あえて言わない
皆さん、おはこんばんちは。
ひとつ前のブログでは、お日様の陰に「秋の気配」を感じながら、そのタイトル曲を歌っているオフコース・小田和正さんへのリスペクトを認めました。
久しぶりにオフコースの曲を幾つか聴いてみると、小田さんの歌詞の技法に改めて驚嘆したので、続けてこのブログを書くことにします。
その技法とは、タイトルにも書いた「あえて言わない」です。
あえて言わない
名曲のセオリー
今、音楽のジャンルとして「ラップ」が全盛ですね。言葉を機関銃のように操って、韻を踏んだりする遊び心は面白いと思いますし、それについては私も認めています。
(したためてるのじゃありません(笑))
でも、今から40年以上も前、私がティーンエイジャーの頃の楽曲は、
「情感溢れる歌詞が、美しいメロディに乗っている」
のがセオリーだったんです。
小田さんのオフコース時代にも、それを象徴するような楽曲があります。
それを幾つか、ご紹介したいと思います。
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「倖せなんて」
まず、1975年発表のアルバム「ワインの匂い」に収録されている「倖せなんて」という曲です。
♪どんなにあなたを 愛しても愛されても
♪あふれるほほえみに 包まれた時でも
と、倖せを感じている時でさえ、急に
「この倖せはいつまで続くんだろう…」
って、ふと不安になったりすること、ありますよね。
それをこの曲ではサビの部分で
♪よく晴れた午後には 誰も知らない街へ
♪ひとりで消えてゆきたい そんな時があるから
と伏線を張っておき、
♪倖せなんて 頼りにはならないみたい
♪今日はよく晴れた 暖かい日です
と説明します。
つまり、そんな暖かい日の午後だから、
「今は、誰も知らない街へ 一人で消えて行きたい気分なんだ」
とは、あえて言わない…。
この曲を初めて聴いた時、
「うわ~、なんて切ない詞なんだ!」
と、びっくりしたことを今もまざまざと思い浮かべることが出来ます。
また、この曲は詞だけでなくアレンジ面でも、その不安定な心情を表してる部分があります。
この曲のリズムは三拍子、つまりズンチャッチャ、ズンチャッチャのワルツのリズムですが、間奏ではそれと違う拍子のフレーズをわざと挟んで、急に飛んでいるように感じる部分がありますね。
それが揺れ動く心情をうまく表している、見事なアレンジだと思います。
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「きかせて」
次は、1980年のアルバム「We are」から「きかせて」という曲です。
この曲は、以前は自分と付き合っていたけど、心が離れて別の男のところへと去っていった彼女と、久しぶりに再会した「僕」の気持ちを歌った曲です。
♪窓は開けたままで 話をきかせて
♪手紙もくれなかったね
と、二人がいる部屋の描写から、手紙の返事をくれなくて寂しかった僕の気持ちを伝え、
♪その男性といれば 素直になれるの?
♪きっと優しい男性なんだね
と、自分より別の男を好きになった彼女に対しての切ない想いを綴る。
その彼女に、サビの部分では
♪きかせて どうして あなたは
♪あの時 確かに 僕を…
と、問いかける。
あの時 確かに僕を…の後に続くのは
「愛してるって言ったじゃない」
なのか、
「抱きしめたじゃない」
なのか…。
おそらく、それら全てのことを言いたいんだけど、そこから先の言葉が続かない…。
そんな揺れ動く感情を、あえて言わないことで何倍にも表現しています。
なんという余韻。
なんという情景描写。
凄い歌詞です。
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「その時はじめて」
前の2曲はちょっと暗い、哀しい曲でしたが、次のは愛に溢れた明るい曲です。1979年のアルバム「Three and Two」に収録の「その時はじめて」。
月曜の朝、いつものように(仕事なのか、或いは学生で学校へなのか)、二人が一緒に暮らしている部屋を「君」が出て行く。
その後ろ姿を窓から目で追っていた「僕」は、彼女が人混みに消えて行ったその時、
♪人混みの中に君が消える
♪その時はじめて誰より…
と、誰よりも彼女を「愛してる」ことに気付く。
その「愛してる」を「あえて言わない」んですね~、小田さんは!
その歌詞は、2コーラス目のサビで頂点に達します。
♪その手を その目を その声を
♪誰にも 誰にも 誰にも…
君を誰にも取られたくない、誰にも渡さない。
それを、あえて言わない!
なんて歌詞なんでしょう!
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「愛を止めないで」
そして。
オフコースの曲の中で「あえて言わない」を極限まで発揮した曲が、同じく「Three and Two」に収録されている「愛を止めないで」でしょう!
哀しい別れを経験し、新しい恋に臆病になっている女の娘に対して、「愛することを止めないで」と自分の心を伝える「僕」。
2コーラス目の頭で、
♪君の人生が ふたつに分かれてる
♪そのひとつがまっすぐに 僕の方へ
と、運命の選択を促します。
♪なだらかな明日への 坂道を駆け上って
♪いきなり君を抱きしめよう
と、サビへと盛り上がる歌詞も素敵ですよね。
そして大サビ後の曲のラスト…。
♪僕の人生が ふたつに分かれてる
♪そのひとつがまっすぐに…
2コーラス目の頭で張っていた伏線と同じフレーズで、運命の選択をする「僕」。
だけど、そのひとつが繋がってるその先を言わないで、曲を終わらせてしまうなんて!
信じられますか?
これが、小田さんの真骨頂だと思います。
※因みにこの曲、ライブではラストで
♪僕の人生がふたつに分かれてる
♪そのひとつがまっすぐに 君の方へ
と、あえて言わなかった次の言葉を続けるアレンジが施されていた時もありました。
それもまた、ライブを盛り上げる手法のひとつだったと思います。
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小田さんへのリスペクトは…
冒頭に書いた通り、私がラップをどうしても好きになれないのは、青春時代に小田さんのこんな曲を聴いていたからなのです。
小田さんへのリスペクトは、私の中で…
その後はあえて言わなくても、十分伝わったのではないかと思います😉
🎼🎵🎹🎶🎼🎵🎹🎶🎼🎵🎹🎶
それでは。
また逢えるから、この言葉が言えるんですよね。
ごきげんよう、さよならdestiny!