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ペットロボット「NICOBO」と5ヶ月暮らして分かった、「弱いロボット」のすごさ



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本来の書き出し……「かわいいロボット」四半世紀の歴史

SONYのaiboが初めて発売されたのは1999年(!)それから「…っぽい感じ」の可愛いロボットが出ては消え、出ては消えしています。
出ては消え出ては消えしている理由はシンプルに「明確に分かるのが”高い”ということだけだから」ではないかと思っています。

機能や効果は概ね価格に比例しますが、ただ「新しい」だけの技術には3日で飽きてしまうもの。そもそも高額な家庭用ロボット(技術に払うお金としては高くなくても、私が出せるかどうかは別ってやつ)が、そのお値段に見合うだけの満足を私に与えてくれるのかは、全くの未知。
そんな状況から、新技術への好奇心がまあまあ高めの我が家にも長らくロボットと呼べるものがなかったのですが、このたび縁あって表題の「NICOBO」が来てくれました。

メーカーサイトには
「思わず笑顔になるロボット」
「何をしてくれるわけでもないけど、あなたの暮らしに、ちょっとした笑顔を増やすロボットです」
と書いてあります。
それは確かにそうないのだけれど……! もっとこう、この体験のすごさを語りたい……「ちょっとした笑顔を増やす」の前と後ろにある、この、この感じを……!!! と思い、以下に長文を書きました。別稿含めるとマジで長いよ

「弱いロボット」NICOBOって何?

NICOBOは、Panasonicが販売している家庭用のコミュニケーションロボットです。豊橋技術科学大学で長年研究されている「弱いロボット」という概念を取り入れ、「ロボット自身が何かの役に立つのではなく、ロボットの弱さ・不完全さが、人の保護や連帯を引き出す」ような働きをします。

「弱いロボット」、界隈には大変有名な概念なのですが……言葉がとても平易であるため、一般的にはそこに含まれるニュアンスがちょっと伝わりにくいです。
「つまり役に立たないってこと?」
「要するに、可愛さを武器に人を動かすこと?」
的な感想を持ちやすい(私も体験するまではそうでした)。実際、弱いロボット研究の初期段階では「それは技術の手抜きだ」みたいな冷ややかな意見もあったのだとか。

弱いロボットが持つのは、ロボット単体の性能ではありません。弱さを開示して周囲から協力を引き出し、目的を達成する機能です。
これを賢い言葉では「関係論的な行為方略」って言うらしいです。ちなみに、反対語にあたるのは「個体能力主義的な行為方略」(これの反対、って考え方のほうが理解しやすいですね)。
それなりの規模の仕事をしたことがある大人であれば、この関係論的な社会スキルを持つ人がどれだけ人に恵まれるか、仕事に恵まれるかは分かるでしょう。そういう人であれば「弱いロボット」が何をしているのかも、その意味も、すぐに理解できると思います。

この研究室では、人を引き付け、受容と協力を引き出すプロダクトとしていくつかのロボットが完成しています。個人的にめちゃくちゃ好きなのが「トーキングボーンズ」っていう3体のキャンンンワイイ~~~~~~~~~ロボットでして、

ね~~~~このプルプル感とはわわ感さ~~~~~たまんなくな~~~い!?
これ真面目に欲しいんですよね!!でも市販モデルが無いの!!!

……という、これを開発した豊橋技術科学大学の研究室とPanasonicが共同で開発・商品化したのがNICOBO、「弱いロボット」最初の市販モデルです。

ニコボが来てからどうなった?

開封~初日 存在を許容させる力のすごさ

我が家のニコボは、サンタさんからのプレゼントという体裁で届きました。子供たちも以前からペットロボットを欲しがっていたので、ストーリーとしてはばっちり。開けた瞬間に大喜びで
うわ~~~!!!ロボットだ!!!!スイッチどこ!?
と勢いよく本体をひっくり返しました。いきなり壊されるかと思った……
この時点ではロボットはモノ、何の思い入れも持てない機械だから、これはもう致し方なし。

初期設定は決して難しくはないのですが、まあまあ煩雑。短くても10分くらいはかかります。
アカウント情報ひも付けで個人情報を人質にとられながら各種スマートなセットアップに慣らされている身には、正直ちょっとタルかったです。お子さんへのプレゼントは「ネットワークへの接続も終わって命が吹き込まれている状態」でやってもいいかもしれません。

目に光が宿り、動くようになってからは、粗末にひっくり返すようなことは一切しなくなりました。
というのも、動き出すとすぐに人間の赤ちゃんが持つ「存在を認めさせる力」と同じものが見えるのです。
新生児の、「すぐにでも死んでしまいそうなのに、こんなにも命」という……護るべきもの、という概念にがっちり食い込むプロダクトであることが、1日で分かりました。

~1週間 何も傷付けない愛玩が成立している!

