「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件」(政治家女子48党浜田聡議員のお手伝い)
1・かば焼きが消えた
日本人は夏の土用の丑の日には鰻のかば焼きを食べる習慣がありますが、かなり前からその鰻のかば焼きが急激に高くなり、最近は鰻専門の飲食店もあまり見なくなってしまったのはお気づきでしょう。
その日本で食べられる鰻のかば焼きの多くはシラスウナギと言われる稚魚で、海外から輸入され日本の水槽で養殖され、そこから鰻屋さんで調理され食卓に上って来ます。
急激に高くなった原因がシラスウナギの稚魚の乱獲が原因と当時テレビのニュースでもやっていて皆の知る所ですが、その鰻のかば焼きの値段がこれほど高い原因は、日本全国で一斉に夏の土用の丑の日に鰻のかば焼きを食べるという愛すべき習慣が原因で、国際問題を作り出しているというのも実におかしな話で、日本人は本当に面白いなぁーと思う。
日本のうなぎの稚魚は台湾と融通し合っていたようですが、産業保護を理由に日本が昭和51年1976年に台湾側も平成19年2007年に輸出を規制してしまいした。
日本の大量消費は夏だけですから、輸入に頼る日本のかば焼き価格は稚魚の輸入がストップすれば1年じゅう高くなるのは当たり前です。さらにこの規制で国際的なウナギロンダリングが行われていたわけですが、平成25年環境省も平成26年国際自然保護連合もニホンウナギの絶滅危惧種に指定しました。この事でますます日本人の食卓にはウナギのかば焼きは見られなくなったという訳です。
世界各地では水産資源の乱獲による資源の枯渇と国際貿易上大きな問題になっている事が、今回の法案「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件」(略称:WTO協定改正議定書(漁業補助金協定))の調査の過程で知りました。
2・議定書について
「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書」(略称:WTO協定改正議定書(漁業補助金協定))が、令和4年6月17日 ジュネーブで採択されました。
「議定書」は「条約」に追加・変更する事柄に使われる傾向にあります。基本的な条約交渉の流れとしては外務省主管で行い、「条約交渉開始 → 実質合意 → 署名 → 国会承認(衆・外務委員会、参・外交防衛委員会で審査)→ 公文の交換 → 公布 → 発効」となり、衆議院では既に令和 5年 5月12日全会一致で賛成可決しています.
法案の詳細は外務省サイトに掲載されています。
内閣法制局のサイトにある提出理由から、「世界的な漁業資源管理の促進、多角的貿易体制の更なる発展及び世界経済の持続可能な成長に寄与するとの見地から有意義」とあります。
概要になりますが、この「背景」に2001年にはWTOでの交渉が始まっておりますが2022年まで採択されていない事に今更ながらに驚きます。その顛末については、外務省のブログ記事とも思える連載企画:なぜ、今、WTO改革なのかを読むと背景がわかります。
「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を改正する議定書の説明書」から、設立経緯や内容について確認しましょう。
この議定書は1994年設立の世界貿易機関WTOにあり、平成28年2016年に結ばれた「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定」を改正し、この「漁業補助金協定」の部分を追加されました。
交渉は平成13年2001年のドーハ・ラウンド交渉の一分野とされ、漁業補助金分野の交渉が開始され、令和4年2022年6月17日に、ジュネーブで開催された第12回 世界貿易機関閣僚会議でこの議定書が採択されました。問題視されながらも21年間も掛かった背景はWTOの負の面でもあり、WTOの機能が一部停止している原因でもあり存在意義自体が問われています。その中での交渉の成立ですので人間の知恵を信じたい所でもあります。
議定書締結の意義
この議定書は世界貿易機関協定を改正し、補助金の禁止等の漁業補助金協定を追加すること。
日本がこの議定書を締結することは、世界的な漁業資源管理の促進、多角的貿易体制の更なる発展及び世界経済の 持続可能な成長に寄与するとの見地から有意義であると認められるとあります。
議定書の締結により我が国が負うこととなる義務
この議定書の締結で日本が負う主要な義務の概要は、IUU漁業等の違法な団体や乱獲する者に補助金を出したり維持を禁止しています。
補助金が交付される漁獲活動の種類の情報、IUU漁業と思われる船舶及び運航者の一覧表、漁業補助金協定の実施等の情報を提供する事とあります。
この様な乱獲の実態は水産庁のサイトに詳しく書かれています。
漁獲量を主要漁業国・地域別に見ると、EU(欧州連合)・英国、米国、我が国等の先進国・地域は、過去20年ほどの間、おおむね横ばいから減少傾向で推移しているのに対し、インドネシア、ベトナムといったアジアの新興国をはじめとする開発途上国の漁獲量が増大しており、中国が1,345万tで世界の15%を占めています。
〈生物学的に持続可能なレベルにある資源は66%〉
国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界中の資源評価の結果に基づき、世界の海洋水産資源の状況をまとめています。これによれば、持続可能なレベルで漁獲されている状態の資源の割合は、漸減傾向にあります。昭和49(1974)年には90%の水産資源が適正レベル又はそれ以下のレベルで利用されていましたが、平成29(2017)年にはその割合は66%まで下がってきています。これにより、過剰に漁獲されている状態の資源の割合は、10%から34%まで増加しています。また、世界の資源のうち、適正レベルの上限まで漁獲されている状態の資源は60%、適正レベルまで漁獲されておらず生産量を増大させる余地のある資源は6%にとどまっています(図表4-4)。
漁業・養殖業の動向
乱獲や沿岸開発などの影響によって、漁獲量の伸びは1990年ごろから停滞し、9,000万トンレベルで頭打ちとなっている。2013年には、水産資源のうち3割弱が乱獲状態にあり、持続不可能な利用であると評価された。
「シラスウナギの稚魚の乱獲」という話から、WTOの加盟国が長年知恵出し合い、合意を得る為の素晴らしいスタイルの交渉(プルリの交渉)がはじまったともいえます。
シラスウナギの稚魚が~世界の乱獲を救ったのかも知れません。プリルの交渉については、経団連の資料に解り易く書いてあったので、下にある多角的自由貿易投資体制の再構築を求める -TPPの先を見据えてを紹介します。
3・減税界隈住人の答え
乱獲の補助金が削減される点に関して、資源の確保からも重要でこの議定書の承認を求める件に賛成です。
海洋資源はますます貴重になると同時に商品の値段も高くなることが予想されます。貧しい国の人々の収入が確かなものになる様に期待したいです。
余談として、
JICAの海洋・漁業調査船 日本に輸入されるタコの約2~3割がモロッコ産で、マグロやイカなどおなじみの水産物もモロッコから多く輸入されています。美味しいたこ焼きやお刺身のタコは、マラケシュのある遠いモロッコの海から運ばれているのかも知れません。そのモロッコの水産資源管理にJICAが協力している事は日本のODAの使い方としては正しいのかも知れません。
※調査家庭での資料集めで投稿したツィート