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日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について国会の承認を求めるの件




 1月29日、東京において、上川陽子外務大臣とフォン・ゲッツェ駐日ドイツ連邦共和国特命全権大使によって日・独物品役務相互提供協定(日独ACSA)への署名がされました。
 日独ACSAの正式名称は「日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定」です。

 協定は条約の一種で国内法と同じ効力を持ち、日本国憲法98条②によって国会の承認が必要となります。条約の締結手続きは、条約交渉➡採択➡署名➡条約文の確定➡国会提出➡承認の手続きが必要です。

 令和6年2月20日「日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について国会の承認を求めるの件」が閣議決定され、外務省所管で国会に提出されました。

ドイツ連邦共和国 Federal Republic of Germany

 
日独ACSAは、自衛隊とドイツ軍隊との間において、物品・役務を相互に提供する際の決済手続等の枠組みを定める協定です。
この協定により、自衛隊とドイツ軍隊との間で物品・役務の提供を円滑かつ迅速に行うことができるようになります。この協定は、自衛隊とドイツ軍隊との間の緊密な協力を促進するとともに、国際社会の平和と安全に積極的に寄与するものです。

外務省サイト日独ACSA




1・日独ACSA


 ACSA(Acquisition and Cross Servicing Agreement)とは、1980年に米国議会で承認された合衆国法典を根拠とする、米国と他国軍との部隊間レベルの物品及び役務の相互融通を認める国際協定で始まりました。

 日本の防衛関係条約や多数国間条約・協定には、国際連合国憲章、細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約、ジュネーヴ諸条約、日米の4つの二国間条約・協定があります。その二国間協定ACSAは豪・英・加・仏・印との間で締結済みで、ドイツは7か国目です。

 日本においてのACSAは、自衛隊と他国の軍隊の間で物資や役務を融通しあうための協定です。安全保障・防衛協力を円滑に進め、連携の実効性を高める狙いがあります。国連平和維持活動(PKO)や共同訓練、大規模災害の支援の場などでの協力を念頭に置いています。

 この協定に基づいて提供される物品又は役務はいかになります。
 食料、水、宿泊、輸送(空輸を含む。)、燃料・油脂・潤滑油、被服、通信業務、衛生業務、基地活動支援(基地活動支援に付随する建設を含む。)、保管業務、施設の利用、訓練業務、部品・構成品、修理・整備業務(校正業務を含む。)、空港・港湾業務及び弾薬

日独ACSAより

 
 ACSA締結は、1996年日米ACSA、2013年日豪ACSA、2017年日英ACSA、2019年日加ACSAと日仏ACSA、2020年日印ACSA、そして2024年日独ACSAです。
 締結当初の日米ACSAは「平時」のみを対象としており、適用可能な活動は、「日米共同訓練」、「国連平和維持活動:PKO及び人道的国際救援活動」に限られ、実施可能事項は米国とNATO諸国間のACSAから弾薬を除いたものでした。
 その後その内容は我が国の関連国内法の整備にあわせ改正されていますが、2015年にはPKO活動での南スーダンにおける韓国軍への弾薬提供の事実から我が国で平和安全法制が成立し、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態や、国際社会の平和及び安全を脅かす事態において、他国軍隊に対する支援活動が可能になりました。これを踏まえACSA協定の見直しを行い、弾薬の提供を前提に2017年日英ACSA締結では話し合われています。

第198回国会 外務委員会 平成31年4月10日



 外務省のHPには日本とドイツついては、2021年3月日独情報保護協定署名、2021年4月第1回日独外務・防衛閣僚会合(「2+2」)開催があり、日独交流160周年を迎える節目の年に、日独間で初めての「2+2」を開催し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて両国で緊密に連携していくことを確認しましたとあります。
 その後、11月に独フリゲート艦「バイエルン」の日本寄港し、翌年9月には空軍トップが自ら独軍用機(ユーロファイター機を含む)で日本訪問し共同訓練が行われました。
 2022年11月 第2回日独「2+2」開催。自衛隊とドイツ軍の共同活動を促進するための法的枠組みの交渉開始に向けた調整を進めることで一致しました。
 2023年令和5年9月29日日独物品役務相互提供協定の締結に向けた交渉の開始にあたり、自由、民主主義、人権及び法の支配という基本的価値を共有する重要なパートナーである日本とドイツは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて取り組む意思を共有し、安全保障・防衛分野での協力を進めてきていますと、されてます。
 しかし、ヨーロッパ大陸にあって太平洋に構成する島は無いのにドイツは何故「自由で開かれたインド太平洋」の実現を求めるのでしょうか?
 2024年1月29日クレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日ドイツ大使の読売新聞に寄稿した中にもインド太平洋地域での脅威が増大していると指摘しています。

