御骨をゆうパックで送るな

すこし前、Twitterで「御骨をゆうパックで寺に送るな」という投稿がバズっていた。
それをみた瞬間、なんとも冷たいものが私の鳩尾に差し込んだ。今、まさに我が家は父親の御骨を父親の実家にゆうパックで送るか揉めていたのだ。

まず、私の父はお酒と車好きで怒りっぽい人だった。会社を経営してたけれど、やがて鬱を発症して家ではお酒飲んでるか眠剤で寝てるかしかしなくなった。
小さいの頃は、子供っぽい父が好きだったけれど、中学生になりそんな父が嫌になった。母は私と兄のために身を粉にして働き、ご飯を作ってくれたけれど、母が入院した時も父は何もしなかった。
今なら精神病のことも多少わかるけれど、当時の私にそんな余裕はない。ほとんど会話のない、お酒だけ飲んでいる父のことを疎ましく思うようになっていった。
母はいつしか、いつか父と離婚すると言い出すようになった。もちろん私は母についていくつもりだった。
私が18歳になった時、そんな父が交通事故で呆気なく亡くなった。朝早くに警察から電話がはいり、病院に着き私たちは騒がしい緊急病棟の横を通り、そのまま霊安室へと通された。

その交通事故は自殺だったんじゃないかとたまに思う。
ギャンブルもさほどせず、暴力も振るったりしなかったのになんであんなに父が嫌だったんだろう。酔っ払って面倒くさかったり、誰かと喧嘩したり、車やバイクにお金をかけてたのが嫌だったのか。
大人になって、ちゃんと話してみたかったのかもしれない。でも今はそれを考えると少し怖い。
母は私には反抗期がなかった、と言うけれど、父親に対しては反抗期だったように思う。
今でも父親のことを考えると胸が痛く、一生この想いを人に隠していくんだと信じていた。

そんな父親のお墓を、私たちは家から少し離れたところに建てた。というのも、そもそも私たちの近所にお墓はなく、家から車に乗るか1時間に1本程度のバスに乗らなくてはならない。
母は膝を痛め、コロナ禍もありますますお墓から遠のいた。そこで出たのがお墓の引越しだ。
兄は実家から遠いところに家を建て、私だっていつかさらに遠いところにいってしまうかもしれない。
誰が墓を守るのか。
そもそも母は同じ墓に入りたくないと言うし、なかなかお墓参りも行けない。
父は島根にいつも心を馳せていたし、島根の実家の裏には家のお墓がある。祖父は亡くなったけど祖母は生きていて、伯父さんもまだ元気だ。
島根へお墓を引っ越そう! そうだ、墓じまいだ!

ここまでは納得いくんだけど、さて、では御骨どうやって運ぶ? という問題があがる。
疎遠になっていたものの、私が持っていくと名乗り出たのだけど、コロナを祖母に移すわけにはいかない。今度、今度と言ってるうちに祖母の体調は悪くなり、私たちは焦り始めた。
(ちなみに疎遠になったのは、前帰ったとき知らん、たぶん親戚のおじさんに「おばあちゃんが死んでも帰ってこなくていいよ」と言われたからだ。ショックだったのよね~!)

御骨、御骨……
それでもまだ私には抵抗がある。
御骨をゆうパックで送るって…!?
そんなのありなの???
でも私が行ってもコロナで体裁悪いよな。

御骨をゆうパックで送るって、送るって、、、

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