Think clearly【読書記録#8】
作者はスイスのベストセラー作家、ロルフ・ドベリ。
2019年4月刊行。
人生をよりよく生きるための思考法が紹介されています。
その数全部で52個ほど。
人生論、というと割と「心の持ちようです」みたいな本もあると思うのですが、この本は論理的に説明されているなという印象を受けました。
こういう実験をしたら、こういう結果が出た。
だから、こうだと言える。
みたいな。
こう考えたらいいよ!
だけじゃなくて、学術研究とか過去のエピソードがあって根拠が示されているので読みやすかったですし、納得しやすかったです。
その中でも特に「なるほど!」と思った思考法についてまとめてみようと思います。
大切なのは、思い出作りより「いま」
思い出は美化される、とよく言いますよね。
どうやらその通りのようです。
自分の思い出す力を過信してはいけない。
過去のことは勘違いをしている可能性もある。
こんな感じの内容がありました。
ある学生たちに行った実験。
夏休み中と夏休み明けにいくつか質問をしたところ、夏休み中より夏休み後の方が幸福度が高かった、という研究結果があるそうです。
旅行に行ったとか、誰かと遊んだ、とか、体験の内容は変わらないはずなのに、真っ最中より過去になった時の方が幸せを感じていた、ということでした。
もう1つ、学生たちに行った実験です。
以下の2つの体験をしてもらったそうです。
①14度の冷水に1分間手をつけたままにする
②14度の冷水に1分間手をつけた後、15度の冷水に30秒間手をつける
体験後、「もう一度同じ経験をするとしたらどちらがいいか?」と聞いたところ、なんと②を選んだ学生の方が多かったのだとか。
①なら1分の我慢でいいのに、わざわざ②を選んだのはなぜでしょう?
心理学者ダニエル・カーネマンは、この現象を「ピーク・エンドの法則」と名付けています。
何かを体験したとき、人の記憶に残るのは2点。
1点目は、一番印象に残った「ピーク」部分。
2点目は、終わりの「エンド」部分。
それ以外のことは、ほぼ記憶に残らないのだそう。
冷水の実験で言えば、「ピーク」は一緒ですよね。
(14度の冷水に手をつける。)
でも、「エンド」が違っています。
①は、14度の水なのに対し、
②は1度高い15度の水で終わっています。
冷水に手をつけた時間の長さは関係ない。
「ピーク」と「エンド」が良かった方を、「いい思い出」と認識してしまうのです。
よくよく考えてみると、辛い時間は短い方がいいはずですよね。
でも、脳が記憶違いをしてしまう。
つまり、人が振り返る「思い出」には、少なからず認識違いがある。
だから、過去に熱心になるよりは、「いま」に注力した方がいい、という内容でした。
この話で印象に残ったのは「ピーク・エンド」の法則でした。
自分の経験を振り返っても、「終わりよければすべてよし」というか、確かにそうかも、と思いました。
学校行事とかも、そんな感じしませんか?
合唱コンクールで最初は全然上手くいかなくてすれ違いも多かったけど、最後はクラスがまとまっていい発表になった、とか。
集団合宿で最初は集合時間やルールが守れず怒られてばっかりだったけど、終盤にはできるようになって大成功に終わった、とか。
「ピーク」と「エンド」が印象に残る、という法則でしたが、私はどちらかというと「エンド」のインパクトの方が大きい気がしています。
今思いついたのは学校行事のことでしたが、人生全体で見ても「ピーク・エンドの法則」って当てはまるなぁと思います。
「楽しさ」と「有意義」どちらを優先?
よりよい人生を送るためにはどうしたらいいか。
楽しく生きられたら、いいですよね。
そこで。
以下の行為、どれくらい「楽しさ」を感じますか?
0(楽しくない)~10(これ以上楽しいことはない)で点数をつけるとしたら、どうでしょうか?
ほとんどの人は、チョコ、セックス、サッカー、休暇に9点や10点をつけるそうです。
他の項目は、2とか3。
では、次の質問です。
上記の①~⑩は、どれくらい「有意義」なことだと思いますか?
0(無意味)~10(これ以上ないくらい有意義)で評価してみてください。
すると、ほとんどの人が前回と逆の評価になるのだそうです。
子育てや高齢者の手助けが9点や10点になるそうです。
よい人生に必要なのは、「楽しみ」でしょうか?
それとも、「有意義」なことでしょうか?
実は、紀元前5世紀ごろにはすでにギリシアの思想家たちの間でこの問いが存在していたそうです。
楽しみを優先する「快楽主義」(高齢者を助けるより、YouTubeを視聴するとか)を主張した思想家もいましたが、「快楽は低俗で動物じみている」「もっと交渉な喜びが必要」という立場を取った思想家がほとんどでした。
そこから「幸福主義」が生まれ、人間に必要なのは美徳だ、尊敬に値する人生がよい人生だ、という考えが生まれました。(有意義寄り)
ただ、この考え方も十分ではないようです。
心理学者ダニエル・ギルバートは次のように主張しています。
「そうなると、観光地で日光浴をしている戦争犯罪者は幸せではなく、信心深い人食い宣教師は幸せということになってしまう」
「意義」だけあっても、人は必ずしも幸せとは言えないのではないか。
心理学者ポール・ドーランは、人の経験の種類は2つあると考えました。
「欲求(快楽)」の要素と、「意義」の要素です。
欲求…直接的な楽しみ(チョコを食べる)
意義…体験の瞬間に意義を感じる(高齢女性の手助け)
ポールの主張はその後深堀りされることはありませんでしたが、ハリウッド映画にて、ある考察がされました。
どんな映画がヒットするのか。
ヒット作の特徴として、長らく支持されていたのは「快楽主義」的な作品でした。
とにかくおもしろさが大事。美男美女が出演していて、最後はハッピーエンド。
でも、必ずしもこの特徴に当てはまらない映画も出てきました。
『ライフ・イズ・ビューティフル』
『シンドラーのリスト』
『ビューティフル・マインド』
純粋な快楽だけではなく、意義の要素もヒット作には必要ということが明らかになってきたのです。
どんな人生がよりよい人生なのか。
自分の欲求をひたすら満たすだけ、あるいは世界のために身を粉にして奔走するのも、どちらも幸せとは言えないのだそうです。
一番いいのは、「楽しみ」「意義」どちらか一方に偏るのではなく、バランスを保っている状態であること。
ちょっと世の中にいいことをした後に、家に帰ってビールを一杯飲む、みたいな感じ。
確かにそうだな、と思ったお話でした。
ついつい自分の楽しみだけを優先してしまいがちですが、それだけではなんだかむなしい。
世の中の役に立つ意義のある行動をすることで、自分の幸せにもつながっていく。
学級通信とかクラスの中でこういう話、してみたかったかも。
この本、こんな感じで思考法が52個紹介されています。
他にも、個人的にこんなお話がいいなぁ、と思いました。
本音は言い過ぎない方がいい
自分の感情から距離を置く
世の中は不公平だと心得る
気になる方はぜひ読んでみてください。