#6 日本と世界の男×男エッチ事情
どうして家族に腐バレしてないのか自分でもそろそろ不思議です、Amatiです。
少なくとも扉付きの本棚は誰も開けてはならぬ(トゥーランドット)。
男色とBLの違い(日本版)
前回、「日本では同性愛の偏見がひどい」という話で一旦切りました。
しかし一方では、「かつて日本は性に寛容だった」という話もよく耳にします。森蘭丸や寺僧のお稚児さんを例にした「日本は性や男色に開放的だった、西洋文化(キリスト教だったり敗戦だったり)によっておかしくなった」という説です。
しかし、個人的には「そうかなあ」と思っています。
日本古来からの男色って、原則的に年長者がタチで年少者がネコですよね。これはフェアではありません。支配と服従の関係です。
江戸時代の陰間茶屋でも、男性相手に春をひさぐのは11歳~18歳以下の少年だったようです。(成長すると女性客専門になる)
森鴎外の童貞日記(失礼)にも、男色を好む「硬派」は少年を可愛がるもの、可愛らしい少年は硬派の年長者から掘られる危険性があったことが書かれていました。
これは、強者による一方的な性搾取ということ。
教室内の弱い男子がパンツを降ろされるような、大人の社会におけるセクハラのような、「性的ないじめ」の延長線上にあるものです。それをもって「性に寛容」とするのはある種のマッチョイズムを感じて私はあまり好きではありません。
私はリーマンBLだったら年上の堅物上司が受けでいてほしいので。普段スキのない42歳課長が出世頭の29歳若手くんにオールバックを乱されるような展開が大好きなので。これって男色の歴史とは違うと思うんですよね!(鼻息が荒い)
男色とBLの違い(世界版)
じゃあ世界ではどうかというと、古代ギリシャやローマでも男色は盛んで、ネロやカエサルも男色の皇帝だったようです。
でも、ことさらネロやヘリオガバルスなどのネジ飛んでる系皇帝が「受側」だったことが語り継がれているあたり、やっぱりなんとなく「受は可哀想なもの、強者が受を望むのはおかしい」みたいな認識があったように思うんですよね。
また、中国でも、日本と似た男色文化があったようです。やはり受は少年で、権力者に気に入られて頭角を表すものもいたけれど、市井の陰間は歳をとると悲惨な末路しか残っていなかったとか…。
そしてキリスト教では、原則的に同性愛は罪とされるようです。しかし現代、柔軟に解釈を変えて多様性を認めつつある…すごく良いよね。禁忌が形骸化して、教義が生活に溶け込んでいくのが宗教の成熟だもの。
(ガバガバの浅学がバレるから深く語るのは避けようね)詳しい方のレクチャーお待ちしております。
海外の腐女子も強いんだぞ
さてここからが今回のメインだ!上記の歴史を「それはそれ」として、現代、ファンタジーとしてのBLを楽しむ国外の腐女子お姉様の生態を紹介します。
YAOI girls from oversea!
最近知ってかなり気に入っているのが、どこか(多分都内)の大型店舗の書店員さんが描いている、「書店員あるあるマンガ」。日本に来る海外のオタクな皆さんの悲喜こもごもが面白い!
