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第五世界の兆し[創作]1

1  気付き

 脳の機能が正常に働いていないのだと気付いたのは、高校の時だ。学力テストがいつも平均点以下だった。期末はさほど悪くない。決められたテスト範囲を直近で勉強すればある程度は良かった。中学からそうだった為、毎日勉強するという習慣が身に付かなかった。それが後に惨めったらしく苦しむ事となる先の未来に繋がるということには、全く頭が回らなかった。漫画の世界を好み絵を描くという趣味に多くの時間を、いや青春全てを費やした。それがまるで自分の使命かのように。
 空想の世界の没入の最初は、覚えている限りでは絵本だ。小さな頃の記憶がほぼ無い。なぜか幼稚園の時、強烈な男女の睦に惹かれた記憶があるが原因は定かでない。自分が男であるという錯覚を抱いていたこともあった。いつも何かしら空想の世界を創り出していたような気がする。現実があまりにもつまらなかったからだ。
 母親は私が3才の時に、ウィルスが足の傷口から入ったとかで原因不明のまま入院して生死をさ迷い死にかけたそうだ。そのせいか、いつも身体を休ませていて、外で思いっきり遊んで貰った記憶がなく自分の空想の中で、もじもじ過ごしていたように思う。
 3つ上の姉は活発で、私とは遊びたがらなかった。三人目が欲しかったと言い、すぐケンカになった。一緒に遊ぶと、とてもつまらなそうになるのが分かり疎んじられた。小さい頃に受けた拒否される感覚は、心の澱として積もり更に内向的になった。また身の回りの事を自分でうまく出来ず母親の手を借りる事が多く、姉より余計に甘やかされていた。
 父親は、絶えず仕事をしていたので、可愛がられた記憶はない。子供として当たり前の振る舞いを怒られたり、小1くらいまで一緒にお風呂に入れさせられたという嫌な思い出しかない。何かしら将来役に立つだろう事だけを提供されていたように思う。
 でもそれら外的影響なんて全くたいした事ではない。どうでもいいと言ってもいい。逆に恵まれていた環境だと思える。「つまらない」という鬱々的に抱えた感情の最大の原因は自分の体質で、それが多くの苦しみの源となった。縄文人に多いとされる耳垢が湿っていて絶えず音が聞こえずらいということだ。赤ん坊の時、言葉を発して良い時期になっても喋らず心配した母親が病院に連れて行ったところ、耳垢がごっそり出てきたそうだ。それから喋り出したというから笑えない。
 言葉がうまく聞き取れず、意味も理解出来ないままの単語が多くなり、周りのお喋りが分からず会話することがつまらなかったのだ。一対一なら何とか会話も出来るが、複数人でのお喋りは、もうお手上げだった。聞き取れず理解出来ず暗く心が沈んでいった。その為に目から得る情報の絵と文字をやたら好んだ。
 
 これは、ただ私という人間の赤裸々な告白ではない。こういった要因から生まれた「思考の癖」を説明するものだ。
 全人類を新しい世界へと誘う扉の鍵となった私の思考振動の土台だ。

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