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David Lowery "Pete's Dragon" (『ピートと秘密の友達』) 論点

David Lowery "Pete's Dragon" (2016)

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※本記事はあくまで論点を提示するのみである。具体的な考察を述べているものではない。

3つのキーワード

①adventure
Peteは作中において「冒険」をしたが、これは大きく二つに区分することができる。ひとつは、事故に遭い孤児になりElliotに出会ってからの6年間である。彼にとって、見知らぬ広い森の中での生活の毎日が冒険である。また、森の中で出会ったドラゴンのElliotに心を開くことは精神的な冒険であり、Elliotと過ごす毎日が冒険である。もうひとつは、Magary家と過ごす時間である。これは、単純に新たな環境での生活ということでもあるが、森にいたために長い間触れてこなかった人間と過ごすことによって自身の成長も無意識ながらに感じ取り、「家族」という拠り所に気づく新たな自分への冒険でもある。

②brave
adventureにはbraveが必要だという文脈だったが、訳すとしたら「勇気」 (直訳だとcourageになってしまうが)であろう。Peteには勇気があった。Elliotと仲良くなる勇気、Elliotと2人で過ごすと決断した勇気、捕獲されたElliotを助ける勇気、Magary家にお世話になることにした勇気。これらの勇気は、既述の冒険の入口となっている。勇気があった結果の行動である。braveはadventureには欠かせないものとして明確に描かれている。

③family
Peteは事故で家族を亡くした。また、Elliotも家族(仲間か、いずれにせよドラゴン)と離ればなれになった可能性が示唆されており、彼らは孤立してしまったという点で同じ境遇であると言える。Magary家に一時的にお世話になったPeteは家族の温かみを思い出すことになる。 作品終盤、Peteはこの先Elliotと過ごすかMagary家と過ごすか選択することになるが、Elliotの後押しによりMagary家にお世話になることに決めた。ElliotはPeteと絵本を読んでいるとき、家族のページを押さえた。彼なりの、家族でいたほうがいいという意思表示なのだろう。Elliotは家族の大切さを知っているようである。
ここで少し米文学的要素に触れる。Peteは野生児=「自由」から家庭(人間世界)=「不自由」に移ることに決めたのである。一時的に保護された際、人間世界の不自由さを体験したものの、不自由さより楽しさ、幸福感が上回り、そして理解者も存在するということで、こちらを選択することにしたのである。

居場所(拠点)問題

2人は大木の下を拠点としていて、そこを中心 に森中を駆け回っていた。Elliotの暴走によって大木が壊れた後、PeteはMagary家に匿われることになるがElliotはどうしたのだろうか。家族か仲間のもとに帰れたから最後の場面において群れで登場できたのではあるが。拠点の変化と大木の存在意義は考える余地がある。ポイントとしては、①拠点によってPeteがどう変化するのか(森、保護施設、Magary家)②大木を拠点とすることで2人の生活にどのように豊かになったのか、2人が大木をどのように思っていたのか③大木を失った2人のその後(Peteについては①で扱っているためここでは主にElliot)。

Elliotの飛行

「負傷して飛べなくなったElliotが飛べるようになったのはPeteとの絆、信頼関係があったからである」と結論づけるのはあまりにも安直すぎて思考を放棄していると言わざるをえない。単なる想像の域を超えず、考察とは言えない。Peteの何がそうさせたのか(どのような絆や信頼関係なのか、それは何によって構築されたものなのか)、それともPete以外の人物(Grace、Natalie、Conrad、Jack)とElliotの関係によるものなのか(過去〜現在)、またはElliot自身の問題(意志の強さ)なのか。その点を考える必要がある。

"Elliot Gets Lost"

Peteが持っていた(Natalieも)絵本について。この本の役割も検討する余地がある。本編の進行との関連性や、Natalieが持っていたものとの違いも興味深い点である。Peteはなぜ出会ったドラゴンに絵本の中の子犬の名であるElliotと名付けたのか。ドラゴンが絵本の迷子子犬と同じ境遇であることに気づいたのか、単に見立てただけなのか。

Conradの語り

語り手と登場人物の関係。基本的に語りは入らないが、入る語りの語り手はConradである。また、彼はドラゴン(Elliot)のことも話している。彼の語り・話す内容が信頼できるかどうか(どの場面でどの程度)は考える必要がある。彼はGraceに「本当のことを言って」と言われるまで「魔法にかかったようだった」などという真実を語らなかった。秘めていたのである。なぜ秘めていたのか。捕獲を妨げることになるからなのか。また違った理由によるものなのか。いずれにせよ、このことがあってから彼の発言の信頼性は揺らいでいる。

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