とくに、海外からBLコミックを買いに来る腐女子お姉様と、店員さん(not腐女子)のやりとりが超アツいです。ちょいちょいお国柄が見えるのも好き。
でも分かるわ。私も海外行ったら必ず現地の本屋行くもん。
現地のマンガとか雑誌とか読めなくても買うもん。二十歳のころモスクワのスーパーでエロ本買って店員さんにスッゲェ目で見られて、たまたま近くにいたおじさんに「ハラショー(すっげー)」って言われたの今でも覚えてるもん。(旅の恥はかき捨てです)
頑張ってるぞ!中国
古代はともかく、現在の中国は性産業にものすごく厳しいです。日本よりずっと。
そんな中でもオタクカルチャーは頑張ってます。まだ日本の作品が多いようですが、外注請負によるスキルの獲得と潤沢な資金であっという間に追い抜かれそう。
もちろん腐女子文化も成長中。厳しい監視の目を抜けて、数年前にとんでもない書籍が出ました。
『腐女子的日語工口50音』訳す必要もない。
「工口(gōng kŏu)」は「えろ」じゃなくて漢字。当て字だからオッケーだったのかなあ…?日本で買えないのが惜しい。読んでみたいです。
とか書いてあるらしい。思い切りが良い。
そして、新撰組ジョークが通じる程度には日本の歴史も知られてるってことも、なかなか油断できません。日本の腐女子も宦官BLとか知っとくべきかもしれない(あるの?)。
歪みねえぞ!英語圏『オメガバース』
アメリカも性産業には厳格。とくに小児ポルノには非ッ常に厳しく、自分の子供のお風呂写真を持ってるだけで社会的地位を失うこともあるとか。
そこで変態の性欲は方向性を変え、人外ポルノに流れました。『マイリトルポニー』という女の子向けアニメに出て来るきゃわいいユニコーンやペガサスが餌食になっています。
そんな「ケモナー」文化が土壌にあって生まれたのが、「オメガバース」という特殊な世界設定です。
発祥は、人気のアメリカドラマ『スーパーナチュラル』の狼男エピソードとされています。スーパーナチュラルじたいもあちらの腐女子(「スラッシャー」と言う。攻×受を攻/受と表記するため)に人気です。
連載三回目「BLは様式美だ!」でもちょっと紹介しましたが、オメガバースは、狼の生態に似た階級社会での差別が定着した世界。
男女性の他に「アルファ・ベータ・オメガ」という3つの性区分があり、それが社会階級とほぼ直結しています。
リーダー格の「アルファ」人種。能力が高く、社会的に高位の職業についていることが多い。
大多数の平民格「ベータ」人種。普通の人
虐げられる階級「オメガ」。男女問わず妊娠「する」ことが可能
オメガには定期的に「ヒート(発情期)」が訪れます。その間は繁殖行為しかできなくなります。そのためオメガは社会活動に制限があったり、繁殖のための種として非人道的な扱いを受けることもあります。
その他細かい設定は色々。人の数だけ解釈があったりもします。詳しくは「BL解説コラム箸休め・オメガバースってなあに?」にて。
ってところのシコさが世界中の腐女子の性癖袋を蹴り上げて、あっという間に広まりました。
二次創作で使われることが多いのですが、「差別萌え」への嫌悪・二次創作の本質を損なう・キャラクターへの敬意を欠く…などの理由で嫌う人もいます(気持ちはわかる)。
亜種として「Dom/Subユニバース」というものもあります。私はこっちがとても好きで、受くんがへたぁ…ってニールしてる姿とか想像するたけで前かがみになりそう。
なんでそっち行った韓国!『ケーキバース』
美容やポップカルチャーなど、リア充向け文化の輸出のほうが盛んなイメージですが、韓国の腐女子は『ケーキ・フォークバース』というこれまたとんでもない世界を生み出しています。
オメガバースの亜種のひとつで
という設定です。オメガバースとの違いは、加虐側(フォーク)の人間が社会的に異端視されるという点。
私はまだあまり響いていないのですが、ヒトに混じって生活する食人鬼が主人公の『デビルズライン』に結構ときめくので、ハマる作品に出会えればいけるクチになると思っています。
日本のオタクは恵まれている
以上が、私の知っている範囲内の「世界の腐女子事情」です。
これらの文化はネットの普及によって一気に広まりました。それは日本でも同じなのですが、現在においても「頭ひとつ抜けているよね」と思っているのは「同人誌」のハードルの低さです。
いまの日本には、個人の出版がとても安価に行える機能・文化が整っています。
短納期・超少部数の印刷・製本
特殊紙・特殊印刷・特殊加工などへの細やかな対応
イベント主催者との連携
多品種・少数の商品を、イベント当日に確実に指定箇所に届ける物流機能
性を消費する娯楽への「慣れ」
その結果「薄い本」が本棚の内側でギッチギチに内圧かけてくるハメになってるわけですが
国外では個人が同人誌を頒布するという文化がどの程度進んでいるのでしょうね?
少なくとも日本では、「原稿を書いて(書いて)印刷会社にオーダーして、少部数を指定日に指定の場所まで届けてもらって、当日イベント会場で仲間たちと交流しながら頒布する」という文化は、非常に恵まれた環境に支えられていると思うのです。
さて環境に恵まれているとは言いましたが、この「考えたものを形にする」という一連のプロジェクトを達成できることの価値、社会人なら分かっていただけるのではないでしょうか?
というわけで次回は、「腐女子活動」の面白さについて全力プレゼンしたいと思います。
なんだかんだ今回もキモくなりました。ごめんなさい。
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投稿日 2017.11.09
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