インド太平洋地域でも国際秩序への脅威が増大している。ドイツの貿易の2割以上は、インド太平洋地域との貿易が占める。地理的に離れてはいるが、この地域の安定と安全、船舶の自由な航行はドイツにとって戦略的重要性をもつ。

ドイツ大使寄稿


2021312日経新聞

  2021年3月に日独情報保護協定署名が行われましたが、日経新聞の記事には、「この協定は中国の海洋進出への危機感を背景に、インド太平洋地域で安全保障協力を強化する目的で結ばれました。また、防衛装備や部隊運用などの情報を共有し、装備品輸出や共同訓練などをしやすくすることも狙い」とされています。中国武漢発新型コロナウィルスが世界にパンデミックを起こし、2022年2月ロシアによるウクライナへの軍事侵攻があり、中立国の立場を取りながらもロシア制裁に参加せずむしろ積極的な貿易を行うことで、中国へのロシアの依存度は高まっている状況です。つまりヨーロッパを中心とするNATOはロシアの隣国でもあり、ウクライナ侵略でロシアの勝利にはさらに大きなリスクになります。
 2024年米国大統領選挙が行われます。共和党が優勢と言われ、共和党大統領候補が前米国大統領のトランプ氏が現在有力と言われています。そのトランプ前大統領は、ウクライナ支援やNATOへの防衛に消極的な発言が度々見られ、そう言った背景も関係しているのかも知れません。


2・装備移転三原則の改正


 2022年3月、武力によるロシアのウクライナ侵攻がはじまり、2年が経過しています。
 日本の防衛はウクライナへのロシアの武力攻撃で大きく変わりました。安保三文書を策定し攻め込まれない防衛として抜本的な強化が行われています。
 
 同盟国ではないウクライナへは人道上から装備品の支援として昨年3月以降、防衛省・自衛隊は、自衛隊法に基づき、防衛装備移転三原則の範囲内で、防弾チョッキ、鉄帽(ヘルメット)、防護マスク、防護衣、小型のドローン、非常用糧食等をウクライナ政府に提供してきました。また、ウクライナ政府からの要請を踏まえ、新たに自衛隊車両(1/2tトラック、高機動車、資材運搬車)を合計100台規模で提供。あわせて、非常用糧食約3万食も追加提供しています。
 また、要請によりITと地雷除去の分野でウクライナを支援することを決定し、欧州等の有志国からなるウクライナ支援のための「ITコアリション」と「地雷除去コアリション」に参加活動予定です。

 そして、2023年12月22日前年の12月に策定された新たな「国家安全保障戦略」を踏まえ、「防衛装備移転三原則」及び「防衛装備移転三原則の運用指針」の改正を行い「ライセンス生産品」について、輸出先を米国以外のライセンス元国にも拡大し、完成品も含む輸出を解禁しました。そうして、次世代戦闘機開発も日本・英国・伊国との共同開発が行われ完成品の輸出が出来る設計で取りまとめられています。

 このように世界情勢も日本国内や法整備も変化がしている状況で、これまでACSAの提供品目に武器が入っていませんでしたが、国内防衛産業維持や安全保障の点から今後この武器提供の扱いが他国並みに変わっていく可能性もあるのだろうと思います。

 

3・浜田聡議員に質問して頂きたい事


①PKOの南スーダンでの韓国軍への弾薬提供によって法律が変わりACSAの提供品に弾薬が追加されました。
 2021年以降日本の防衛が大きく変わり法整備もされました。今回日独ACSAに武器輸出は入っていませんが、今後ACSAの武器提供が加わる可能性はありますか?

②会計検査院の報告で、決済未納分についての防衛省の見解と今後の対応について
会計検査院によるACSAの未納金について報告がありました。
未納なのになぜ追加で提供するのですか?
取り立ての方法と、今後はどうされますか?
物品と相殺は出来ないのですか?
この未納分は防衛費から負担しているの?
物品役務相互提供協定(ACSA)に基づく提供に係る決済について令和5年10月26日付け 防衛省海上幕僚長宛て


 


※法案が国会に提出されましたら、加筆修正が入るかも知れません。 

(条約議案提出 回次213議案番号2)

NHKから国民を守る党の参議院浜田聡議員の依頼で提出法案の調査をします。

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