には昔風の単行列車。目線の先には二つの景色。一つは遥か遠くのジャングル。鳥が飛んでいて、人の気配は感じられない。もう一つは、高く巨大な岩山の上に肌色に近い黄土色の大きな建造物。小さい窓が沢山開いている。ピーテル・ブリューゲルのバベルの塔に似ていたが、形は四角形だった。
 線路は4本あって、電車は1つだけ。周りを見渡した後に声が聞こえた。
「間違えてはいけない」
何が間違えてはいけないのだろう?線路は数本あるが、乗れる電車は1つ。電車が2つなら、ジャングルか建造物かの選択かと思うのだが、私は電車に乗るか乗らないかで迷った。そして、乗らないで歩き出すと何故か電車が後ろからついてきた。大抵の夢は、目覚めてちょっとでも身体を動かすとスッカリ忘れてしまうのだが、ハッキリと覚えている。私は乗車しなかった。
 もう一つ、学校の教室に12人位の生徒達。私は後ろの席で皆の背中が見える位置に座っていた。横の席で顔が見える女子と男子生徒がいたが、二人とも見覚えはなかった。教壇に立つのはJさんで、何やら授業をしていた。柱に掛かっている大きい時計を見ると長針が50分を指している。「時間をオーバーしないで下さい」どうも何かのミッションについて説明しているようだった。学校の先生というよりは教官に近い立場に見えた。何のミッションか知らないが、タイムリミットがあるというのは分かった。
 
 昔から、なぜか難を「避ける」事が多い。大きなものでは東日本大震災で、当時は青森県に居た。混乱が少し収束してから実家の宮城県に戻る事ができた。小さなものだと、中学時代、部活動で外に遠征した帰り、皆は地下鉄を利用したが、私は歩ける距離だったので別行動を取った。後から聞いたのだが、駅員とトラブルが起こったらしい。外に出る時は、雨が晴れる事が多かった。土砂降りに当たる事もあるが、圧倒的に少ない。傘を結構な頻度で置き忘れた。
 
 どうもそれらを自覚して人に話すと真実味が薄れるが、自分の感覚に正直な選択をすると、物事が無難に流れるのだ。特別な力とは思わないが、「そのままを選択する」と何かに守られている感じがした。
 一度、自分は「守護霊」様に甘やかされているんだと中二病的妄想をしながら歩いていたら、何もないところでつまずきそうになった事がある。逆に注意喚起もしてくれるのかと、勝手に感動した。
 
 高校の時、遅刻する夢を立て続けに見た後に本当に遅刻したり、自転車に乗っていて自動車と接触事故を起こした時は、右足首の骨折のみで頭を打つ事はなかった。よく覚えていないが、身体をぶつける事なく、くるんと回って道路に座っていた。誰にも言えないが、当時は海外に行きたいと強烈に思っていて、結果として事故の保険金で行けたのだ。でも、その為に自分の体を犠牲にしたのかと考えたらすごく怖くなった。

 小さい頃は、2回位、知らないおじさんに連れ去られそうになるところを周りの人に助けられた。
 バス停で一人待っていた時に声を掛けられて、見知らぬおじさんの車で家まで送って貰ったが、「乗せといて言うのも何だが、知らない人の車に乗ってはいけないよ」と注意された。
 祖父の葬儀の時は、火葬場までの道のりを前の車に習って走ったが見失って迷子になった時、通りかかったバイクの男性に道案内をしてもらえた。お墓参りは決まって、晴れた。もしくは降っても小降りだ。
 少しずつ少しずつそういった細かな「助け」と感じる事柄の積み重ねによって、「見えない何か」を知りたいと思うことに、そう時間は掛からなかった。
 
 RちゃんとJさんとの繋がりは、まさにその一点にある。彼女は、統合失調症という精神の病を抱え「地球の救世主」であると主張した。私は病だと知りながら「彼女は救世主なのだ」と本気で思えた。彼は、仏教とお寺の中だけに留まらずあらゆる方法で、個人個人がそれぞれ人として成長するための後押しをしたいと望んだ。欲張りだと感じたが、彼ならやり遂げるだろうと思えた。
 
 間違えようはない。真実かどうかより、現実になるかどうかより、自分がどの選択をすればいいのか、小さい頃から何度も何度も体験で感覚的に教えて貰っていたのだから。

 

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