駄文)解答解説をどう使うか
「解答解説」は、問題から解答までの論理的な手順が書いてある。いわばレシピである。
昨今、「これを暗記して、レシピがなくても料理がつくれるようになること」が勉強であると勘違いしている人がいるなと感じている。(なお、反復練習による解法暗記を、「点数をとるためである。力をつけるためではない」と理解したうえでやる分には構わないと思っている)
これは大問題である。なぜなら、レシピを暗記して再現するだけでは、調理しやすい食材が用意され、作るべきものも指定されている、他人が用意した“箱庭”でしか生きていけなくなるからである。
大人になって必要な力は、「与えられた食材で、新しい料理を生み出すこと」「調理しにくい食材から求められた料理を作り出すこと」ができる力なのである。これは、レシピの暗記では身に付かない力である。
だから、解答解説を真似ることではなく、自力で問題を解くことができるようにならなければならない。
特に、「基礎はできるんですが、初見問題や応用問題が苦手です」という人は注意しなければならない。その内実は、基礎問題ならレシピが理解できるが、初見問題はレシピがないのでできない、応用問題のレシピは複雑だから覚えられないという意味だからである。事実を指摘するなら、「基礎ができていない」のである。
では、どうすればよいのだろうか。解法暗記の原因を考えてみよう。
まず、環境の問題がある。それは、「論理的に正しい手順で答えを出せたか」を判断することが難しいという問題である。多分、周りの大人ができていないのだろう。解答解説を暗記することが勉強ではないというには、解答解説通りではないが論理的に正しい解答を正解だと言い切ることができないといけない。しかしこれは、改善するのは難しい。
次に、思考の問題がある。「解答解説は、論理を示しているのであって、人間が解法を思いつく手順を示しているわけではない」ということを理解していないということである。「わからない問題に出会って、解答解説を頭からじっくり読んで、記述が何を意味しているのかがわからなくて諦める」のはまちがっている。
「解法を考えて、思いつく手順」を知ることができるようになるための一案を述べる。
「解けない問題の、わからなさの度合いによって、解答解説の使い方を変える」のが良いと思う。たとえば、次のように。
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▶なにも思いつかない
解答解説の逆から見る。答えにいたる1個前の手順なら、見通しが立つという場合もあるからだ。
何か掴めたという状態になるまで、逆から遡る。掴めたらもう一度問題を解いてみるか、解説を頭から読んで自分の理解が大丈夫かを確認する。
何も掴めない場合は、同じ分野の基本問題からやり直す。
▶なんとなく見たことがある
解答解説の頭からみる。与えられた条件の処理や、見落とした仮定がないか確認する。
何かに気がつければ、問題をもう一度解いてみる。
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もしくはこう考えてもよい
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必要なのは、よりメタな抽象化能力である。解法の構造を捉えて、よくある展開を見つけ出す。
レシピから、「炒める」「茹でる」「下処理をする」などの動作を抜き出す練習である。
❶解法の肝を理解する
全く歯が立たなかった問題はこう考えてみよう。「ああ、それに気がつけば良かったのね」と理解し、もう一度問題に取り組んでみてほしい。
❷解法の構造を理解する
これを使えばいけそうだよな、と思えた問題は、ここまで考えよう。注意が必要なのは、解答は直線的な構造にはなっておらず、入れ子型の構造になっていることだ。
❸解法を相対化する
自力で解けた問題は、ここまで考えてほしい。まずは、自分の解法を振り返り、言語化する。そして、解説された解法と自分の解法を比較し、共通点と相違点を探す。どちらのほうが、早く簡単で正確かを見極める。いいところは受け入れよう。
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自分の中で、こうすればよいというものがあるわけではない。人に考えることを要求する以上、私もよりよいものを求めて、考えなければいけないと思う。