中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/03/26-2021/04/01_13w
こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
・各週の資金調達案件まとめ
- 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第13週目である3月26日〜4月1日における、日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
3月26日〜4月1日の週は、合計119件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は1,301件となりました。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、3月26日〜4月1日の週では、公開金額合計で185.1億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,059.1億元となり、公開金額だけで2,000億元(約3.2兆円)を超えました。INITIALによると、2020年における日本のスタートアップの資金調達総額が5,328億円とのことなので、中国はたった3ヶ月(公開金額のみ)で日本の年間総額の6倍におよぶ資金を集めたことになります。
なお、今週の119件のうち75件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約2倍の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の119件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、先進製造の資金調達件数が最も多く、合計20件となりました。
次いで、医療・健康、ローカルライフサービス、法人向けサービスが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち54.6%を占める結果になりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の57.7%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週はEコマース、医療・健康、先進製造、教育の順に多く、上位4業界で全体の67.8%を占めています。
なお、Eコマースが1位になった理由は、社区での共同購入サービスを手掛けるユニコーン企業の十荟团(NiceTuan)による資金調達が行われたためです。(以下画像は36Kr Japanより引用)
同社はアリババが支援していることで有名で、業界シェアのトップ争いをしている企業です。最近、同社には架空注文の疑いが出ていたため、どうなるかと思いましたが、今回のシリーズDでもアリババがリード・インベスターになり、合計7.5億米ドル(約48.8億元)を調達し、ポスト・バリュエーションは30億米ドル(約195億元/約3,120億円)に達しました。
話を戻して、1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、医療・健康、Eコマース、物流、先進製造の順に多く、上位4業界だけで全体の57.5%を占めています。
なお、Eコマースは先週まで3位でしたが、上記の十荟团(NiceTuan)による資金調達によって2位になりました。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の119件を都市別に見ると、上海、北京、杭州、深圳の順にランクインし、上位4都市だけで全体の63.9%を占める結果となりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.2%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の85%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は北京、蘇州、深圳、杭州の順にランクインしました。なお、北京が圧倒的1位である理由は、上記の十荟团(NiceTuan)が北京に拠点を置いているためです。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。
次いで、広州と杭州が多く、いわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)や北上広深(北京、上海、広州、深圳)への偏りが見られますが、徐々に蘇州が追い上げています。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の119件では、シリーズAが49件で1位、戦略投資が31件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の67.2%を占めています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの比率は日に日に上昇しており、アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、シリーズDが最も多い71.2億元となり、全体の38.5%を占めています。なお、上記の十荟团(NiceTuan)による資金調達はシリーズDでした。
次いで、戦略投資が37.6億元で2位となり、全体の20.3%を占め、上位2つのラウンドで全体の58.8%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、シリーズA、シリーズD、戦略投資の順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の57.8%を占めています。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週、新たにユニコーンになった企業はおらず、中国のユニコーン企業数は2021年4月1日時点で283社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
2021年3月26日〜4月1日に資金調達を行った企業は以下の通りです。
今週のメイントピックは、外食産業のサプライチェーンマネジメントサービス(SaaS)を展開する博君优选による資金調達だと思います。
今回のラウンドでは、日本の三井物産とインフォマートから資金を調達しました。実際は、両社が50%:50%で設立した特別目的会社(SPC)が博君优选に出資しています。当該SPCは博君优选の30%の株式を取得した上、博君优选の副董事長を派遣するようです。
博君优选は外食産業の店舗とサプライヤーを繋ぎ、効率的なサプライチェーンマネジメントを実現できるSaaSビジネスを展開しています。現在、中国国内のサービス利用企業数は500社に上り、カバーする飲食店の店舗数は14,000店以上とのことで、以下画像の通り、有名な飲食チェーンが同社のユーザーになっています。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週6件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。
今週の投資先の業界は、ゲーミングが最も多く、3件でした。その他、物流、メディア、医療・健康へそれぞれ1件ずつの投資がありました。
セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は6件となっており、自動車・交通、教育、法人向けサービス、医療・健康、ローカルライフサービス、先進製造にそれぞれ1件の投資をしています。
同社が今週投資した企業の中で、自動車・交通と教育の企業は要注目なので、簡単にご紹介します。
自動車・交通では、大型トラック向けの自動運転システムを開発する智加科技PlusAIに投資しています。同社の投資家には、セコイアチャイナの他に、上海汽車、CITIC PE、中国トラック配車アプリの最大手である満幇集団(フル・トラック・アライアンス・グループ)がいます。なお、満幇集団はソフトバンクビジョンファンドの投資先です。
教育では、企業向け研修サービス(企業内大学など)を行う云学堂に投資しています。中国における企業向け研修の市場規模は2020年に7,681億元(約12兆円)、2025年には9,000億元(約14.4兆円)に達すると言われていますが、同社は当該市場のリーディング企業の1つです。同社の投資家には、ジャック・マー氏が設立した雲峰基金やテンセントもいます。
以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。
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竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01
注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください