青い髪の彼女と、運命のプロポーズ
今日は、俺にとって一世一代の大勝負。付き合って2年、彼女にプロポーズをする日だ。場所は夜景が美しい高級レストラン。予約もバッチリ、彼女の好きなシャンパンまで手配済み。ポケットには、長い間選び抜いた特別な指輪がある。
俺の心は緊張と期待で張り詰めていた。彼女はいつも少し遅れてくるけど、今日はその登場が特に待ち遠しい。これから始まる未来が、俺たち二人を待っているのだ。
ドアの開く音に、俺は思わず身を乗り出した。息が止まり、心臓がドキドキと高鳴る。まるで映画のクライマックスのように、店内の空気が一瞬だけ止まった気がした。
「来た!」
体全体が緊張し、手に汗がにじむ。ついに、彼女が来る。俺は彼女を目で追い、ドアの方をじっと見つめていた。
――だが、その姿は見えない。
ふと、俺はポケットに手を伸ばし、指輪の箱を取り出した。そして、そっともう片方のポケットから「彼女」を取り出す。彼女は、そこにいつも通りの笑顔でいる。
俺はテーブルの上に彼女を丁寧に置き、目の前に座らせた。
周囲の人々がこちらにちらちらと視線を向けているのがわかる。店内は一瞬、静寂に包まれたかのようだったが、すぐに小さなざわめきが広がり始めた。
「ん?あれ、何だ…?」
「え、何か…置いてる?誰もいないよな?」
俺は気にしない。今日は特別な日なのだから。彼女と二人だけの大事な時間だ。他人の目などどうでもいい。
「君との時間を、俺はずっと待っていたんだ。」
俺は指輪の箱を開け、彼女の小さな手にそっと差し出す。彼女は何も言わないが、その笑顔は俺にとって何よりもかけがえのないものだ。彼女と共に歩む未来が、今ここで始まろうとしている。
その時、周りの視線が一気に集中しているのを感じた。
「え、あれ…?いや、まさか…」
「本気かよ…」
囁き声が大きくなり、周りのテーブルが次々と俺たちに注目している。ウェイターが困惑した顔で再びやってきて、小声で聞いてきた。
「お、お連れ様は…もういらっしゃっているのでしょうか?」
俺は彼女を見つめながら、真剣に答える。
「ここにいるだろ?俺の大切な人が。」
ウェイターの顔が一瞬固まり、何を言うべきか分からないというように目をパチパチさせた。それから、何とか笑みを浮かべて、ぎこちなく頷いたが、すぐに店の奥に引っ込んでいった。
周囲の囁き声はさらに大きくなり、明らかに全員がこちらを見ている。けれども、俺にはそんなことは関係ない。彼女の存在だけが、今の俺にとってのすべてなのだ。
「これからも、ずっと一緒にいような。」
俺は彼女の笑顔に見つめられながら、誓いを立てた。
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