学生時代のバイトが楽しかった理由
(読了目安7分)
以前、仕事や人間関係がうまくいかない30代のA子さんから受けた相談です。
「学生時代、居酒屋のバイトではうまくやれたのに、どうして今はダメなんだろう」
今回の投稿は、「学生時代のバイトが楽しかった理由」と題して、上記お悩みの回答メールを掲載します。
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A子さん
「学生時代、居酒屋のバイトではうまくやれたのに、どうして今はダメなんだろう」の答えのヒントについて、マスターの考えを書いてみます。
これがわかると、今後に活かせるかもしれません。
以下の例え話は、きっと納得がいくと思います。
たとえばA子さんが習字の先生になったとします。
小学生の生徒は、なにもできませんが、うまく書けなくてもイライラすることはないと思います。
子どもに対しては、むしろ褒めてあげ、やる気を出させるのが有効な教育方法です。
自信を持たせてあげることで、才能が開花するパターンが多いこともありますが、一方で、経営面で考えれば「その小学生にやめられたら収入が減る」ということもあります。
居酒屋で働く周囲の大人たちは、それと似たような感覚でA子さんを見ていたのかもしれません。
社会経験が少ないA子さんに対して、叱らず、褒めてあげることで自信をつけさせてあげるのが大人の役割だったはずです。
今のA子さんが、高校生のアルバイトに対して叱る気になれないのと同じです。
さらに、当時居酒屋の店長に気に入られていたことが、A子さんの「元気」になり、「好循環」の維持に貢献していたと思います。
理由についていくつか書いてみます。
●周囲から褒められることが多かったから
人間の「やる気」の維持に必要なことのひとつに「褒め言葉」があります。特に、自分の基準が出来上がっていない若い人に対しては、「褒め言葉」が有効です。
社会を知らないA子さんにとって、周囲の大人からの褒め言葉は「信じるに値する言葉」だったはずです。
大人の褒め言葉を信じ、「私ってすごい!」と自分で自分を褒めることもできたはずです。
その喜びがモチベーションの維持につながり、好循環を作り出していた可能性があります。
※歳を取ると自分よりすごい人がたくさんいることを知り、褒め言葉がむしろ逆効果になる場合もあります
※マスターは、相手を「大人扱いする」と決めた場合、本当に褒めてよい場面しか褒めません
●若いため叱られることがなかったから
大人の世界では、褒めるだけでなく、相手をスキルアップのために「叱る」場面が多くなります。
相手を叱る理由は、仕事の効率を上げるためだけでなく、相手の未来のためでもあります。
大人の場合、生きるための生活費を稼ぐ目的があり、叱られても我慢し、自分を鍛えようとする傾向がありますが、お小遣い稼ぎが目的の若い人を叱ると、感情的になって反発されたり、叱る側が嫌われる可能性、さらに、ふてくされて仕事をドタキャンする可能性もあるので、大人は若い人を叱る度合いは少なくなります。
叱られることが少ない若者は、「自分は仕事ができるから叱られない」と誤解し、その前向きな誤解が、ある意味「好循環」を生み出す可能性があります。
※実際は叱られた方が実力は身に付きます
●子ども過ぎて期待されていなかったから
学生は社会のことを知らないので、業務に関しては初めから期待されてない場合がほとんどです。
期待されているのは、「若さ、明るさ、元気さ」など、大人が持っていないものです。
当時のA子さんにはそれらがあったと思います。
つまり、若さだけ期待され、業務については期待されていなかったため、どんなミスをしても周囲が明るくフォローしてくれ、ミスを問われなかった可能性があります。
A子さんのミスの責任は、指導者が全て負うことで解決されていたかもしれません。
今、A子さんの職場に高校生のバイトが来たら、A子さんはなにも求めないはずです。
つまりA子さんは高校生を叱らないということです。
高校生としてはモチベーションが下がらないので、仕事が楽しいと思えるはずです。
●今よりも自分が正しいと思っていなかったから
若い人はあまりにも世間を知らないため、「自分が正しい!」と思っている場合もありますが、一方で、「自分はまだまだ。大人の判断の方が正しい」と信じる謙虚さを持つ若者もいます。
A子さんが後者のタイプなら、たとえ周囲の大人の行動がおかしく見えたり、周囲から叱られることがあったとしても、「自分が未熟だから理解できない」「自分が未熟だからしかたない」と素直に考えることができたのかもしれません。
「自分が未熟だから」と考えることができれば、ストレスもなくなり、周囲との関係も悪化せず、仕事が苦しいことも少なくなるはずです。
●自分に自信がなくなるほど自分と向き合っていなかったから
自分の無力さや自分の本当の姿を知ると、人は自信をなくすことがあります。
大人になると、自分と向き合う場面が増え、容姿で言えば、いままで目をそらしていた自分を知ることになり、若さに自信をなくしていく面もあります。
また、人の心の仕組みや社会の仕組みなどを知れば、たとえ褒められても、「もっとすごい人がいるのに」「どうせお世辞でしょ」「社交辞令で褒めないでよね」などと感じてしまうことも増えます。
しかし高校生のA子さんは自分と向き合っていなかったため、ある意味「ニセモノの自信」があったのかもしれません。
たとえニセモノであっても「自信」があるうちは、元気に振舞い、周囲から可愛がられます。
そのため、居酒屋で好循環を維持することができたのかもしれません。
●明るく元気にふるまっていたから
上記につながりますが、ニセモノの自信だとしても、A子さんが明るく元気にふるまうことを続けたため、周囲からも明るく接してもらうことができ、好循環を維持できた可能性があります。
バイトの時間だけ明るくふるまうことができれば、バイトの時間はうまくいきます。
※愛をそそぐということは、そのテンションを長く続けるということです
●身体目当てにされていたから
仕事が楽しかったのは、男性からもてはやされたということもあるかもしれません。
男性からもてはやされる理由は、若い身体が目当てだからです。
店長にとっては、A子さんの身体を目当てにすれば、A子さんに対して最高の接し方ができたと思います。
また、店長から好かれれば、様々な効果でA子さんのモチベーションも上がると思います。
※今ならわかると思いますが、A子さんが店長の家に泊まったときに店長から手を出さなかったのは、なにかあったときに責任逃れをするためです。周囲の男友達には「オレ、バイトの大学生と寝たぜ」と自慢していると思います。
<まとめ>
「居酒屋でうまくやれた理由」を簡単に書けば、当時のA子さんの人間力が高かったわけではなく、また、周囲の人間力が低かったからA子さんの実力が秀でていたわけでもなく、周囲の大人たちの「事情」によるものが大きかったからだと思います。
「事情」にもいろいろ意味があり、「若者はそもそも期待されていない・辞めてもらいたくない(店の利益)・身体目当て」などの様々な事情です。
心地よく仕事ができたのはもちろんA子さんの実力も半分ありますが、A子さんが主体になった心地よさではなく、A子さんの若さによる受け身の心地よさだったと判断するのが本質だと思います。
10年以上経った今、A子さんは大人になったので、以前と比較して大人の視点から物事を考えられるようになりました。
上記の本質も理解できるようになったと思います。
そう言えば、以前他の店でバイトをしていた高校生がマスターの店でバイトをして、「ここははるかに働きやすいです!」と言っていたことがありました。
マスターはおそらく高校生を叱ったことは一度もなく、褒めるしかしなかったからかもしれません。
本気で訓練をする気がない高校生を叱っても、高校生は反発するだけですから、褒めてあげる方がお互いに利益になります。
A子さんも、学生時代はそんな環境の中で仕事をしていたと思われます。
<最後に>
最後にもう少し踏み込んだ答えを書きます。
「昔の方がうまくできた」と感じるのは、決して今のA子さんの人間力が落ちたわけではありません。
昔のA子さんは子ども扱いされていた、ということです。
A子さんは今の方が成長していますが、仮にその居酒屋に戻ったとしても、昔のようにうまくできるかは疑問です。
なぜなら、大人としての結果を求められるからです。
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