中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/04/30-2021/05/06_18w
こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
ソフトバンクの投資部門でのベンチャー投資業務を経て、先の4月末までSPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていました。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
・各週の資金調達案件まとめ
- 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第18週目である4月30日〜5月6日における、日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
4月30日〜5月6日の週は、合計36件となりました。なお、5/1-5/5は中国の労働節という5連休だったため、今週の件数は少ない結果となりました。
また、1月1日からの資金調達件数の累計は1,778件となりました。
余談ですが、今年の労働節(5/1-5/5)における国内の旅行件数は約2億3,000万件に上り、国内の観光収入は1,132億3,000万元(約1兆9,134億円)に達したようです。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、4月30日〜5月6日の週では、公開金額合計で24.4億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,591.6億元となりました。なお、今週の36件のうち24件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の36件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、医療・健康の資金調達件数が最も多く、合計13件となりました。次いで、法人向けサービス、ローカルライフサービス、スマートハードウェアが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち75.0%を占める結果になりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の58.4%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は医療・健康、スマートハードウェア、ローカルライフサービス、法人向けサービスの順に多く、上位4業界で全体の62.0%を占めています。
また、1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、医療・健康、Eコマース、物流、自動車・交通の順に多く、上位4業界だけで全体の61.1%を占めています。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の36件を都市別に見ると、北京、深圳、上海、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の61.1%を占める結果となりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.7%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の約84%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は上海、南京、泰州、広州の順にランクインしました。
3位にランクインした泰州はあまり馴染みがないと思うので、簡単にご紹介します。泰州は江蘇省の中部に位置する地級市です。南京や蘇州から近く、ザ・江蘇省という感じの「水の街」として知られています。以下画像は百度地図からの引用です。
泰州の概要や観光地は以下サイトをご参照ください。
今週、泰州で資金調達に成功した企業は2社あり、両社とも医療・健康カテゴリの企業でした。というのも、泰州は医薬産業に注力している都市のため、多くの医療・健康関連の企業が拠点を構えています。2019年の泰州におけるバイオ医薬・医療機器製造の市場規模は数千億元に達し、江蘇省の25.4%、全国の4.24%を占めているようです。
話を戻して、1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。次いで、先週に引き続き5位以降は蘇州、広州、杭州が競り合っています。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の36件では、シリーズBが11件で1位、シリーズAが8件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の52.8%を占めています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの比率は日に日に上昇しており、総じてアーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、シリーズBが最も多い15.5億元となり、全体の63.7%を占めています。
次いで、シリーズCが3.0億元で2位となり、全体の12.3%を占め、上位2つのラウンドで全体の76.0%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、戦略投資、シリーズD、シリーズAの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の59.8%を占めています。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週、新たにユニコーン企業になった企業はなく、中国のユニコーン企業数は2021年5月6日時点で288社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
2021年4月30日〜5月6日に資金調達を行った企業は以下の通りです。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週1件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。今週は、スマートハードウェアに1件の投資がありました。投資先は配膳などのサービスロボットを開発する普渡科技(Pudu Technology)という企業です。
サービスロボットはコロナ禍のニーズにマッチし、その市場規模(販売額)は、2020年の中国市場のみで29.4億米ドルに達し、年々増加していますが、各社は海外への販路拡大を模索しているようです。
なお、同社は今回テンセントから資金調達を行いましたが、同社の既存株主にはセコイアチャイナや美団(Meituan)などもいます。
また、セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は4件となっており、医療・健康に2件、法人向けサービスとローカルライフサービスにそれぞれ1件の投資をしています。この中で、ローカルライフサービスの零食很忙をご紹介したいと思います。
同社は湖南省・長沙を拠点に、スナック(お菓子・即席麺・飲料など)専門のコンビニチェーンを展開しています。シリーズAで2.4億元を調達しました。
従来のコンビニ同様、フランチャイズで展開しており、創業4年目にして450店舗を超えています。現在、湖南省内のみで展開していますが、長沙など6つのエリアでは加盟店が飽和状態になっています。なお、1軒を開業するには加盟料・保証金・修繕費などで約50万元(約850万円)必要とのことです。また、加盟店の粗利率はおよそ18%で、1年半から2年ほどで初期投資を回収できるそうです。
以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。
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竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01
注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください