小説家デビュー出来たら勝ち確!あとは楽勝っしょ(笑)とか思っていたあの頃
面白い小説を書いて、それをコンテストに応募して、新人賞を取って小説家デビュー!
面白い小説を書いて受賞したんだから、当然そこそこは売れる。お金もそこそこ貰えて生活も安定し、執筆に集中出来る環境が整う。
上手くいけばドラマ化とかアニメ化とか、もしかしたら映画化とか出来るかもしれないけど、そこまでは贅沢言わないから普通に売れるだけでもいいや。流石に映像化となると、選ばれし作家にしか許されていない領域な気がするし。
まぁでも、デビュー出来たんなら出版社が認めた面白い小説を書く才能があるんだから、普通には売れるでしょ? 売れない作品を出版社が取るわけがないんだからさ。
小説家としてはそこそこでも同年代のサラリーマンよりは普通に稼げるよね?
とか、脳みそ異世界ファンタジーだった2018年の今頃。
それから同年2月に小説投稿サイト『カクヨム』に小説を投稿し始め、4月頃には書籍化を意識するぐらいのランキング状況になってきて、その頃になってやっと出版業界や作家業について調べ始め、知るのだ。
「そんな甘い話はなかった」
データによると、ライトノベルの約半数は2巻までしか出ていない。
つまり打ち切り。
3巻までに範囲を拡大すると7割とか8割も。
噂によると、初版部数は5000とか10000とか。低いところでは3000なんていう話も。
つまり重版がかからなければ1冊で18万円~60万円ぐらいの印税。
そして重版がかからないということは、続刊はほぼナシ。
下手をすると、売れない作家には次のシリーズの話が来ない可能性も。
平均すると年に2冊から3冊ぐらいが作家の書ける限界。
つまり年収50~200万ぐらいが大多数の作家のリアル。
しかしその程度の売上しか出せない作家は書き続けることが出来ない。
そして彼らは本が出せなくなって数年でひっそりと消えていく。
仮に重版かかって続刊出来たとしても、それだけでは食えない作家がほとんどで、兼業するしかなくなる。
しかし兼業では創作の時間が減るため、『筆が早い』という別の能力がないと書き続けられず、やっていけない。
というような話をネット上で見て、現実世界に戻ってきた春。
特にヤバさを感じたのは、有名な文学賞を含め、コンテストで受賞しても売れないという現実。
コンテストは、『その道のプロが面白い作品を選ぶ場』だと思っていた。
しかしコンテストで受賞しても売れない。
「じゃあどうすればいいんだ?」
なんの力もない新人がどうしろと?
そう考えながら情報を掘り返していく。
出版不況。
96年をピークに雑誌・書籍の売上は下がり続け、現在はピーク時の半分程に市場規模が縮小している。
その中でもなんとか成長を続けていたライトノベルも近年は縮小傾向。
その替わりに出てきたWEB小説がシェアを広げているが、それも2017年頃から落ち着いてきている。
ラノベやWEB小説はまだマシで、一般文芸はもっと厳しい状況。
……まぁ、いいか。とりあえず、それは後で考えよう。
まだ書籍化も決まってないし、先の話をしても仕方がないし。
と、難しい問題は先送りしがちな僕がそう結論を出した頃、連載していた小説の書籍化が決まる。
先送りは許されない。
そして苦悩の日々が始まった。
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