
性欲と生欲
性欲は悪いものだった。
「性欲でしか生きられないなんて」
母は顔を顰めた。父は諭した。テレビで少々過激な単語が流れると、みんな急にスマートフォンが気になりだした。
いつしか悟った。
これ、だめなやつっぽいな。
母の厳しさと、
父の頑なさは別のものであるようだ。
恐らくだけど、母のそれには、手に入らなかったものへの羨望も混じっている。
経験値として勝ち得てないからこそ、異質で得体がしれない、
だから怖い。避ける。罵る。
父のそれはただの親バカである。
元はかなりの遊び人。子育てになると話は別だ。
可愛い娘だ。ビッチはイヤだ。
厳格で善良な両親の元で、同じく善良に
絵に描いたような箱入り娘に育った。
そして現在
ごめんパパママ、えっちなこと好きです。
普通に。
こんな娘になりました。
性欲の汚い部分にだけみんな目を向けて
恥ずかしいものだと揶揄するけれど
うるせえよ!おなにーするだろお前だって!
って叫びたくなる。
エロ=セックスだと思うなんてお猿さんすぎ。
セックスしてないのに長く関係続いてる男女の方が、よっぽどエロいですからね。セックスしてるからねもはや。
気持ちいいことすき。
しっとり、じゅんわり、
肌に触れる、あたたかい、生きているって
そういうこと。
キスするのすき。
やわらかいところが触れ合うとき
こころがやっと解ける気がする。
教えてもらった音楽が聴けなくなったり
自分の曲があなたとの曲になったり
なんてえっちなんだろう。
みんなきもちいことがすきだから
私が今ここにあるのに
私がそれを享受するのはいけないことなのかな。
汚れてばっかのものでもないよ。
捉え方でいくらでも変われる。
赤の他人から始まって
友達、友達以上、だいすきなひと、
その先は、触れたいひと
超越したところにいるものでもあるわけだから。
えっちだわ〜。
極上の褒め言葉とも言える。
どんなに複雑なものだとしても
生きる欲に繋がるのなら
いいじゃんね。
性欲に生きたって。