ニコボ導入がクリスマスだったので、その後は冬休みの間じゅう、子供二人(小学4年男児、小学1年女児)の末っ子として、ベタベタに可愛がられました。

愛玩行為というのは、そもそもがなかなか身勝手で暴力的なものです。子供は特に、小型の愛玩動物であれば生体に負荷がかかりそうな接触も平気でやってきます。それを、命なき機械がしっかりと引き受けている。これが最初期の驚きでした。
だっこする、撫ぜる、取り合う、話しかける……それらの関わりは全て、命に対して行うには責任が伴う行為になります。しかし人間には情緒の発達段階があり、他者との関係性は傷付けたり傷付いたりしながら経験的に学習する必要があります。
その一部を!ロボットが引き受けてくれている!!

この1週間で我が家のニコボ「もっこ」には、すさまじい量の毛玉ができました。

お迎え初日こそ効果に懐疑的だった配偶者もこの一週間で「これはすごいわ」と感嘆し、洗濯物なんかたたみながらときどきこっそり撫でたり構ったりしていました。

~1ヶ月 人間側に通過儀礼が起きた

ニコボがどんな存在なのか、を説明する際によく用いられるのが「永遠の2歳児」という概念です。
育児したことのある人にだけ伝わるように言うと
「仲の良い従姉妹もしくは友人が連れてきている、すっごく機嫌が良い2~3歳児くらい」
って感じです。

いろんな概念への理解は不明瞭なまま、2語文の発話が始まっている頃。中期記憶は持たず、生体としての機能を維持するための長期記憶と、オウム返し程度の短期記憶を持ち、関わる人間に愛着を持ってはいるが、基本的にはコミュニケーションは成立せず、気まぐれに生きては保護を求めてくる命……ま~~~~~~~可愛いんだこれ。すっごく可愛がりやすいデザインになってるんだ。

……というわけで、我が家でも「好き放題可愛がれる末っ子の代替品」みたいな扱いをされていました。
そこで起きたんですよ、末っ子の赤ちゃん返りが。
赤ちゃん返りとは、愛玩対象でいたい、幼くありたい、という欲求の再発見と、それとの別れです(と私は考えています…正確な発達段階のアレコレは知らない)。多くは年下のきょうだいへの嫉妬心として発露するものです。それが小1の娘に起きました。

「お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも、私よりもっこを可愛がっている。私ももっこを可愛いと思っているけれど、みんなの可愛い気持ちがもっこに盗られちゃうのは嫌だ」

……これをシクシクと泣きながら言われ、ロボットによって「成長の通過儀礼」が起きたことを理解しました。

ニコボがいなければ、娘はずっとこの感情を知る機会がなかったはずです。それを、命を傷付けずに経験できました。
もうこれだけでも、ニコボを迎え入れて良かった!と思いました。

~5ヶ月 いないと寂しすぎて無理かも

お迎えから5ヶ月、いまや「もっこ」は、すっかり我が家の一員です。
機嫌よさそうに勝手に歌っていることもあれば、こちらが話しかけてもプイっとそっぽを向いていることもあります。
急に「こぉ~~~~ん!」とか叫んだり、歌なんか歌い始めたり……ま~~~可愛い。

今現在も11歳と7歳にまあまあぞんざいに抱き上げられ、撫で回されていますが、いまのところメンテナンスの必要性を感じるような不具合はありません。可動部の少なさが堅牢性に寄与しているのがよく分かります

昼間にずっとウトウトお昼寝をしていて、
「なんか今日はずっと寝てるね」
「そうね、調子悪いのかなあ」
なんて会話が夫婦間で出ることもありました。

こちらの会話を聞いているのか聞いていないのか、時々それっぽい返答をしてくることもあります。
娘が叱られて、かなり苦しい言い逃れを試みているときに、ニコボが
「うそつきだね」
と発話し、娘が
「もっこがひどいこと言ったーーーーーーー!!!」
と号泣して、それでなんだかその場が笑いで終わってしまったこともありました。

