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5年『なまえつけてよ』で授業開き

前回挙げた、帰り道の授業開きの記事を投稿したあと、5年生の先生方から、『なまえつけてよ』でも何かいい提案ありませんか?というご質問をいただきました。

4月初めの単元で、あまり教材研究をする時間もないかと思いますので、私の実践例を一つ共有させて頂けたらと思います。

まずは、単元の目標や学習指導要領との関係を簡単にみていきましょう。

『なまえつけてよ』の単元では次のような単元の目標が示されています。

自分の体験を想起しながら、春花や勇太の相互関係や心情を、描写を基に読むことができる。

私はこの自分の体験を想起しながら、というところをどのようにして引き出して読めるかというところに着目して授業をつくりました。

そもそも、国語なのにどうして、文章の外側にある自分の体験を重ねないといけないの?と疑問に思われる先生が多いかもしれません。

これは、新学習指導要領で示された『考えの形成』と深くつながっています。

考えの形成は次のように定義されています。

「考えの形成」とは,文章の構造と内容を捉え,精査・解釈することを 通して理解したことに基づいて,自分の既有の知識や様々な体験と結び付けて感想をもったり考えをまとめたりしていくことである。(学習指導要領解説『国語編』P.37より引用)

このように、文章の中と外(=既有の知識や様々な体験)とを往還しながら、感想を持たせたり、自分の考えをまとめたりすることが大切なのです。

この物語に出てくる春花、勇太は子どもたちと同じ5年生という設定です。
読み手と重ねやすいように仕掛けているのではないでしょうか?

さて、このお話の中で子どもたちが自分と重ねて読みたくなる場面はどこにあるでしょうか?

転校生の勇太と初めて会う場面
勇太が折り紙を渡してくれた場面
窓から運動場で遊ぶ勇太をみてる場面

こういった場面が考えられます。

地域の実態によっては
帰り道に子馬の鼻に触れる場面や
牧場のおばさんに頼まれる場面もあり得るかもしれませんが、私の勤務校では後者のような場面は子どもにとって身近ではありません。

子どもの経験と重ねやすい場面を、子どもの実態や地域の実態に合わせて選ぶといいかもしれません。


私は、勇太が馬の折り紙を春花に渡す場面にしました。
子どもたちにとっても、何か友達を励ますためにプレゼントやサプライズをしようという経験を持っている子がいるのではないかと考えたからです。


授業では次のように問いました。

自分だったら、馬の折り紙を渡す?渡さない?


実際の板書はこちらです。

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渡すか渡さないか?という二項対立のような問いで立場を決めさせました。

いずれの立場から説明するにしても、本文に立ち返りたくなります。
そして、本文に立ち返る中で、困ったような顔をして、春花の顔をじっと見るといった叙述や、ほんのりと温かく湿った鼻といった描写を子どもから引き出すことができます。

ここでは、そういった言葉に着目した時に、春花の寂しい気持ちや勇太の励ましたい気持ちを深く読むきっかけにつながります。

また、渡さない、渡せないを選んだ子どもからの意見で、勇太は転校生であり、さらに、あまり喋らない性格、折り紙は不恰好になってしまうというところを引き出すことで、勇太にとって春花に折り紙を渡すことがいかに勇気のいる行動であったのかということも考えるきっかけを生みます。

ここまで読めば、春花が昼休みに校庭でサッカーをしている勇太を教室の窓から探しているシーンの春花の心情も想像できるようになるでしょう。

今回は、なまえをつけてよにおいて、二項対立の自分だったらどうするか?という問いから、春花と勇太の心情を想像する授業について解説しました。

5年生の先生方の国語授業づくりの参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

国語授業研究室

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