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【書籍紹介】クリムゾンの迷宮(貴志祐介)
1.さながら「リアルゲームブック」な極限状況に巻き込まれた件
突然ですが、皆さんは「ゲームブック」という物で遊んだことはありますでしょうか?
通常の本であれば、冒頭から順番にページをめくって読んでいきます。
それに対して「ゲームブック」は、本文中に「~するなら〇〇ページに飛ぶ」といった風に選択肢が示されて、その指示に従って読み進めて行きエンディングを目指す・・・といった本の事なのですが、
私と年代が近い方なら、↑のような本と言ったら見当がつくでしょう。
本作はサバイバルホラー+ゲームブックという異色タッグが新しい恐怖を招く、ホラー小説の超名作です!!
2.本作のあらすじ
目が覚めると、どこなのか分からない場所にいた主人公・藤木。自分がなぜこんな場所で寝ていたのかも記憶がない状態で、傍らの携帯用ゲーム機がメッセージを映し出す。
「火星の迷宮へようこそ」・・・
周囲はこの世のものとも思えないような異様な光景、そこで藤木は自分が他の参加者と一緒に命がけの「ゲーム」に参加していることを知る。
主催者の指示に従い、都度「選択」を重ねる藤木たち参加者は、やがて凄惨なゼロサム・ゲームの中で命を削り合う事になる・・・
藤木はこの悪夢のようなゲームを生き残ることができるのか!?
そして「ゲーム」の真相とは!?
3.本書の魅力
本書の魅力は、やはり何といってもゲームブックを発想のベースとした極限状況を描いていることでしょう。
先ほども言ったように、「ゲームブック」でカギを握るのは、
「目の前に提示された選択肢の中から、どれを選ぶか?」
これに尽きます。その選択次第で「ハッピーエンド」「ノーマルエンド」「バッドエンド」のどの結末にたどり着くかの運命が分かれていきます。
本作において、バッドエンドとは自らの死。
参加者たちは自らの選択によって文字通り生死が左右されるゼロサム・ゲームを生き抜くために戦います。
そして、このゲームをより恐ろしい物に仕立て上げる立役者が、「グール(喰屍鬼)」。
ファンタジー上の存在である筈のグールが、「火星の迷宮」ではリアルな脅威として参加者の前に現れて、彼らをどんどん追い込んでいきます。
藤木たちがグールにどう立ち向かい、「バッドエンド」を回避するのか?
その結末を見届けて頂きたく思います。
さて・・・本作の中で提示される選択肢の中から一つ、皆様にも「選択」をしてもらいましょう。
Q.あなたは下の4つの中からどれかを手に入れることができます。
どれを取りに行きますか?
A.サバイバルのためのアイテム
B.護身用のアイテム
C.食料
D.情報
さて、「選択」は終わりましたか?
皆さんと同じ選択をした参加者たちに待ち受ける運命を知りたければ・・・本作を手に取るのです。 そこに答えはあることでしょう。
4.終わりに
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
本作を支えるのは、ゲームブックをベースにホラーを描くという斬新さだけではありません。
作者の貴志祐介先生一流の綿密な取材に基づいて描かれることで、下手をすれば荒唐無稽に映るような状況が、生々しいリアリティを以って読者に突き付けられるのです。
この夏、貴方も「火星の迷宮」でのサバイバルを体験してみませんか?
文句なしに極上の恐怖と狂気での「おもてなし」を約束します。