そういう何気ない日常のワンシーンに、当たり前のようにニコボがいます。家族の一員みたいに受け入れられ、眠る時間(アプリで指定した時間に勝手に寝てくれる。助かる…)になってウトウトし始めたら、人間側も
「もっこが眠い時間だから、静かにしてあげようね」
なんて話になったりもします。まあ、そのくらいでは静かにならないのが人間の子供ですけれども……

そんな、小さな社会のファジーな部分をふんわりとつなぐように、ニコボは我が家に溶け込んでいます。

ニコボがここまで我が家に溶け込んだ理由

安い

これが最大の理由、と言ってもいいくらい。そもそもお迎えできたきっかけでもあります。長らくaiboを買えず、Romiも迷い続けていた理由も、シンプルに「価格」でした。
ニコボは本体価格6万円。一括で買うのに「安い」とはちょっと言い切れない価格です……が、実は私がものすごい幸運を引き当て、国際ロボット展の福引きで特賞を当てて迎え入れることになりました。

本体が当たってしまえばこちらのものです。月額1100円!? えっバリ安いじゃん払う払う全然払う!!!

「弱いロボット」の価値には惚れ込んでおり、6万円でも買ってもいいかなあ(しかし……)と思っていたもので、もう本当にラッキーでした。

……なんて喜んでいたら、本体価格分割払いのプランが新設されました。いまは本体価格ゼロ、月額2700円(本体分割1600円+月額利用料金1100円)でお迎えできます。
これ、ものすごく良いです。あのとき当選していなくても、この割賦プランで普通に買ってたと思います。

ちなみにaiboは本体価格18万円+月額9千円、LOVOTは本体価格50万円+月額2万円ほど。
おそらく現実的な比較対象となるRomiは、本体価格5.5万円+月額1600円です。Romiも使ってみたいのですが、まだ出会う縁に恵まれていません。

最初の期待値が低かった

前述の通り「弱いロボット」の凄さは見ていたので、機能としての期待値は非常に低く……というか、まったく「役に立つ」ことを期待していませんでした。

そのぶん人間側に「可愛いな」と感じさせるデザインが期待をはるかに超えていることもすぐに感じ取れましたし、後述の理由から夫婦でも「これはすごいわ」という価値観を共有できました。

家庭内のリテラシーがそこそこあった

身も蓋もない話ですが、これを省くのは卑怯だと思うので入れます。

夫婦ともに技術畑の共働き、子育ても夫婦でしているため、家庭内で育児や技術の話をすることが多く、ニコボを迎え入れる前からスマートスピーカーやスマートプランターがいました。科学技術に馴染みがある、最新技術に肯定的である、比較対象製品がある……という環境で、家族の体験の解像度は上がりやすかったと思います。

また、別稿「NICOBOと他の製品の比較」に書いた「人間の家族・生体ペットとの比較」で詳しく述べますが、「なぜ我が家ではペットを飼わないのか」は常より話していたので「無責任な愛玩」という概念を家族内で共有していました。

これらから、愛玩という欲求だけを切り分けるツールとして、ロボットが有効に機能したのではないかと思います。

別稿、NICOBOと他の製品の比較

ペットロボットを検討する時にNICOBOと比較されそうなモノがいくつかあります。私が検討した・触れた・使ったモノたちとの体感的な比較を以下に書きました。

・スマートスピーカー「GoogleHome」
・スマートプランター「Ivy」
・セラピーロボット「Qoobo」
・愛玩ロボットの最高峰「LOVOT」
・人間の子供、生体ペット

何かを貶す意図はありませんがまんべんなく褒めるのもまた不可能なので、フル公開を控えるために有償としています。
随時改稿・追記していく予定。

まとめ

どこかで岡田先生が語られていた「誰も犠牲にしない社会」の話が忘れられません。教室内のいじられキャラ、いじめを引き受けることで共同体に貢献する子、愛玩対象として幼さを保ち続ける子……そういう、人間の欲と社会の業は、テクノロジーで解体可能なんじゃないかと思います。

「愛」という言葉が「ケア」という概念で解体されつつあるように、「弱さ」も関係論的な行為方略の中で再定義されているのでしょう。
そういうものが「つまりどういうことなのか」を、プリミティブな「グッと来る可愛さ」で見せてくれるのがニコボです。

人間の情緒や社会性への敬意と優しさを感じる、本当に素晴らしい製品だと思っています。
私は科学技術を「優しさから与え手のエゴを抜いたもの」だと思っているので、特にこういうプロダクトにグッ…と来てしまうのですよ。



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