満月の夜、A子さんになにが起こったのか

(読了目安11分)

◎満月の夜、A子さんになにが起こったのか


ある満月の夜の話です・・・

話の主役は、「A子さん(30歳)」です。


1人暮らしのあなたは、スピリチュアル系の話題が好きで、ネットを通じて同じ趣味を持つ「A子さん」と友達になりました。


何回かやり取りした後、話が合いそうだと感じたあなたは、彼女を夕食に招きました。
約束の夜は、ちょうど満月の夜でした。
あなたの部屋にやってきたA子さんは、落ち着きのある神秘的な雰囲気の女性でした。


食後、あなたとA子さんはおしゃべりをしながら、ちまたで話題の「心霊系番組」を見ていました。


番組が悪霊に取り憑かれた人の話になったとき、あなたはA子さんの異変に気づきます。


なんと、一緒にテレビを見ていたA子さんは、突然、気を失ったかのようにあなたの目の前に倒れ、歯を食いしばり、白目になり、手足がけいれんし始めたんです。


それまでの穏やかな雰囲気のA子さんからは想像もできない激しい動きを繰り返し、身体がテーブルにぶつかっても、痛みは感じていない様子でした。


その様子は、まるで「別人」でした・・・


けいれんの力はとても強く、テーブルにぶつかる手足を抑えつけることはできません。


あなたはなにもすることができないまま、A子さんを見守るしかありませんでした。


数十秒後、A子さんのけいれんが止まったと思ったら、次に気を失い、ぐったりと寝てしまいました。


ホラー映画のワンシーンを思い出したあなたは、動揺しながらも病院を検索し電話をかけようとしました。


そうしているうちにA子さんは意識を取り戻し、その表情は、穏やかなA子さんそのものでした・・・



ここで質問です。



A子さんになにが起こったんでしょうか。



考えてみてください、A子さんになにが起こったと思いますか?



満月の晩ですよ、しかも心霊系の番組を見ている時です・・・



・・・


・・・



「満月とか心霊とかは無関係で、てんかんの症状が出たんだと思います」と答えられた人は、正解です。


「悪魔に取り憑(つ)かれたんだと思います」と答えた人はもうちょっと勉強しましょう。
「悪魔に取り憑かれた」ということにして解決しようとするのは「昔の考え方」ですから、次に症状が出たときの対処は、「悪魔祓い」か「処刑」になってしまいます。


「だってマスター、A子さんは満月の夜、心霊番組を見てましたよね、絶対に悪魔の仕業ですよ!」なんて言わないでくださいね、それはたまたまそのタイミングだっただけで、満月の夜とか心霊番組は直接関係ありません(月や番組が精神的影響を与え、てんかんが出やすい条件になることはありえますが)。


てんかんの症状を持っている人は日本に100万人以上いると言われています。

視聴率5%の番組なら、単純計算で5万人以上が見ているわけですから、「満月の夜・番組放映中」にてんかんの発作が出る人がいてもおかしくありません。


さて、意識を取り戻したA子さんは、疲れた様子ながらも、あなたにこう言いました。


「ごめん、私、てんかんの発作のこと伝えてなかったわね」


持病の「てんかん」をコントロールしていたつもりのA子さんですが、あなたとの夕食の時間に発作が出てしまったんです。
このとき、もしA子さんが「私、悪魔に乗り移られた夢を見てた・気持ち悪い・寒気がする」などと言ったら、「てんかん」を知らなかったあなたは、「悪魔・霊」の存在を信じてしまい、「お祓い」に行ってしまうかもしれません。


しかし実際は「てんかん」の発作ですから、あなたがやるべきことは、A子さんの安全の確保とその様子を観察することです(動画で撮影してあげるのもいいかもしれません)。




◎「てんかん」について

20世紀にはすでに解明されていたことですが、人間の脳には微弱電流が流れています。
そして、その電流に乱れが生じるクセがある人は、場合によっては「てんかん」の症状になることがあります。


パソコンで言えば、勝手に暴走したり、動かなくなったりする症状、そして壊れかけた家電製品で言えば、妙な誤作動を起こすのにも似ています。


てんかんは、脳内の「バグ」「エラー」「接触不良」などと表現してもいいかもしれません。


人間の行動をコントロールしているのは脳で、脳をコントロールしているのは電気・・・電気の流れが乱れれば行動がおかしくなって当然、ということです。



「てんかん」の人は100人に1人はいると言われていますから、今後、みなさんが「てんかんの発作」に出くわす可能性は高いと思います。

また、歳をとってから患う人もいて、みなさんが今てんかんを持っていなくても、将来はありえるわけです。

さらに、子どもを産んだとき、子どもに対する愛という面からも、「てんかん」に対する知識は大切かもしれません。



昔の人は「てんかん」についての知識が乏しく、差別を受けた人も多くいたようです。


もちろん現在でも「偏見」はあるようですし、本人だけでなく、周囲の人たちにとっても「壮絶」としか言えない場面も多くあるようです(マスターは犬のてんかんには縁があります)。


人間の脳は複雑ですから、てんかんの症状も一様ではなく、激しいものから静かなもの、短い時間や長い時間、部分的なものや全体的なもの、症状は様々だそうです。


この投稿を全部読み終わってからでいいので、よかったら下に紹介するHPで勉強してみてください。



<てんかんinfo> 

動画を全種類見ても15分ありませんから、参考までに見てみてください。
(演技ですのでショッキングではありません)
みなさんがこの動画と似た症状を見たとき、「てんかん」と思うか「悪魔」と思うかが、大人と子どもの分かれ道です。
http://www.tenkan.info/spasm/visual/

<てんかんの症状・診断・治療>
http://tenkan.nerim.info/


<日本神経学会>
https://www.neurology-jp.org/index.html


◎神がかりとしての「てんかん」(仮説)

以下、上記とは視点を変えた「てんかん」にまつわる話です。

昔、てんかんの発作を「神がかり」と思わせ、私利私欲を満たそうとした人、またその逆に、愛を発信しようとした人がいたかもしれません・・・そんな話です。

現代の、現実問題としての「てんかん」についての話ではないので、誤解のないようにお願いします。

・・・

以下に「てんかん」の発作の特徴を書いてみます。

・自分の意思とは無関係に身体が動いてしまう

・倒れて頭をぶつけてしまうなどの間接的な事故はあるにしても、直接命を落とす発作はほとんどない

・本人の意識があるものとないもの、また、前兆があるものとないものがある

・意識や前兆がある発作については、比較的安全にやりすごすことができる

・「緊張」や「光」「音」など、条件によって誘発される発作がある


さて、みなさんはもし自分が「てんかん」を持っているとしたら、「できれば周囲に知られたくない」と思いませんか?


では、周囲に知られないためには、どうすればいいでしょうか。


今の時代、インターネットがありますから、てんかんの発作がどんなものか調べることは簡単です。
発作がある人はむしろオープンにし、みんなで協力して乗り越えるスタンスが主流です。
しかし昔なら、てんかんの発作を見せてしまうと処刑や排除の対象になってしまったかもしれません。
ですから自分、または自分に近い人の「てんかんの発作」を隠したい場合、「神がかり」とすり替える方法があってもおかしくないはずです。


その人が発作を起こしても、てんかんの発作だと思わせない方法・・・
それは、「演出」です。


演出しやすいのは、発作が起こる条件が決まっていて、意識と前兆がある類の発作です。


発作が起こる条件がわかっているなら、あえて「私は神を体内に宿すことができる」とか「神を降臨させる」などと演出し、その後意図的に発作の発生条件を作ります。
発作終了後、「今私に神が乗り移った」ということにして、自分で考えた「神の言葉」を周囲に伝えるわけです。
この場合、周囲はてんかんの発作とは思わず、「憑依・神がかり」と解釈してくれます。
発作後に、眠ったり吐いたりする症状がある人は、「神が降りると疲れる」「体内の悪いものを出した」などと言えば、よりリアリティーが増しますし、予想に反して発作が起こらなかったら、「今は神が降りなかった」と言います。


また、発作の頻度や種類にもよりますが、「前兆」がある発作の場合は、前兆を感じたらこう言います。


「もうすぐ私に神が降り、人間たちへメッセージを伝えます」


発作中は神が憑依していることにして、発作が終わったら周囲に対して「神からのメッセージ」を伝えればいいわけです。

「神からのメッセージ」の内容は、発作を起こした人に愛があるかないかで変わります。

発作を起こした人に愛があれば、人を救う方向のメッセージになるでしょうし、愛がなければ、自分の物欲や性欲、支配欲などを満たすためのメッセージになります。


てんかんの発作には他人から見て強烈に印象に残るものもあり、演技だと思う人はまずいませんから、周囲は「神がかり」と思ってくれます。


以前書いた自閉症やアスペルガーなども、発作が起こったときはある意味「別人」になり、3人で押さえつけても暴れ続けるなどの神がかり的な力を発揮しましたが、同様に、「てんかん」も、普段の本人からは想像できない表情や力を現します(意識がもうろうとする類の発作もあります)。


人類が今よりも無知だったころ、「てんかんの発作を高確率で意図的に出せる人」、そして「てんかんの発作に前兆があるタイプの人」は、その状況を逆手にとり、意図的に「神がかり」を演出していた可能性があるわけです。
そうすることで、悪魔祓いや処刑されることもなく、むしろ「神の代弁者」などと崇められる可能性もあったわけです。


一方で、発作が起こる条件もわからず、前兆もなく強い発作を起こす人は、「悪魔に乗り移られた」と判断され、悪魔祓いや処刑の対象になったかもしれません。
現代では、「脳の電流の乱れ」が、どの部分でどのように起こっているかで、どんな症状が出るかがわかりつつあります。


昔、人に神や悪魔が乗り移る現象がよく見られたのは、人類がまだ「てんかんの発作(脳の電流の乱れ)」を知らなかったこともその要因のひとつだったはずです。


◎まとめ


てんかんの症状は「不思議」ですが、不思議なことには必ず理由があり、理解できないのは「神の仕業だから」ではなく、人類がその分野についてまだまだ「無知だから」なんです。

もしあなたの周りで突然誰かが不思議な行動を起こしたり、倒れたりしたときは、「悪魔の仕業・怖い」などと考えず、「てんかんの発作かも・助けよう」と考えてみてください。

満月の夜、A子さんに起こったことはてんかんの発作だったんです。


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