中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/02/26-2021/03/04_9w
こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、
前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、
Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
まずは事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、投資傾向や特定企業の分析が薄くなることは予めご了承ください。
※本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
※本noteは速報の位置付けとしています
※投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、
お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
・各週の資金調達案件まとめ
- 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第9週目である2月26日〜3月4日における、
日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
2月26日〜3月4日の週は、合計102件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は850件となりました。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、
あくまで参考としてのデータですが、2月26日〜3月4日の週では、
公開金額合計で61.9億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は1,339.4億元となりました。
なお、今週の102件のうち72件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の102件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、法人向けサービスの資金調達件数が最も多く、
合計で26件となりました。
次いで、先進製造、医療・健康、ローカルライフサービスが上位に入り、
上位4業界だけで今週の件数全体のうち60.8%を占める結果になりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、スマートハードウェアだけで、全体の57.8%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、
今週は先進製造、医療・健康、Eコマース、メディアの順に多く、
上位4業界で全体の76.9%を占めています。
1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、
物流、Eコマース、医療・健康、先進製造の順に多く、
上位4業界だけで全体の65.1%を占めています。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の102件を都市別に見ると、
上海、北京、杭州、深圳の順にランクインしました。
今週は上位4都市だけで全体の68.1%を占める結果となりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.5%を占めています。
今週も5位以下には広州、蘇州、南京、四川、武漢、山東が安定的にランクインしています。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、
あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、
今週は上海、南京、南通、北京の順にランクインしました。
南京と南通は、比較的大型の資金調達が行われたため、上位に躍り出ました。
南京(江蘇省)は、後述の通り、GPGPUを手がける天数智芯(Iluvatar)がシリーズCで12億元を調達した(今週新たにユニコーンとなった)ことによって、公開金額ベースで今週の2位に入りました。
南通(江蘇省)は、バイオ製薬を手がける晟斯生物(Gensciences)がシリーズBで8億元を調達したことによって、公開金額ベースで今週の3位に入りました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
北京、上海、長沙、深圳に集中していることがわかります。
次いで、広州と杭州が多く、いわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)や北上広深(北京、上海、広州、深圳)への偏りは未だありますが、
他の都市も徐々に追い上げていますので、今後の動向に要注目です。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の102件では、シリーズAが31件で1位、戦略投資が25件で2位になりました。
これら上位2つのラウンドだけで全体の54.9%を占めています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
先週に引き続い、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多く、
アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、
シリーズCが最も多い22.7億元となり、全体の36.6%を占めています。
次いで、シリーズBが20.8億元で2位となり、全体の33.7%を占める形となりました。
上位2つのラウンドで全体の70.3%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
現状、シリーズA、シリーズD、シリーズBの順に多く、
上位3ラウンドでの合計は全体の60.2%を占めています。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週は2社が新たにユニコーン企業になり、
中国のユニコーン企業数は2021年3月4日時点で278社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
[1社目]
企業名:天数智芯
業界:先進製造
拠点:南京
設立時期:2015年12月
バリュエーション:15.4億米ドル/100.0億元
主要な投資家:联通, 沄柏资本, 大钲资本, 粤民投, 上海电气香港有限公司, Princeville Capital, 邦盛资本, 达孜投资
企業HP:http://www.iluvatar.com.cn/
[2社目]
企業名:米读小说
業界:メディア
拠点:上海
設立時期:2018年11月
バリュエーション:11.0億米ドル/71.5億元
主要な投資家:CMC资本(华人文化产业投资基金), 趣头条
企業HP:https://www.midureader.com/
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
2021年2月26日〜3月4日に資金調達を行った企業は以下の通りです。
今週のメイントピックは、アリババのグループ会社による投資が活発だったことだと思います。
アントの上場延期後、アリババによる投資が減少したと各所で報道されていますが、今週は、アリババグループ(アリババ集団)、アリヘルス(ヘルスケア部門)、アントグループが投資を行いました。
全人代直前に投資を加速させたことに何か意味があるのかは不明です。
アリババグループは、生鮮食品のEコマース・サプライチェーンプラットフォーム企業である菜划算へ戦略投資を行い、持分比率は24.07%になったとのことです。
アリヘルスは、AI・医療ビッグデータプラットフォーム企業である零氪科技(LinkDoc)へ戦略投資を行いました。
今回の投資を通して、アリヘルスは零氪科技(LinkDoc)と共に、中国国内におけるがん患者向けのサービスプラットフォーム構築を目指しているようです。
アントグループは、医療業界向けの金融サービスプロバイダーである镁信健康(MediTrust Health)へ戦略投資を行いました。
同社は、患者が医療費をきちんと支払えるようようサポートする金融サービスを提供しているほか、医療費の分割払い管理サービスも提供しています。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週6件の投資を行い、
先週に引き続き1位にランクインしました。
今週の投資先の業界は、法人向けサービスが最も多く、3件でした。
その他、先進製造、広告・マーケティング、ローカルライフサービスで1件ずつの投資がありました。
セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は5件となっており、法人向けサービス、医療・健康、先進製造、教育、ローカルライフサービスへ投資しています。
以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。
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竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
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