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非常時が起きた時こそお互いの本性がみえる

冬のある日、アメリカ人夫(当時彼氏)と同棲を始めて1ヶ月ぐらいの頃

朝、仕事の支度のため顔を洗っていると手の甲にポツポツとできた蕁麻疹を見つけた。

その頃、私は転職したばかりでストレスでよく蕁麻疹が出ていたので、その日もそうだと思っていた。

昼過ぎになると手の甲だけだった蕁麻疹が、手の内側、手首、腕、首、全身に少しずつ広がっていった。


仕事を終えてから家に帰ると顔にまでポツ。とひとつふたつできていた。彼には「ごめん、今日体調が悪くてちょっと寝てるね。夜ごはん作れないから申し訳ないけど今日は自分でお願いできる?」とLINEをして、とりあえずベットで横になった。


そのまま2時間ほど寝てしまい、目を覚ますと「今から帰るよ」と彼から連絡がきていたので、帰ってくるのをとりあえず待っていた。


あとでわかったのは、その時ピロリ菌除去のために飲んでいたペニシリンの薬疹で、強いアレルギー反応が出ていた。


部屋の電気もつけずにベットに横になっている私がただ体調不良で寝ていると思っている彼は、仕事から帰ってきて私を起こさないように気を遣ってキッチンの電気だけをつけ、そこで夜ごはんを食べ始めた。


「どうしよう・・・こんなんになっちゃった・・泣」という蕁麻疹を見せにいく私。
私を見た彼が驚愕。「何!!!どうしたのそれ?!とにかく横になって!」と私をすぐベットに戻そうとする。


私「今から病院行った方がいいかな・・?」

彼「とりあえず寝てたら大丈夫だよ」

私「本当に大丈夫かな・・?なんか普通じゃない気がするんだよね」

彼「大丈夫だよ。疲れてるんだよ。ゆっくり今日寝たら明日には治るよ」



なんでも彼任せの癖がついていた私。

病院に行った方がいいよ、と自分の判断を後押ししてもらえると思っていて
「寝てたら治るよ」という彼の反対の判断に動揺した。


そうこうしていると、一気に急変する。
アレルギー反応が強くなってきて鼻の中も腫れてきてしまい息をすることが苦しくなってきた。


さすがにまずいと思い、振り切って彼に言う。
「病院!やっぱり私今から病院にいく!」

「病院?今から?夜もやってるの?明日じゃだめなの?」

「明日じゃ死んじゃう!」

「病院ってどこにあるの?どうやっていくの?救急車を呼ぶの?僕はどうしたらいい?」


日本の病院のシステムがわからない彼。
当時日本の車の免許も持っていなくアパートから徒歩圏内しか土地勘がない彼。
日本では救急車が何番にかけたら呼べるのか、そもそも日本語でなんて言ったらいいのかわからない彼。

時間外の夜間救急病院に行きたいって英語でなんていうの?
息苦しくなってきたって英語でなんていうんだ?
蕁麻疹、アレルギー反応って英語でなんていうんだ?
救急車呼ぶほどじゃないけど、タクシーとか呼んでもらう?あ、呼べないか。
自分で考えて動いたりできない?無理か?

いろんなことが一瞬で脳内を駆け抜ける。


あーーーー全部いまそれどころじゃない!!


口呼吸になってきてる中、具体的な指示も英語でできない、そもそもこの人ぜんっぜん考えて動いてくれない!もういい! この人に任せてたら死んじゃう!!!!


まず母に助けを求めた。電話ではうまく緊急性が伝わらないのか「えー?そんなこと私に言われても。今、彼と一緒じゃないの?彼はなんて言ってるの?」と。無論父は晩酌してるから車は出せない。

うん、もういい大丈夫。と電話をすぐ切り

ネットで探した救急医療情報センターに電話をかけると市内で今から見てもらえるところを探してくれた。
夜間当番の病院に繋いでくれ、そこの看護師さんに症状を伝えていくとうちの病院じゃなく今すぐ総合病院にそのまま行った方がいいと言われた。車で15分くらいのところだった。

「連れてってくれる人いる?大丈夫?救急車呼んでもいいからね。」と言ってくれる看護師さん。
「大丈夫です。自分で行きます」

と電話を切って、準備をする私。
もう23時を過ぎていた。


「僕も行くよ」
「いいよ来なくて。日本語がわからないあんたが来ても何もできないでしょ!!」


いろんな恐怖とこんな状態でも何も助けてくれない怒りがピークになりイライラをぶつけた。


なにもできないけどそれでも一緒に行く、という半べその彼を助手席に乗せ、何とも言えない屈辱感と病院に無事にたどりつけるかの恐怖で、怒り泣きしながら運転した。(本当に危険な行為なのでみなさまは真似なさらないでくださいね)

なんにもしてくれない!!!わからないなりに努力もしてくれない!!
あの時は、そんな彼への怒りでアドレナリンがでて命拾いしました(笑)


病院に着いて、処置室でベッドに横になった時、「もう大丈夫だよ~すぐ楽になるからね~」と看護師さん、お医者さんの表情と言葉に本当に安堵したのを覚えている。

やっと誰かが私のことを助けてくれる。


すぐさまアドレナリンを打ってもらい、1時間くらいそのまま処置室で安静にしてその日は無事お家に帰れることになった。


「外待合にいる外国の人、あなたのお連れさん?日本語あんまりわからないみたいだから、どんな治療したか状態とか説明してないけど、ごめんね。」と看護師さんに言われた。


ああ。こんな今まで当たり前だったことも彼といると当たり前じゃないんだ。
自分で説明しなきゃいけないのか。今日はもう疲れたな。



いったい私が処置室の中でどうなっているのかも、いつ出てくるのかも、いつ帰れるのかもわからないまま、とりあえず外で待っていた彼。


私を見つけてゆっくりこちらへ歩いてくる。
「どうだったの?何があったの?もう大丈夫なの?」


「お会計、時間外だから8000円ぐらいかかっちゃったー。」


「・・・。8000円?安いね!?よかったね!」と一瞬自分がした質問とは違う答えが返ってきたことに気づきつつも、何事もなかったように私の話に合わせてくる彼。


「安い?いや、高いって意味で言ったんだけど(笑)」


「いや、アメリカだったら、うん十万、もしかしたらうん百万してるよ。日本の夜間病院は初めてだったからわからなくて正直だいぶ覚悟してたよ。」


「だから、あの時病院行くの渋って寝とけって言ってたの?」


「うん。明日になったら普通の診察ができると思って」


「ふーん」


やっぱりこの人といるといつか私本当に死んじゃうかも。(笑)


自己管理の甘さとわかりつつ、彼の他人事感。優先順位の価値観の違い。嫌気がさした。


もし今後、私が本当に動けない、話せない、そんな緊急事態が起きたら彼は何もできないんだろうか。

私は黙って死ぬしかないんだろうか。

そんな人と一緒に人生を歩むべきなのか?
私が一生しっかりして何もかも完璧に自己管理したら解決するのか?
それってなんか、なんか、違う気がする。

そんなことを思いつつも、とりあえず明日彼のために緊急時マニュアルを作成することを決め、また彼を助手席に乗せ、眠い目をこすりながら自分で運転して帰った。

何も話さなくていいように、めったにつけないラジオをつけてボリュームもいつもより少し大きめに上げた。


TOKIOさんの宙船が流れていた。


「その船を漕いでゆけ、お前の手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶものに、おまえのオールをまかせるな」

なんだかすごく沁みた。

もちろん私が消えて喜ぶとかじゃないと思うけど。

そう思いたいけど。

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