#2 そりゃそうよね
少し前、江角マキコさん主演のドラマ「ショムニ」を初めて見た。
「ショムニ」シリーズといえば、とある大企業の中で厄介者が追いやられる掃き溜め的部署「庶務2課(通称ショムニ)」に集められた女性社員6人の活躍を描く大人気シリーズだ。
「ショムニ」シリーズは1998年から2013年にかけて第4シーズンまで放送されているのだが、私が初めて見たのは、第3シーズンまでとは主人公以外のショムニメンバーを一新した第4シーズン「ショムニ2013」だった。好きな女優さんが出演しているからというだけの理由だったので、あらすじも江角マキコさんがなぜ脚立を担いでいるのかも知らないレベルの知識量だった。
「ショムニ2013」を見て最初の感想は、「面白いけど今じゃ絶対放送できないな」だった。「ショムニの席順は女の価値の順。女の価値は男の数。」と言い切る主人公の姿に、ここ10年で社会の価値観が大きく変化しことを痛感した。
一方で、登場人物達それぞれの価値観や欲望のままに行動する姿がとても新鮮に映った。また、たかが10年前と現在との価値観の違いがとても面白かった。(余談だが、揃いも揃って美脚なショムニメンバーに心を打たれ、私は美脚トレーニングを決意した。)
初回からまんまと虜になってしまい、休日一日を費やして1話1時間弱×10話の「ショムニ2013」を一挙に視聴した。見事にのめり込んだ私は、意を決して過去作、つまり12話×3シーズン+スペシャル×3話、計39話を1から視聴することにしたのだ。
そこまでの強い決意を固めた私だったが、結果から言えば第1シーズンの8話目を最後にあっさりと視聴をやめた。早々に飽きがきたからではない。あまりのジェネレーションギャップに辟易してしまったのだ。
要因となるシーンは数えればキリがなかった。
強いて言えばトドメを刺されたのは、ショムニメンバーが天敵(会う度嫌味を言い合う仲)の秘書課と対峙したシーンで、主人公が「男日照りが続くと女にまで手を出すようになる」と言い放ったことだ。
小さなジェネレーションギャップが積み重なり、トドメを刺されたことで完全についていけなくなってしまった。
一方で、新たな発見もあった。
第1シーズンにみられるような価値観が当たり前にある世界で生きてきた世代と、当時を知らずに生きる私たちの世代とでは簡単に分かり合えるはずもないということだ。そりゃそうよねと思った。
大昔から当たり前にあった価値観がここ数年で急激に変わってきているのだ。当時を知る世代としては、ここ数年における社会の価値観の変化こそ流れが速すぎてついていけないのが当然だと思う。
ちなみに、全話視聴を諦めた後も第4シーズンに関しては何度も見返している。多分私がついていけるのは、2013年でギリなのだと思う。
よく考えると、「ショムニ」シリーズの中で私が生まれてから放送されたのは第4シーズンだけで、私は当時小学3年生だった。当時の私は物心のついた純粋な子供だったはずなので、子供ながらに社会全体の価値観を感じ取っていたはずだ。
ということは、私がリアルタイムで「ショムニ2013」を視聴していれば、今私が感じているギャップをほとんど感じることなくすんなり受け入れていたと思われる。私自身が現代の新しい人間なのではなく、あくまで古い時代の価値観を少しずつ更新して今に至るというだけなのだ。私たちの世代が、「社会の価値観の変化が激しい」という価値観を当たり前にもった世代だというだけなのだ。
最後に、私が最近知って衝撃を受けたM-1グランプリ 2007決勝におけるハリセンボンさんのキャッチコピーを紹介したいと思う。
『(デブ+ヤセ)×ブサイク=爆笑』
私は物心つくかどうかくらいの4歳だったので、当時の社会がどのような価値観を持っていたのかまではわからない。
ただ、ゴールデンタイムに堂々と放送されていたことを考えるに、やはりこれをすんなり受け入れてきて、なおかつ価値観の更新が追い付いていない世代と分かり合うことは簡単でないだろう。
私はまた、そりゃそうよねと思った。